モデル・俳優の田鍋梨々花がプロフィールに「趣味や特技」を書けないワケ

12歳で「ミスセブンティーン」のグランプリに輝きモデルとしてデビューした田鍋梨々花。その後『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- THE THIRD SEASON』などのドラマに出演。現在は俳優としても活躍の場を広げ、注目を集めている。


公開中の映画『逃走中 THE MOVIE:TOKYO MISSION』では、彼女は幼い弟とともに命をかけたゲームに挑む高校生・本郷マリ役を演じている。

◆ずっと走って、ずっと追われている

――『逃走中』の世界のなかでお芝居された感想はいかがでしたか。

私、普段から物音とかに敏感で警戒心がすごく強いんですよ。「自分の身は自分で守らないと」という気持ちで毎日臨んでいるので(笑)、違和感なくなじめました。

でも、今回の劇場版はハンターの迫力がよりパワーアップされていて、本当に怖かったです。それだけでも大変なのに、途中から命をかけるゲームに切り替わってしまうんです。

とにかくずっと走ってるし、ずっと追われているので、私は笑顔のシーンがないかもしれないです。

――そうなんですか!ちなみに、とても弟思いの姉という役どころですが、田鍋さん自身、ごきょうだいは?

姉が二人います。私は“ザ・末っ子”っていうくらい末っ子なので(笑)、自分のことより弟のことを優先できるマリは単純にすごいなって思います。

それと今回、マリという役を演じたことで、姉たちが「こういう感じでいつも私のこと守ってくれていたのかもしれない」って感じました。

◆逃走中で「一度自首してみたい(笑)」

――もし、田鍋さんがレギュラー放送の『逃走中』に参加したら、実際どんな風に立ち回りそうですか?

基本、隠れながら立ち回ると思います(笑)。ミッションとかもやってみたいですけど「これは私じゃないな」とか「ここはアスリートの方に頼ろう」とか考えて、あえて動かなかったり。

――かなりリアルかつ堅実ですね。

どうなんでしょう。あとは、絶対やれないけど、一度自首してみたいんです(笑)

――それはこのご時世、なかなか勇気がいりますよ(笑)。

「ずっと自首するのが夢でした!」って言っていれば、もしかしたら大丈夫かも……(笑)。

――どんなステージでチャレンジしたいですか?

3階くらいある大きなショッピングモールで、1階にハンターが歩いているのを上からじっと見つめたいですね。

運動はわりと得意でしたけど、持久力がないので、動きが伴うかどうかは別として、ゲームに挑むハートは持っていると思います!

◆家族に育まれた天真爛漫さ


――12歳でモデルデビューして現在20歳。この8年あまりの活動を振り返っていかがでしょう。

あっという間です。誕生日が12月24日ということもあって、年が明けると「もう21歳だ」って思ってしまって。あっという間に人生終わっちゃうので、ちゃんと人生を生きたいです。

――20代の実感はありますか?

あんまり変わらないですけど、もうアンケートとかで「20代」を選ばないといけないんだなと思うとしみじみしますね(笑)。ただ、あまり考え込んだり、落ち込んだりしない性格なんですよ。そんな時間があったら食べて寝たい、っていうタイプなので、そういうところは歳を重ねても残していきたいです。

――ご家族のサポートやアドバイスなどで印象に残っているものはありますか?

両親はけっこう自由にさせてくれるんです。なので、言葉というよりも感覚で教えてくれるというか。「教える」というのもちょっと違って、細かく説明せずとも物事の良し悪しを判断する能力を養ってくれる家庭なんです。

――それはすごいですね。

ルールとかもまったくなくて、その代わり自分たちでちゃんと責任をもってやろうね、という。

――そんな環境のなか、末っ子キャラを全開に。

めっちゃのびのびしてます。「お腹すいた~ッ! ママご飯~!」とか叫んで(笑)。

――天真爛漫なんですね。

はい。愛されている感じ、めちゃくちゃします。定期的に家族でディズニーランドに行ってます。父だけ仕事してる間に女子メンバーで(笑)。

◆一粒食べたら満腹になるスキルがほしい


――俳優という仕事に関する悩みや壁みたいなものはありますか?

もちろん大変なことや難しいことばかりですが、基本、最終的には「楽しかったな」「いい経験だったな」って思える性格なので。

――根っからポジティブなんですね。

ご飯を食べないとパワーがでなくてボーッとしちゃうんですよ。なので、一粒食べたら満腹になるっていうスキルを手に入れたいです。

――なかなかユニークな発想をお持ちですが(笑)、俳優としてはどうですか?

それまで楽しく話していたのに本番になったら急に切り替わる先輩のお芝居とかを見ているとすごいなって思います。方法論やテクニック的なものというより、お芝居やその方の空気感を肌で感じながら「見て学ぶ」のが自分に合っているというか。なので、もっといろいろな場所でお芝居のお仕事をしたいです。

――現場でしか得られない何かを感じ取りながら成長していくと。

先輩方のエネルギーを少しでも得られるように、いつも空気ごと吸い込んでます(笑)。

◆ズッタズタでギッタギタな役がやってみたい

――田鍋さんが今後チャレンジしたい役や作品はありますか?


明るい役が多かったので、シリアスな役もやってみたいです。ズッタズタになる役とか。

――ズッタズタ?

裏切りとか、潰し合いとか、人間の汚れた部分があらわになるような作品を観るのが好きなので、いつかそういう役を演じる側になってみたいです。もう、ギッタギタな感じで。

――ギッタギタ?

はい(満面の笑み)。

――最近見たドラマや映画で印象的だったものはありますか?

少し前に『帰ってきた あぶない刑事』を観ました。世代じゃなかったので、イケてるおじさんがアクションする『あぶない刑事』みたいなドラマって今まで見たこと無くて。かっこよくて、すごい新鮮でした。

――今の20代にはそう映るんですね。刑事役とか似合いそうですね。

やってみたいです! 役でスーツを着たことがないので、ピンヒール履いて(体を斜めにしながら)銃をこう構えて……。

――完全に『あぶ刑事』に引っ張られてますね。

ですね(笑)。

◆“今”を生きる田鍋梨々花

――今後について田鍋さんのなかで思い描いているプランや理想があれば教えてください。

先のことはあまり考えずに“今”を生きているというか、私の場合、ちょっと前に好きだったモノがすぐにもっと好きなモノに塗り替えられて変わったりするんですよ。すぐに変わるから、事務所の人がHPのプロフィールに特技や趣味が書けないくらい(笑)。

でも、この仕事だけはちゃんと続けられています。わがままに受け取る人もいるかもしれませんが、そのときしかできないことをして、常に悔いのないように生きたいんです。

――わかります。先の見えない現代ならなおさらですよね。

極端な話、インタビューがでる頃には好きなモノが変わっていることもありますが、仕事に対する考え方や自分の価値観については、今日話したことは変わらないと思います。

――まさに田鍋さんは“今”の人なんですね。

今を生きている、ということです(笑)。

【田鍋梨々花プロフィール】

’03年、千葉県生まれ。’16年「ミスセブンティーン2016」グランプリに選ばれモデルデビュー。主な出演作は『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- THE THIRD SEASON』『パーフェクトワールド』『死役所』『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』『マイストロベリーフィルム』など。映画『逃走中 THE MOVIE:TOKYO MISSION』が公開中。メインキャストの川西拓実、中島颯太、木全翔也、金城碧海、瀬口黎弥、佐藤大樹以外にも、HIKAKIN、クロちゃんといった『逃走中』でおなじみのキャストも登場する

<撮影/鈴木大喜 取材・文/中村裕一>

【中村裕一】

株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter