テンバガーを見つけることは、多くの投資家にとって夢のひとつかもしれません。テンバガーとは、テンは「10」、バガーは「塁打」を意味し、1試合に10塁打を放つ野球用語になぞらえたものであり、株価が購入時から10倍に上昇した株のことを指します。
また米国では、半導体大手のエヌビディアが過去5年で株価が10倍以上に成長しました。筆者自身、これまでテンバガーを2回経験していますが、それは偶然ではなく運を手繰り寄せるアプローチがあったからこそ実現できたと考えています。そこで今回は日本株テンバガーを見つけるための具体的な方法について解説していきす。
◆今後注目すべき成長市場とは?
テンバガー候補を見つけるための第一歩は、成長市場を選定することが重要です。言い換えれば、技術革新や社会の変化によって急成長が期待できる市場を探さなければなりません。以下は今後注目すべき成長市場です。
【AI(人工知能)】
AI技術の進化により、データ分析、機械学習、生成AIなどの分野で大きな成長が見込まれます。特に生成AIの分野では新たなビジネスが続々と誕生しています。AI関連のスタートアップ企業も増えており、その中から次世代のテンバガーが出てくる可能性が高いです。
【DX化】
DX化は、企業や組織がデジタル技術を導入することで、業務プロセスの自動化やデータのリアルタイム分析が可能となり、効率化とコスト削減が実現します。たとえば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やクラウドサービスを活用することで、企業は運営コストを大幅に削減できます。DXはさまざまな産業において重要な成長ドライバーとなっています。
【再生可能エネルギー】
環境問題への関心が高まりと再生可能エネルギー技術の進化により、コスト削減が進み、年々普及が加速しています。例えば電気自動車(EV)やバッテリー技術の進化により、関連企業の成長が期待されます。
◆まだある、注目すべき成長市場
【バイオテクノロジー】
医療技術の進化に伴い、新薬開発や遺伝子編集技術などでの成長が期待されます。バイオテクノロジーは高齢化社会に対応するための新しい治療法や薬の開発において、重要な役割を果たしています。特にゲノム編集技術の進化により、個別化医療の実現が近づいています。バイオテクノロジー企業の中からテンバガー候補が現れる可能性があります。
【宇宙開発】
宇宙旅行や衛星通信など、宇宙関連ビジネスは政府の支援や民間企業の参入により急速に拡大しています。その市場規模は右肩上がりで成長を続けており、大きくグローバルに飛躍する国内企業が今後増加することが予想されます。
【インバウンド】
インバウンドの増加により、宿泊業、飲食業、小売業などの観光関連産業が成長しています。特にアジア圏からの観光客が増加しており、都市部だけでなく地方都市への観光も促進されており、インバウンド需要を上手に取り込んだビジネスや企業に注目です。
【高齢化社会】
日本社会の高齢化に伴い、医療や介護サービスの需要増加や快適に生活するための生活支援サービスが求められます。具体的には介護ロボット、在宅医療、高齢者向け住宅、健康・フィットネスなどの分野で、いかにテクノロジーを活用するのかがポイントとなるでしょう。
◆テンバガー候補を見つける3つの指標
テンバガー候補を見つけるためには、企業の財務状況を確認することも不可欠です。特に注目すべきポイントは以下の通りです。
【売上高成長率】
過去数年間の売上高の伸びをチェックし、安定した成長を続けているか確認します。成長市場においては、売上高が持続的に増加している企業が有望です。
【営業利益率】
高い利益率を維持している企業は、競争力が高いことを示しています。当然、利益率が高い企業は価格競争に強く、持続的な成長が期待できます。
【フリーキャッシュフロー】
フリーキャッシュフローを持つ企業は、健全な経営を行っていると判断できます。またキャッシュフローが増加している企業は、事業拡大や新規投資、株主への分配などに積極的に取り組む確率が高いと考えられます。
◆テンバガーは消去法による銘柄選定
