ドラマやバラエティー、CMなどあらゆるジャンルから引っ張りだこ。その透き通った素敵な笑顔を見かけない日はないと言っても過言ではない、小芝風花。
7月13日(土)からは主演を務めるドラマ『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系よる9時〜)がスタートした。本作で彼女は全国で2万体にものぼるという身元不明遺体と向き合い、その死の真相を明らかにし、家族や恋人の元へ帰す主人公の捜査官・三田桜を演じる。
新しい役、新しい作品に取り組む姿勢、多忙な日々の中で抱く思い、俳優としての将来像、そしてついに克服した“アレ”について存分に語ってもらった。
◆形が違う「届けたい」という気持ち
――今回のドラマですが、身元の分からない遺体の思いに寄り添うという、桜の役どころに対する率直な感想を教えてください。
今、撮影をしていて思うのは、身元不明ということは捜査の“ヒント”があまりにも少ないんですね。遺体として発見されたときにお財布やケータイを持っていなかったら名前すら分からないし、名前が分かったとしてもそれが本名かどうか確かめる術もなかったり。なのでその分、何か見落としているものがないか、いろいろな場所に足を運ばないといけない。
桜ちゃんってかなり直感型というか、「こんな優しそうな顔してる人が凶悪犯なはずない!」みたいなことを言って暴走するところもあるんですけど、何かちょっとでも「違う」って引っかかったら、あきらめずにどこまでも追いかけて、“思い”も帰してあげたい、気持ちや心も帰してあげたい、という気持ちがすごく強い人だなって。
――気持ちを相手に届けるという意味では、俳優という職業にも通じるものがありそうですね。
あまりにも世界が違うから自分とリンクするかというと難しいですけど、私のお仕事は役や作品を通してみなさんに今、私が演じている役がどういうことを伝えたいのか、どういうふうに思っているのかをお届けするものなので、自分のなかだけでなく見てくれている人に「届けたい」という気持ちは、カタチは違うかもしれないけどあるのかなと。
◆「そばに誰かいて欲しいときにいれる存在でありたい」
――最近は「寄り添う」という言葉をよく聞きますが、小芝さんにとってこの言葉はどういう意味を持ちますか?
「寄り添う」ってひと口で言っても、いろいろな形があるじゃないですか。それこそどこまでもその人の意見を尊重して、傷つかないように壊れないように寄り添うこともあれば、大切で失敗して欲しくないからこそ厳しく言いつつ多少の距離はありながらも、何かあったときに駆けつけられるような距離感で寄り添っている人もいるし。
これが正解というのはちょっと分からないですけど、私にとって大事な人がしんどいときとか苦しいとき、そばに誰かいて欲しいときにいれる存在でありたいなって。
私自身もそんなに交友関係が広いわけではないですが、自分が困ったときとか悩んでいるときに話を聞いてくれる人や、助けようとしてくれる人に救われたことがあって。かと言って常にその人と連絡を取り合ってるわけではないんですよ。
――わかります。そういう人の言葉ほどなぜか心に沁みるというか。
本当にいざというときに絶対に手を差し伸べてくれる人ってありがたいなと思うし、私は寄り添ってもらっている気がしているので、大事に思う人がしんどいときこそ力になれたらなって思います。そういう人でありたいですね。
◆心が休まる時間は編み物に没頭しているとき
――来年には大河ドラマ「べらぼう」も控えており、ますます忙しくなると思います。仕事とプライベートの切り替えはうまくできていますか。
役を引きずるようなことは基本的にないんです。もちろん、重たいシーンやしんどいシーンがあって、プライベートで考えて気持ちが落ち込むことはありますけど、役が抜けない、切り替えられないということはないです。
――日常のなかで心が休まる時間はどんなときですか?
編み物ですね。編み物って目の数を数えながら編むので、他のことあんまり考えないんですよ。何も考えずに「1、2、3……」って数えながら没頭する時間はわりとリラックスしています。セリフを覚えている最中だと、テレビとか見ていてもセリフが頭に浮かぶといったん最後まで自分のなかで全部言わないとテレビに集中できなかったりするんです。
――ひと区切りつけないと気になってしまうんですね。
寝る前もそうなんですけど、無意識にセリフを反復していたりするんですよね。なので、編み物をしているときは心が安まります。
――健康面についてはいかがですか。
先日、DNA検査みたいなものをしたんです。自分がどんな体質か、どんな病気にかかりやすいか唾液でわかるキットがあって。最初はダイエット目的だったんですけど、いくつかタイプがあるなかで私は筋肉がつきにくいタイプだとわかって。
普通の人よりタンパク質を多く摂って運動をしないといけないみたいです。筋肉をつけないと基礎代謝が上がらないから、思うように体重が落ちなくて。なので今はジムに通って、キックボクシングの練習をして、プロテインを飲むようにしています。
◆どうしても新米感がでてしまう、俳優としての課題
――ところで、今、小芝さんの俳優としての“欲”は何でしょうか。
10代の頃より「こうありたい」「こうなりたい」という欲は薄くなってきた気がします。でも、芝居のなかでもっともっと幅を増やしていきたいし、ドラマだけでなく映画や舞台でも活躍したいという思いはあります。
――教師役ってまだ未経験ですよね。
保健室の先生はあるんですけど、先生として教壇に立ったことはまだないです。
――どうですか?
