花毎の花言葉・立葵「再会」

一般的な花言葉は「豊かな実り」「野心」などです。

「豊かな実り」は1本の茎にたくさんの実をつけることからですが、もともとは「多産」のシンボルだったことに由来するともいわれています。「野心」はワイン農家がぶどう畑の境にこの花に植え、ミツバチからハチミツを集めようとした意味に由来するなど所説あるようですが、どちらも即物的な印象のある花言葉です。

一方、日本では古くから和歌では葵を「逢ふ日」にかけて歌を詠んできましたが、その代表的な歌は万葉集で詠まれたものです。

「梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲く」 作者不詳 第十六巻 3834

訳:ナシやナツメ、キビやアワと次々と実るのに、君に逢えずにいるけれど、クズのつるが離れてもまたつながるように、また逢えるというしるしのアオイの花が咲いています

こちらは六つの植物の時間の移り変わりと、名前の掛詞を使って「今は逢えないけれど、後でまた逢おう」という意味の歌です。

この葵とは冬葵を表しているという説が多くありますが、牧野富太郎博士は「立葵」という説を説いています。

ナシ、ナツメ、キビ、アワまでが秋、冬と春を経てクズのつるが繁茂する初夏、そして立葵が咲く夏、と考えると、牧野博士の説がしっくりきます。

花の種類が今ほどなかった時代、古のひとは美しい花をつけ目印のようにすっと伸びた立葵に「あふひ」の思いを託したのかもしれません。

そんな願いを今に伝える立葵に「再会」という花言葉を贈りたいと思います。

文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子

水上多摩江

イラストレーター。

東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など