自動車ディーラーの営業マンは車を扱う仕事なので、とても神経質です。お客様の財産である車を扱うこともあれば、時には会社の資産も取り扱います。今回は車以外で営業マンに大切な、とあるものの話です。4年間勤務していた日系ディーラー時代の筆者が、最もやらかしてしまった時の話をしたいと思います。
◆運転中の視界が真っ赤に染まった
ある年、ちょうど7月だったと記憶しています。ボーナスが出ると浮かれながらも業務に集中していた平日。22時を過ぎた段階で上司から「もう遅いから試乗車に乗って家に帰っていいぞ」という指示もあり、足早に自宅へと向かいました。
「早く帰って明日に備えよう」……その気持ちはアクセルペダルを踏む右足に集中していました。そんな最中、目の前の視界が真っ赤に染まります。ここでピンとくる人もいるかと思いますが、赤く光ったのは自動速度取り締まり機、いわゆるオービスです。
私は初めての経験だったので事態を飲み込めませんでしたが、ひとまず自宅に戻りました。ネット検索をしたところ赤い光はオービスだったと確信していましたが、気のせいだと自分に言い聞かせ、日常を過ごしていました。
◆急いで帰って一発免停
オービスを光らせてから数週間、上司から呼び出されました。
「〇〇日の夜、試乗車で家に帰ったと思うけど何か違和感なかったか? 本社宛に警察から“出頭命令”が届いたらしいんだ」
その時、おそらくオービスを光らせた、と正直に伝え、業務を中断し、警察署に向かいました。警察官と対面するや否や、「結構飛ばしてましたねぇ」とオービスが撮影した写真を見せられ、どう反論しても無理と思えるほどはっきりと試乗車のハンドルを握る自分の姿が映っていました。
結果的に法定速度より時速35kmオーバーでの検挙となり、一発で6点加点の30日間の免許停止処分を受けました。
◆1年経たずに“おかわり”してしまう
経験のない方に細く説明をすると、30日間の免許停止処分の場合は運転免許センターで1日の講習と適性検査を受ければ29日間短縮されます。私は休日に講習を受けて、晴れて1日間の免停処分だけとなり、翌日から通常業務に復帰することができました。
ですが、ここからが新たなドラマの始まりです。免許停止処分を受けると、1年間は「前歴あり」というカテゴリーに分類され、累積4点の違反で、さらに重い免許停止処分を受けることになります。
とても恥ずかしい話ですが、免許停止処分から1年の間に、私は業務中に社用車で起こした駐車違反、プライベートでの一時不停止で検挙されたことで、2度目の免許停止処分を受けることとなってしました。
しかも2度目の免許停止処分は60日間。2日間の講習を免許センターで受けたとしても30日間はハンドルを握ることができません。上司に事情を説明したところ「お前……やらかしたな。おとなしそうに見えるくせにやる時はやるじゃねぇか」と呆れ顔で言われてしまいました。
◆免停中、何よりつらかったのは…
免許停止中の30日間、私の営業活動は自転車、お客様の車を整備などで預かる時は店舗スタッフに手伝ってもらい、助手席で一緒に移動という恥ずかしい状態で過ごしました。何よりつらかったのがお客様に会った時です。
「あれ?今日は宇野さん車じゃないの?」
「宇野さんが乗っていかないの?」
といった言葉をかけられた際に「いやぁ……実は運転できない事情となってしまって……」と話すとお客様も事情を汲み取ってくれて「ああ、やっちゃったんだね」と返してくれるのがなんとももどかしい出来事でした。
◆営業所内でついてしまったあだ名
話は遡って最初の免許停止処分を受けたときに戻ります。スピード違反で免許停止処分を受けたことを強面の上司(店長)に伝えたところ「お前、大人しそうにみえて飛ばすんだな」と笑いながら言われたことを今でも思い出します。
やらかしてしまったのは入社してから2年目。しばらくの間は営業所内で「スピードスター」という不名誉なあだ名で呼ばれる始末。店舗内ではインカムでやり取りをしていたのですが、インカムでも「スピードスターさん、お客様から電話ですよ」といったようにイジられてしまいました。
10年近く前の話なのでもう時効かな、と思い記事にしていますが、とても恥ずかしい話です。どの口が言っているんだ、と思われるかもしれませんが、皆さんも交通違反には気をつけて安全運転でお願いしますね。
<TEXT/宇野源一>
【宇野 源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801