27歳になったのですが、どうしても年齢より若く見られてしまうので、説得力が……。「どっちが学生ですか?」みたいな感じになってしまうので、そこが課題ですね。
――越えたいと思う“壁”は?
年齢と見た目で役に制限があるような気がしていて、同年代の俳優さんのなかでも子どもっぽく見えてしまうのかなって悩んだり……。どうしても新米感がでてしまうので、年齢に合った大人の役を演じたい、今の悩みはそこですね。
◆プライベートの目標は「富士山」
――では、20代のうちにやりたいことはありますか。
プライベートだと富士山に登りたいです。山登りはまったく興味なかったんですよ。しんどいじゃないですか。
――山登りは基本しんどいと思います(笑)。
なんでわざわざそんなしんどいことするんだろうって思っていたし、山登りが好きな共演者の方がいて「ちょっと富士山行ってくる」みたいな感じで誘われたりもしたんですが、一回も登ったことがないのに拒否するのは違うかも、と思って。一回登って、その上で「私はもういいです」ってなるのか、ハマるかは別だなと。
――確かにそうですね。
旅行もたくさん行きたくて、体力があるうちにできる無茶な旅行ってありますよね。スケジュールを詰め込んだ弾丸的な。そういう経験もしてみたいです。
――将来設計というか、ライフプランについてはいかがでしょう。
まだわからないことだらけです。それこそずっと日本にいるのか、たとえば国内でも国外でも、どこかに移住して暮らすとか。年の半分は地方で暮らして、お仕事があるときに東京へ来る、みたいな生き方もあると思うし。
同級生とかでも結婚して子どもが生まれたなんて話を聞くと、そういう年齢になっているんだなって実感します。最近、結婚祝いと出産祝いをあげる機会がかなり多くて(笑)。
◆ついに苦手だったピーマンを克服
――こんなことインタビューで聞くのはおそらく私だけだと思うんですけど、かねてから苦手だったピーマンをついに……。
はい。食べられるようになりました。でも、進んでは食べてない(笑)。
――どんな経緯で克服したんですか?
いい加減、年齢も重ねて「ピーマン嫌い」っていうのもどうなんだろうって思って。大人っぽくなりたいとか歳相応に見られたいとか言っておいて、なのに「ピーマン苦手」ってちょっと恥ずかしいなと。青椒肉絲とか焼きそばに入っているピーマンを思い切って食べてみたら、意外といけるなって。
もともと苦味はそんなに気にならなかったんですが、匂いがダメだったんですね。パプリカも私からしたら同じ香りがするからダメで。食べられなくはないけど積極的に選ぶことはない、みたいな。
――7年前に初めてインタビューして以来、ことあるごとにピーマンについて尋ねてきた身としては感慨深いです。
でも……割合が大事です。過半数を占められるとちょっとキツいですけど、2、3コまでは。メインがピーマンじゃなければ大丈夫です。
――仕事への姿勢や人生への思いも含め、こうしてお会いするたびに成長する姿を拝見できて嬉しいです。
恥ずかしいです、成長したのがピーマンだけみたいで(笑)。椎茸も昔は苦手だったんですけど、最近では美味しく食べられるようになりました。ですからピーマンも好きになる日が来るんですかね、いつの日か。
【小芝風花プロフィール】
1997年、大阪府生まれ。主な出演作はドラマ『あさが来た』『トクサツガガガ』『美食探偵 明智五郎』『妖怪シェアハウス』『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』『彼女はキレイだった』『波よ聞いてくれ』『あきない世傳 金と銀』、映画『レディ加賀』など。最新主演ドラマ『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』は日本テレビ系にて7月13日(土)よる9時よりスタート。8月1日公開映画『ツイスターズ』日本語吹き替え担当
<撮影/唐木貴央 取材・文/中村裕一 ヘアメイク/富永智子 スタイリング/成田佳代 衣装協力/ete 撮影協力/バックグラウンズ ファクトリー>
【中村裕一】
株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter