漫画家・マキヒロチさんと考える「それでも静かな東京」。

「それでも静かな東京」を探すべく、『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』の作家・漫画家のマキヒロチさんと一緒に今の東京、とりわけ「静かな東京」について考えてみた。

“コロナ後の東京”で、マキヒロチさんが見つめる先には

東京の街と、そこに暮らす若者たちの想いをリアルな筆致で描く漫画家・マキヒロチさん。ドラマ化もされた『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』は、さまざまな悩みを抱えた人々が吉祥寺にある「重田不動産」を訪れ、それぞれの「住みたい街」を見つけていくストーリーだ。

「暮らす街と暮らす人」の有機的な関係を描き続けるマキさんは、コロナ禍を経て今の東京をどう見ているのだろうか。

「『コロナ前後』をとりわけ意識しなくても、外に出ることは多くなりましたよね。出かけるたびに、街の変化が目につきます。知らない間に結構、変わってるんだなって、前からこうだったっけ?って思うこともありますが」とマキさん。

“ステイホーム”期間中も、街は変化し続けている。再び家の外へ出るようになったことで、改めて東京の街の見方も変わってくる。マキさんだけでなく、外出することの意味や街への目線を無意識のうちに変えているかもしれない。そんなマキさんに、騒がしい東京の中でも今、注目したい「静かな東京」について聞いてみた。

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「住みたい街ランキング」上位には絶対に入ってこない

「コロナをきっかけに──というよりも、その以前からずっと変わらずに静かだった街ですね。思いつくのは、東急池上線の荏原中延、旗の台あたり。おしゃれなおでかけ雑誌の主役にはならないし、『住みたい街ランキング』上位には絶対に入ってこない(笑)。だけどいいお店がたくさん点在していて、落ち着いた静けさもある。

街全体は静かではなくても、エアポケット的に静寂を感じられるエリアもありますよね。たとえば目黒線の不動前は、林試の森公園という大きな公園があっておすすめです。なんだか散歩しやすい街なんですよ。そう、散歩できる街は、だいたい静かな場所がある」

マキさんが教えてくれたのは、コロナ以前から今まで、変わらずに静かな街。2023年、ポストコロナの私たちにとっては、「揺るがない静寂のある場所」の魅力が再評価されてもいい。もっと言えば、変わったのは東京そのものではなく、静けさの価値に気づいた私たちの「視点」である、ともいえそうだ。