給料が上がらないのは円安だけが理由ではない
資産を増やす
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先程述べたように、円安になっても賃金が上がれば物価の上昇分が相殺されるため、円安によるデメリットは受けにくくなります。
しかし、現実にはそうはなっていませんし、恐らくそうなることはこれからも難しいでしょう。下図をご覧ください。
引用元:財務省財政政策研究所作成「配当性向」
これは、日本企業の当期純利益と配当金の推移を表にしたものです。90年以降をご覧いただくと、デフレ経済であったにも関わらず企業の当期純利益は増え続け、それに連動する形で配当金が増え続けています。
90年におよそ5兆円だった配当金が最終的には25兆円弱となり、「失われた30年」の間に何と5倍近くまで増えています。では、この期間に労働者の賃金はどうなったのでしょうか?下図をご覧ください。
引用元:独立行政法人労働政策研究・研修機構「グラフで見る長期労働統計」
同じように90年以降の推移を見てみると、事業所の規模の大小を問わず、おおむね横ばいか少し下がっている程です。
このことから分かるように、輸出関連企業であるかどうかに関わらず日本の多くの企業はかつての方針を転換し、株主の利益をこれまで以上に重視する企業経営にシフトしています。逆に言えば、これまでのあまりにも株主を軽視した経営方針が見直され、オーナーである株主の意見を大切にする企業経営に舵を切っています。
したがって、海外市場に向けて輸出を行っている大企業に勤めていたとしても、円安のメリットがそれ程受けられない可能性も十分に考えられます。
ではどうすれば良いか
これまでの話をまとめると、以下のようになります。
海外市場をメインターゲットとしていない企業に勤めている労働者は、円安のメリットを受けにくい
輸出企業に勤めていても、やっぱり円安のメリットはそれ程受けにくくなりつつある
これを踏まえたうえで、対策として考えられるのは、以下の2つです。
円安のメリットを受けやすい企業の株主になる
外国並みに転職する
企業が株主を重視するのであれば、株主になれば問題ありません。円安のメリットを受けやすい企業の株主になれば、給料でメリットが享受できない分を補えます。
もう一つ考えられるのは、日本中の労働者が外国並みに転職回数を増やすことです。日本では転職してもせいぜい2~3回くらいでしょうが、アメリカ人は平均10~13回位は生涯で転職を繰り返しています。
給料が安くても残業代が出なくても、辞めないのであれば、給料を上げてもらうのはやはり難しいでしょう。すべての労働者が少しでも労働条件の良い会社へどんどん移るようになれば、会社側も給料を増やさざるを得ません。
しかし、この2つにはどちらもリスクが伴います。株式を買っても株価が下がるかもしれませんし、業績が悪ければ配当金すら出ないかもしれません。また、転職すればするほど条件が悪くなり、「結局最初に勤めた会社が一番良かった」ということも十分に考えられます。
「リスク」という言葉の語源には諸説ありますが、アラビア語の「明日の糧」(risq:リズク)という言葉が、現在の「リスク」という言葉の基になっているという話を聞いたことがあります。
これは、危険を冒さなければ明日の糧が得られないことから来ているのでしょうが、できれば日本社会がそのように高いリスクを国民に求めることのないように望みます。