結婚前に両家顔合わせの食事会などを開く夫婦は少なくないが、幼馴染で家族ぐるみの付き合いがあった場合などを除けば、ほとんどの親同士はこの時が初対面。だが、ごく稀に親同士が知り合いだったなんて偶然もあるようだ。
学生時代の同級生や元同僚などそれほど親密ではなかったとしても驚きだが、なかには父親と義母が元恋人同士なんてドラマや漫画のストーリーになりそうな衝撃的なケースも。6年前に結婚した高村大輔さん(仮名・36歳)は、その前年に両家顔合わせの食事会を実施したが、その時の模様を次のように振り返る。
◆両家顔合わせの食事会でフリーズする父親と義母
「ウチは母を高校生のころに亡くし、先に父と会場だったレストランの個室で待っていました。母子家庭だった妻は10分ほどして到着しましたのですが、彼女の隣にいたお義母さんは部屋の入口で父を見て固まったまま。父もそれまで見せたこともないような驚いた顔をしていました」
直後、2人の口から高校の同級生だったことを聞かされる高村さんと妻。親の出身が同じ地域なのはなんとなく知っていたが、顔見知りであることは完全に想定外。当然、食事会ではその話題で盛り上がり、両家ともにすっかり打ち解けた様子に見えたが、実はただの同級生ではなかった。
◆まさかの元“恋人同士”だった
「食事会からしばらく経ったある日、妻から元恋人同士だったことを聞かされたんです。二度ビックリの展開ですが、言われてみると父もお義母さんもやけに親しげでしたからね。妻は食事会の雰囲気でちょっと怪しいと感じたらしく、お義母さんを問い詰めたら白状したそうです。
ただ、私は父からそんな話を聞いていませんでしたし、事を荒立てる気もなかった。だから、この件については胸にしまっておこうと思ったんです」
その後は特に何事もなく結婚式を終え、翌年には第一子が誕生。さらにその次の年にも第二子が生まれるなど子宝に恵まれた。父親も義母も大変喜び、孫を可愛がってくれたが結婚3年目のある晩、またしても妻から衝撃的な話を告げられたという。
◆義母の両親の猛反対で破局していた
「妻から『ウチのお母さんとお義父さんがヨリを戻したらどう思う?』と言われました。詳しく聞いたところ、自分たちに気を遣って2人きりで会うことは避けていたみたいですが、LINEや電話のやりとりは時々続けていたそうなんです」
ちなみに父親と義母は、高校在学中から成人後までの約4年間交際。しかし、義母の両親(※妻の祖父母)から猛反対され、最終的に2人は別れることに。それぞれ別の相手と結婚し、そこで生まれたのは高村さんと妻だった。
ただし、妻の祖父母は当時すでに他界。高村さんの母親は存命だったが妻からの情報によると、父と義母の交際については好意的だったとの話を聞かされる。
◆夫婦で親同士の復縁を後押しすることに
いずれにしても2人の関係性を知っても嫌悪感を抱くことはなく、ヨリを戻すことにも反対する気はなかった。そのことを妻に告げるとホッとした様子だったとか。
「妻にしてみれば一種の賭けだったらしく、私がどういう反応を示すかわからず悩んでいたみたいです。けど、黙認というわけにもいかないでしょうし、ここで初めてこの件について父と話をしました。
父からは黙っていたことを謝られましたが、『理解がありすぎるのも素直に喜んでいいのかな』と照れ臭そうにしてましたけどね」
◆父親は定年後、郊外に移住して義母と半同棲生活
約38年ぶりに復縁することになった父親と義母だが、そこは分別のついた大人。公言すれば好奇の目に晒されることは避けられなかったため、交際については高村さん夫婦と祖母、義姉のほかに、2人の共通の友人数名が知っているだけだ。
「父は定年退職後、他県の中古マンションに引っ越し、義母と半同棲生活を送っています。どちらもそれまで住んでいた場所には知り合いも多かったですし、そういうのもあって地元を離れたのだと思います。
正直、複雑な関係すぎて人には言いにくいですが、2人とも表情が生き生きとしており、一応ハッピーエンドだったのかなって。こっちも両家に顔を出す必要がなく、一か所で済むから楽ですしね(笑)」
元カレ・元カノとヨリを戻すことはそこまで珍しくないが、数十年越しの復縁もさることながら息子夫婦の親同士という関係性はあまりにレア。運命と呼ぶには出来過ぎな気もするが、こんな絵に描いたようなストーリーもあるのだ。
<TEXT/トシタカマサ>
―[奇妙な男女関係]―
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。