大事件ばかりがニュースではない。今回は反響の大きかった身近なニュースより、いま再び話題になっている記事に注目し紹介する!(初公開2023年6月8日 記事は取材時の状況) * * *
コンビニで長く働いてきた筆者。辞めていた時期もあるが、現在はライター業の傍ら、知り合いの店長に「人手不足」を理由に頼まれ、空いた時間だけ手伝う生活をしている。
人件費削減や業務の省略化などを目指し、「セルフレジ」がコンビニでも導入されているが、店員として現場で感じていることは……。また、今回はセルフレジにまつわる最悪の万引きエピソードを紹介したい。
◆店員の本音“キャッシュレスの一品だけならセルフレジを使ってくれ”
筆者が仕事しながら心の中で思っているのは、キャッシュレス決済で購入するのが一品だけなら“セルフレジを使ってくれ”ということなのだが、相手の気分を害する場合もあるので、なかなか言えないものだ。
実際、筆者が某コンビニに客として訪れた際、レジでドリンクを購入しようと店員に「すいません、お願いします」と声をかけ、パスモでタッチしたところ、こう言われてしまったことがある。
「すいませんけど、パスモで支払いなら、次回からそこのセルフレジを使用してください」
セルフレジがあることに気が付かなかったのだが、その一言に対して、失礼とまでは思わないものの、あえて言わなくてもいいのに、と感じたものだ。
◆有人レジが混んでいる際はセルフレジを
そんなわけで、筆者が店員として働いている際は、やりかたがわからないという人や、常連さんには、「こっちが便利ですよ」と丁寧に教えてあげるようにしている。
筆者が働く店舗においては、セルフレジを利用する人は少ない印象だ。やはり、有人のレジが混んでいる際は、セルフレジを利用してくれるとありがたいと思っている。
ただ、本部の人いわく、オフィス街の店舗では、かなりの確率で利用されているようだ。筆者がオフィス街の某店舗に行った際、セルフレジが10台ぐらい置かれていたのには驚いた。
◆オフィス街では“同僚の目”が不正や万引きの抑止力に
セルフレジは性善説で成り立っていると思うのだが、筆者が働く店では、たまに被害に遭う。たとえば、複数の商品でわざと何品かスキャンせず、すぐにカバンに入れてしまうという行為だ。大きな被害になっている店舗もあるらしい。
混雑時は店員も自分のレジで手一杯なので、セルフレジの客の様子まで確認している余力などはない。商品をスキャンしなかったら、入口で警報が鳴るようにしてほしいと思っている。
セルフレジの利用が多いオフィス街においては、不正や万引きの被害がどの程度のものなのか気になったので本部の人に聞いてみたところ、次のような返事がかえってきた。
「オフィス街のコンビニで購入する人は周辺の会社で働いている人たちで、昼時になると、いっきに押し寄せるんだけど、(セルフレジを使って)自分たちで買ったほうが早いしラクだと考えている。
そんななかでも“同じ会社の人の目”が抑止力になっているのか、ほとんどの人がきちんと購入してくれている。もしも不正をおこなっている場面を“同僚に見られたら”という恐怖心があるし、捕まった場合は人生が終わるので」
もしかすると、そもそも“真面目に働いている会社員が万引きなんてするのか?”と思われる人も多いかもしれないが、筆者が店内で捕まった人を数多く見てきたなかで、いちばん多いのが「普通の会社員とOL」なのである。
◆「最悪で悲しい」セルフレジ万引き事件
しかしながら、セルフレジでの万引きといえば、こんな出来事があった。
夜20時過ぎに30代半ばぐらいの女性が「店長さんはいますでしょうか?」とたずねてきた。店長が表情を曇らせながら「もう警察に任せているので来なくて結構です」と言う。すると女性は「告訴を取り下げて下さい。反省しています」と、店内で土下座をはじめたのだ。
「ダメです、あなたは私にウソをつきましたね。それに、犯罪に子供を利用するのは絶対に許せないので告訴は取り下げない。もう警察に任せたので来ないでください」
「いえ、お願いします!」
「土下座なんて止めて下さい。あのね、あなたの子供に同情しますよ。子供がいちばん可哀想だということを肝に銘じて下さい」
女性はしばらく嘆願していたが、ようやく諦めて帰った。
いったい、何があったのか……。筆者は気が気ではなかった。店長が嘆く。
「これほど最悪で悲しいことはないよ」
◆親が子供を万引きのカモフラージュに…
店長によれば、顛末はこうだ。女性は、必ず混んでいる時間帯を狙い、小学校に上がる前の子供と店にやってきた。
たくさんの商品をセルフレジで会計するのだが、子供は楽しそうにスキャンする。それを女性がぜんぶ取り消しの処理を行い、1品だけクレジットカードで支払う。そして、1品の料金しか支払っていないにもかかわらず、商品をすべてカバンに入れるという手口だった。
親子は週1回は同じパターンで犯行を繰り返していたのだが、当然、特定されており、警察に任せていたのだ。ある日、警察が犯人の女性を店に連れてきて、謝罪したうえで万引き分を弁償した。女性は平謝りだったというが、店長が追い討ちをかける。
「正直に言って下さい。何回やりましたか?」
ここで正直に白状すればよかったものの、彼女は「これが初めてです」と嘘をついたのだ。しかし、常習犯である証拠はしっかり残っている。親が子供を万引きのカモフラージュに使っている点がタチが悪く、これに店長が激怒したというわけだ。
子供に罪はないとはいえ、非常に悲しくなる出来事だった。
<文/浜カツトシ>