マンガ家の久保ミツロウ、文筆業の能町みね子、音楽クリエイターのヒャダインによる、フジテレビのトークイベント『久保みねヒャダこじらせライブ』。いずれも第一線で活躍しつつ、中年期を迎えた3氏が人生の諸問題、折々で抱えているモヤモヤやたわいのない不安などを語り合い、ただの雑談が、「いつの間にかお互いのカウンセリングになってしまっている!?」と人気です。
テーマは依存症、ネット、創作活動、コミュニケーション、結婚、死生観……などなどですが、ここで3氏が雑談のテーマにしたのは「親しい人の前で、おならを出せますか?」。
「親しき仲にも礼儀あり」という言葉があるように、礼儀があるから人間関係はうまくいく、と考えられていますよね? しかし、「礼儀はゆるめのほうが、かえって親しさを感じる」という人もいるようで……。というわけで、3氏の雑談にちょっとお耳をお貸しください。
※本書は『カウンセリングするつもりじゃなかった~久保みねヒャダこじらせ雑談~』より抜粋しています。座談会は2018年の年末に行われたものです。
◆おならを出せる範囲
――今年を振り返ってどうでしたか?
久保ミツロウ(以下、久保) 今年の自分の漢字は停滞の「停」です。とどまってる感じだった。
能町みね子(以下、能町) 私は2人暮らししたことが大きいかな。漢字で言うなら「二」。
久保 能町さんは自分の目標に対して、行動する力がありますよね。
――2人暮らしで、何か考え方も変わったりしました?
能町 考え方はそんなに変わっていないですけど、人と暮らすコツはつかめてきましたね。寛容にならないとまずい、みたいな。相手がめちゃくちゃビニール袋をため込むから、「捨てればいいじゃん」とか思うんだけど、だんだん「別にいっか」みたいになる……ということが増えてくる。相手に対してどんどん寛容にはなってるんだけど、その代わり、自分自身も緊張感がなくなってきて。「人と暮らす」ということは「人目がある」ということだから、それなりに気遣うところがあるはずなんだけど、だんだんタガが外れていって、ついにこの間おならをしてしまいましたね(笑)。
久保 おっ、ブレイクスルー! それ会話あったの?
能町 いや、「出ちゃった」って言っただけです。向こうも気付いているんだけど、別にリアクションがあるわけでもなく。「これはもうだいぶ家族感出ちゃったな」と思いましたね。
ヒャダイン(以下、ヒャダ) うらやましい、それは。
能町 実家だと、全然音付きでしているんですけど。
久保 え、そうなの? 親の前でする?
能町 全然します。
久保 私は聞かせない。
ヒャダ 僕も聞かせないな。
久保 ちなみに風呂の後は裸でうろうろしてた? 自分とか、家族とか。
能町 父親は、私が子供の頃はしていた気がする。でも全裸ではなかったな。
久保 うちはお互いに裸見せない文化なんだよね。でも昔1回だけ、痴呆になりかけてたおじいちゃんがスッポンポンで現れて、「黒い!」って思った(笑)。
――全裸はないにしても、パンツ一丁とかは?
能町 パンツ一丁はあったと思う。
久保 うちはないです。もともと住んでいた家が、風呂に行くにはテレビの前を通過しなきゃいけない構造だったんですよ。みんなの目があるから、風呂上がりのラフな格好で部屋に戻ることが許されなかった。ということは、子供の頃って自分とは違う人間と同居できていたわけだから、「あの頃できていたなら、今でもできるのでは?」って、ちょっと思ってしまった。
能町 私はこのままぐずぐずに崩れていくんだろうな、という気がします。でも高校のときに、女の子3人と男の子2人だったかな、仲のいいグループの中で「おならくらいしなきゃダメだ」というムーブメントが起こって、全然おならスルー状態のグループだったことがあります。
――おならが絆の証明みたいな。
能町 あと、今ダイエットをやっている人たちもちょっと似ていて。仲良しの人たちでダイエットのLINEグループを作ってるんですよ。言い出してもう3年くらいたってて、誰もダイエットできてないんですけど。でも、あるとき誰かが自分の体重を普通に書き始めたんですよ。そこから全員体重を普通に書くようになって、「別に恥ずかしいことないな」みたいな空気になってきて。
久保 えーー!
能町 これはちょっと話がずれるんですけど、家庭って閉鎖空間だから、各家庭の常識がよそだと異常だったりすることがたまにあるじゃないですか。ある女の人から聞いた話なんですけど、その人が友達と初めてハプニングバーに行ったら、男の人が裸で四つんばいになっていたり、女の人も裸でうろうろしていたりしたらしいんですよ。そしたらその友達が「なんだか実家みたいだね」って言い出して。「え、なんで?」って女の人が聞いたら、「家って普通、裸じゃない?」って。家族全員、家だと本当に全裸らしいんですよ。
ヒャダ 本当にそういう家族いるんですね。
久保 私、そういうのが信じられない。身近な人間こそ、そういうの知りたくないし見たくないと思っちゃうから。
能町 私もおならは出たけど、パンツ一丁は今は無理ですね。
久保 「トイレの排泄音を聞かせるのも平気」みたいなカップルの話を聞くと、もう「気は確かか!?」って思う。それって、私が他人と接していないせいかもしれないけど。
◆真相が知りたい、フランスのアナル文化
能町 でも海外に行くと、おばさんがスパッツで歩いているじゃないですか。みんな全然ブーブー音出して排泄しているし。あるロシア映画を見たら、ちょっと荒れた地域の描写だったんだけど、女子トイレでドア開けっぱなしで排泄していたんですよ。それがけっこう衝撃で。「ここまでいけちゃうんだ、人は」と思って。
久保 こないだ聞いたんだけど、フランスの人って海でトップレスが当たり前みたいな感じなんでしょ?
能町 服着ても、普通に乳首浮いたりしていますよね。
ヒャダ そういえばフランスって、アナルセックスが当たり前らしいですよ。
能町 え、本当に?
ヒャダ フランスではアナルセックスが異常なことじゃなくて、当たり前なことなので、いきなりされてもびっくりしないようにしましょう、みたいな文化らしくて。
能町 信じがたい。誰かが間違った知識を植え付けているんじゃない?
ヒャダ その話、いろんな方向から知ったので、たぶん本当なんだと思うんですよね。
――検索してみます……あっ、本当にある! Yahoo!知恵袋の質問に、「フランス人の男性って、アナルをやたらと求めてきませんか?」って相談が(笑)。
能町 じゃあ本当なんだ。
ヒャダ フランス文化でもう一つ言うと、コンドームをあまり使わないんですって。
久保 は?
ヒャダ もしかしたら「アナルだから避妊の必要がない」ということなのかもしれないですけど。
久保 相手を一番思ったセックスはアナル(笑)。
ヒャダ とはいえ不衛生な状態ですよね。ウォシュレットがないトイレ文化で、紙で拭くくらいだから。しかも、そこを舐めるわけですよね。
能町 えーっ。汚くないですか。
ヒャダ だから、文化的にアナル観が違うんだと思うんですよ。僕らが「5000汚い」と思っていても、フランスでは「1汚い」くらいにしか思っていないとか、そういうことなんじゃないかと思って。
能町 私らのほうが潔癖なんだと。
――汚いといっても、床に落としたクッキーをパッと拾って食べるくらいの感じなのかな?
能町 カスをパパッと払ってね(笑)。フランスつながりで私が世間にすごく言いたいことがあるんですけど、フレンチキスってディープキスのことなんですよ。なぜか日本だと「軽くキスすること」だと勘違いされているんですけど、実際の意味は真逆なんです。
ヒャダ それ、僕も聞いたことあります。
能町 でも、フランス人が深いキスをしないわけがないじゃないですか。アナルも舐めるのに、キスがディープじゃないわけがない。フレンチキスとアナルはセットで覚えたほうがいいですね。
久保 なんだかすごく納得した。アナルを舐める人が軽くチュッで済むはずがない!
ヒャダ 覚えやすい!