コンビニ店長と刺青の男が“無料の割り箸”をめぐって口論に。警察を呼ぶまでの呆れた顛末

 コンビニで長く働いてきた筆者。辞めていた時期もあるが、現在はライター業の傍ら、知り合いの店長に「人手不足」を理由に頼まれ、空いた時間だけ手伝う生活をしている。

 今回はベテラン店員の筆者が、思わず目を疑ってしまった客の行動をいくつかあげていきたい。

◆セルフレジでは商品の数をごまかす客が多い

 まずは、導入されてから時間が経過したセルフレジとレジ袋にまつわる客の行動に関して少し意見を述べたい。

 セルフレジは、混雑時間が少ない店舗には必要ないと思う。

 理由は「万引き」だ。商品の数をゴマかし、スキャンをしないで持っていく客が予想以上に多かったのだ。

 バックルームにいても結局は監視しなければならず、レジにいても操作に困っている客のケアをしないといけないので、スタッフにかかる負担が大きい。筆者の店ではセルフレジはやめてしまった。

 レジ袋は、客も慣れてしまったのでトラブルはない。少し困るのは温めた弁当と氷や冷たいドリンクなどを一緒の袋に入れてくれと言われることだ。

 ベテランのスタッフとしては、なんだかモヤモヤする。「もう1つ袋を使いますか?」と言っても、もったいないと考えているのか「まとめて大丈夫ですよ」となる。

 温めた弁当、氷、新聞がある場合、何も考えないでレジ袋を3つ使っていた頃が懐かしい……。

 昔は無料だったから客は袋を要求していただけなのかもしれない。

 買った商品が1つだけだった場合、袋に詰めてあげたら、客が店を出る直前にゴミ箱に捨てるなんてことがあった。それを見越して商品を袋に入れなかったら「なんで入れないんだ!」って言われるし、「袋に入れましょうか?」と聞いても「当たり前だろ!」とトラブルの元になる。そのため、とにかく袋に入れることが以前はマニュアル化していたので、現在は正常になったのだと思う。

 

◆「割り箸」をめぐる店長と刺青の男のバトル


 通常、割り箸やフォークなどは店で弁当、総菜、カップ麺などを購入してくれた人につける。常連さんや、たくさん買ってくれた客が望んだら渡すようにもしている。これらは店の負担なわけで、タダではない。買い物もしない関係ない人に渡すことは禁止されている。

 朝の5時過ぎ、刺青の男が店に入ってくるなり、「弁当食べようと思ったら箸がなかったので1本もらえますか?」と、そんなことを言ってきた。

 その男が手に持っている弁当は、どこか“他の店で買ったもの”だ。店長は意味がわからずに断るが、相手も強気で返す。

「は? 何のことですか? 必要なら売っているので買ってください」

「1本ぐらい、いいじゃないか!」

「なんで客でもない人にあげないといけないのですか? 非常識ですよ!」

 しばらくそんなやりとりをしていると、

「ちょっと早くしてくださいよ。タクシーを待たせているんですよ!」

「知らないですよ、そんなの! 迷惑なので警察呼びますから!」

 店長はかなり頭にきたようだ。相手も「上等だ! 呼べよ」

 数分後、近所の交番から警察がやってきた。刺青の男も大人しくなり、自分の非常識さがわかったようだが、帰り際にこう言った。

「タクシー、長時間待たせて金がかかったから、タクシー代を弁償してくれよ!」

「ふざけんな! もう帰れ! 二度と店に来るな!」

 これは夜勤帯に入っている店長に聞き、防犯カメラの映像を見せられて筆者はア然としてしまった。

◆警察官を名乗る謎の男の正体


 店には時々、万引きをした人が警察沙汰になったあとから謝罪と弁償のためにやってくることがある。「すいませんでした。これはお詫びです」と高級菓子などを持参するが、店長は情が入ってしまわないように受け取りを一切拒否している。

 ほとんどの人が謝罪をして盗んだ商品の代金を支払う。その後は警察に一任している。

 時刻は20時過ぎ、30歳ぐらいの少し軽いノリの男が筆者のもとにやってきて「〇〇警察の防犯課のAと申しますが、店長さんはいますでしょうか?」と尋ねてきた。

 警察が来た場合は通常、手帳をしっかりと見せてくるが、このときは気にもしないで店長に「警察の方が来ました」と伝えた。

 その5分後、その男は挨拶もしないで店を出ていった。通常、警察が来る場合は短くても10分は店長と話しているし、スタッフにも混んでいない限り挨拶をしていくので、少し違和感を覚えた。すると店長がやってきて言う。

「あの男、反省してるのかね?」

「は? 彼は警察の方でしょう?」

「何言ってんの? あいつは万引きして商品のお金を払いに来ただけだよ」

 警察官を名乗った男は、ただ謝罪と弁償のためにやってきた万引き犯だったのだ。まったく意味がわからなかった。

<文/浜カツトシ>