テンバガー発掘は消去法のゲームです。まず見込みのありそうな銘柄を仕込み、「良い決算」を出した銘柄は継続保有し、「悪い決算」を出した銘柄は売却することが必要です。特に悪い決算を出した銘柄をポートフォリオから除外する習慣をつけることで、企業業績の良い株だけを保有することができます、これが結果的に暴落するような銘柄を保有するリスクを最小限にすることが出来ます。
また、投資テーマや画期的なサービスなどのストーリーに目を奪われないように注意することが必要です。本当に希少価値があるのは、毎回の決算で投資家の期待に応え続ける企業です。そのような銘柄は本当に一握りしかありませんが、テンバガーになるのは、こうした銘柄だけです。
日本の近年のテンバガー株には以下のような銘柄があります。
【川崎汽船(9107)】
海運大手3社のうちの1社であり、特に電力用の石炭を運ぶ船と自動車を運ぶ船に強みがあります。
<2024年3月決算>
・売上高成長率(前期比) +2.1%
・営業利益率(前期比) +7.5%
・フリーキャッシュフロー 約1,361億円
【レーザーテック(6920)】
最先端の半導体を製造する際に欠かせない「マスク欠陥検査装置」を提供している企業です。特に、次世代の半導体製造技術であるEUV(極紫外線)を用いた光源に関しては、独占的な地位を持っています。半導体需要の恩恵を受ける形で成長中です。
<2024年6月決算>
・売上高成長率(前期比) +27.6%
・営業利益率(前期比) +7.9107%
・フリーキャッシュフロー 約220億円
【ディスコ(6146)】
半導体や電子部品の製造には、非常に精密な作業が必要です。その中でも、材料の切断、研削、研磨といった工程は特に重要です。これらの工程を行うための装置と、それに使う消耗品であるダイヤモンド砥石において世界トップシェアを誇ります。半導体需要の恩恵を受ける形で成長中です。
<2024年3月決算>
・売上高成長率(前期比) +8.2%
・営業利益率(前期比) +10.0%
・フリーキャッシュフロー 約811億円
◆筆者が注目するテンバガー候補株
ここでは、筆者が注目する具体的な日本株の銘柄をいくつか紹介します。
【笑美面(9237)】
老人ホームや介護施設を探す人々と、これらの施設をマッチングするサービスを提供しています。またホーム運営者向けに経営改善やサービス向上をサポートするコンサルティング業務も行っています。
<2023年10月決算>
・売上高成長率(前期比) +33.7%
・営業利益率(前期比) +375.0%
・フリーキャッシュフロー 約9,500万円
【yutori( 5892)】
yutoriは、主にECサイトを通じて若者向けのアパレルブランドを展開しています。現在、約20のブランドを運営しており、それぞれが個性的でトレンドに敏感な商品を提供しています
<2024年3月決算>
・売上高成長率(前期比) +74.9%
・営業利益率(前期比) +914.9%
・フリーキャッシュフロー 約1億9100万円
【ラウンドワン(4680)】
ラウンドワンは、ボウリング、カラオケ、ゲーム、スポーツ施設など、複合的なエンターテインメント施設を展開しています。また、米国にも出店しており、海外市場への進出も進めています。
<2024年3月決算>
・売上高成長率(前期比) +12.1%
・営業利益率(前期比) +43.0%
・フリーキャッシュフロー 約292億円
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今回は日本株テンバガーについて解説させていただきました。日本経済はバブル以降、長期の低迷が続きましたが、日経平均が4万円台を突破するなどポジティブな要素が増えているのも事実です。もちろん、テンバガーを見つけることは容易ではありませんが、適切な戦略と知識を持つことで、その夢を現実のものとする可能性を高めることは可能だと筆者は考えます。
<TEXT/鈴木林太郎>
【鈴木林太郎】
金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数
X(旧ツイッター):@usjp_economist