京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。
ネオ喫茶店で育まれる、自然の営み。。
―小川珈琲 堺町錦店―
『小川珈琲』は京都での創業以来、70年を超えて愛され続けるロースター。100年先も続く店をコンセプトに、日本の喫茶文化の原点を見つめ直す新たな挑戦として2022年に開いたのが『小川珈琲 堺町錦店』である。歴史の跡を残しつつ、大胆な改装を手がけたのは建築デザイナーの佐々木一也さん。母屋と離れにある2つの客席をつなぐ中庭は、ミニマルでありながら植物が四季の景色を作る空間。「要素を絞ってコンテンポラリーな見せ方で印象づけたく、コンクリートのステージと『OYAMA』の構成で考えました」と振り返る。杉や檜、ヤマコウバシ、ハゼノキ、ヤブコウジなどが石の上に植えられた「OYAMA」は、植物で様々な場を作るアーティスト「TSUBAKI」によるビオトープ。日本の里山の自然の営みをオマージュすることから生まれた作品だ。1本だけ別に植えられた紅葉は、元の庭にあったものを大切に受け継ぐ。石の上に繰り広げられる植物の世界は、落ちた種による新たな芽吹きも加わり、京都の自然と融合しながら成長し続けている。
奥の小庭には植物を植えた古い飼い葉桶が置かれ、こちらも成長を続ける。
『小川珈琲 堺町錦店』
京都市中京区堺町通錦小路上る菊屋町519‒1
075‒748‒1699
7時〜20時(19時30分LO)
無休
photo : Yoshiko Watanabe illustration : Junichi Koka edit & text : Mako Yamato
&Premium No. 128 TO A BEAUTIFUL TOWN / 日本の美しい町を旅する。
旅することの喜びや醍醐味はさまざまですが、そのひとつに、暮らしに彩りを添えてくれることがあるように思います。地元の人々の心の拠り所となっている美しい景色を眺め、アートや伝統工芸などに触れ、ライフスタイルを刺激するセンスのよいショップ、文化を感じる喫茶店や書店、おいしいものに出合える店を巡る……。ひととき日常を離れ、知らない土地の暮らしが感じられる旅に出てみると、その旅を終え、いつもの生活に戻った私たちの毎日までが、いきいきと輝いてくれるから不思議です。今号は、日本各地のカルチャーの息づく美しい暮らしのある町を巡る旅案内。札幌、山形、富山、高松、松江、奄美をはじめ、何度も訪ねたくなる町や、旅先にしたくなる日本全国の素敵な店の数々を紹介します。
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