バラエティ番組「個人視聴率」BEST10。『突破ファイル』は4位、『ザワつく!金曜日』が2位

◆バラエティ番組「個人視聴率」BEST10

 バラエティはドラマと並んでテレビの華。今、本当に強いバラエティはどの番組なのか? 個人視聴率(4歳児以上、高齢者までの全体値)を上位から順に並べた。併せてコア視聴率(13~49歳に絞った個人視聴率)も見てみたい。さらに秋改編の情報を記す。

 調査期間は7月1日(月)~同14日(日)。特別番組は除いたが、通常番組の拡大版は含めた(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

①日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』(日曜午後7時58分)

14日放送分 個人7.7% コア6.1%

②テレビ朝日『ザワつく!金曜日』(金曜午後6時50分)

12日放送分 個人6.9% コア1.8%

③日本テレビ『ザ!鉄腕!DASH!!』(日曜午後7時)

14日放送分 個人6.5% コア4.3%

④日本テレビ『THE突破ファイル 2時間スペシャル』(木曜午後7時)

11日放送分 個人6.3% コア5.0%

⑤日本テレビ『世界まる見え!テレビ特捜部』(月曜午後8時)

8日放送分 個人6.2% コア5.1%

⑥テレビ朝日『ポツンと一軒家90分スペシャル』(日曜午後7時58分)

14日放送分 個人6.2% コア1.4%

⑦TBS『プレバト!! 2時間スペシャル』(木曜午後7時) 

11日放送分 個人5.9% コア1.4%

⑧日本テレビ『踊る!さんま御殿!! 2時間スペシャル』(火曜午後8時)

2日放送分 個人5.9% コア4.4%

⑨日本テレビ『ぐるぐるナインティナイン2時間スペシャル』(木曜午後8時)

4日放送分 個人5.7% コア4.8%

⑩日本テレビ『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(火曜午後7時)

9日放送分 個人5.6% コア4.7%

⑩日本テレビ『1億人の大質問!?笑ってコラえて! 2時間スペシャル』(水曜午後7時54分)

3日放送分 個人5.6% コア2.9%

 視聴率の合格ラインは個人3%程度、コア2%程度とされるので、それに比べるとバラエティ上位組の数字はかなり高い。ドラマで個人視聴率の数字が7%を超えているのはTBS『ブラックペアン シーズン2』(日曜午後9時)くらい。ほかには同5%を超えている作品すらない。

 また、ドラマと比べてバラエティの制作費は割安。1時間ドラマの制作費は平均3000万円だが、バラエティはその3分の2から半分程度でつくれる。ただし、動画配信などの2次利用収入はあまり期待できない。

◆中高年から絶大な人気の『ザワつく! 金曜日』

 1994年に始まった『世界の果てまでイッテQ!』は個人もコアもトップ。特にコアのトップは不動である。家族一緒に観られるところが強みだ。MCはウッチャンナンチャンの内村光良(60)が務めている。

 数々の人気コーナーを持つ。その1つ「世界で一番盛り上がるのは何祭り」の14日放送では、リポーター役の宮川大輔(51)がイタリア中部の小さな町へ飛んだ。いつもながら祭りの高揚と宮川のテンションの高さは合う。イモトアヤコ(38)をスターにした「珍獣ハンター」も衰えを知らない。

『イッテQ!』について日テレの幹部と話すと、「日本で一番利益が出ている番組」と胸を張る。人気がある分、CMの価格も高いからだ。スポンサーになりたい企業が後を絶たない。

 それなのに不思議と終了説を流されることがある。日テレ内で打ち切りが取りざたされたことは1度もない。他局にも『イッテQ』が終わると思っている人間はいないだろう。もちろん秋以降も継続する。

 2018年から始まった『ザワつく! 金曜日』は中高年からの人気が絶大。一方でコア世代にはあまり観られていない。メイン出演者の長嶋一茂(58)、石原良純(62)、高嶋ちさ子(55)が50代以上だから、やむを得ない。司会進行のサバンナ・高橋茂雄(48)が若手に見えるから不思議だ。

 12日放送では一茂ら3人が昭和期にオープンカーが流行したことについて振り返った。中高年にはたまらない番組に違いない。番組側はコア世代におもねるつもりがないのだろう。

◆「BPOがバラエティをつまらなくした」は的外れ

 1995年にスタートした『鉄腕DASH』のメイン出演者はTOKIOの城島茂(53)、国分太一(49)、松岡昌宏(47)。やはり家族で観られるのが大きな特徴である。自然との共生を言外に訴えている番組なので、系列局は「青少年に観てもらいたい番組」などとPRしている。その触れ込みに偽りはない。14日放送では東京・荒川の天然ウナギとその漁などを紹介した。

「BPO(放送倫理・番組向上機構)がバラエティをつまらなくした」と言う向きがあるが、それが的外れであることが分かる。過激さを売り物としないバラエティでも人気は得られる。

『THE突破ファイル』は2018年に始まった。MCは内村光良。人間が絶対絶命のピンチをどう乗り越えたかを考えるクイズバラエティ。放送開始当初はやや苦戦したが、今では常に高視聴率を得ている。

「ネタ」がいいからだろう。たとえば、再現ドラマに仕立てた「突破空港税関」では、ジャングルポケット・斉藤慎二(41)たちが演じる税関職員が、いかに密輸を防いだかを考える。再現ドラマは事実に基づいているから、興味をそそられる。

◆所ジョージ司会の番組が5位、6位

『世界まる見え!テレビ特捜部』の司会は所ジョージ(69)。ビートたけし(77)はスペシャルパネラーという立場だ。世界の面白い映像や衝撃映像、ドキュメンタリーを紹介している。

 放送開始は1990年。30年以上続き、高視聴率を保ち続けている。これがテレビ局にとってバラエティをつくる大きな魅力である。当たったら、人気が衰えるまで、ずっと続けられる。

 ドラマはたとえ大当たりしようが1クール(3カ月)で終わってしまう。その次の作品が当たるかどうかは分からない。このため、テレビ界ではドラマを「短距離走」、バラエティは「マラソン」とも称する。

 バラエティは視聴率が悪かったら、新たなコーナーを設けたり、出演者を交代させたり、テコ入れもしやすい。ドラマも視聴率が振るわない場合、ストーリーを変えることがあるが、大抵はうまくいかない。

『ポツンと一軒家』は個人の数字は高いが、コアは極端なまでに低い。「田舎暮らしもいいものだ」と思う人が多いのは中高年以上だからだろう。

◆自分の世界に例外なく引き込む能力

『プレバト!!』も視聴者の傾向は同じ。個人は高く、コアは低い。夏井いつき氏(67)が査定員を務める俳句コーナーが売り物だから、仕方がない。松井氏に句をけなされた特別永世名人・梅沢富美男(73)が子供のように悔しがる姿は愉快だ。

 この番組の人気に目を付け、俳句を採り入れた他番組もあったが、うまくいかない。MCの浜田雅功(61)や夏井氏、梅沢らこの番組は役者がそろっているが、他番組の陣容は脆弱だからである。

『踊る!さんま御殿!!』の人気も衰え知らず。ひとえに司会・明石家さんま(69)の力だ。世代の違う20代や畑違いの漫画家、声優らをゲストに迎えても垣根をつくらせない。例外なく自分の世界に引き込んでしまう。さんまにしかない才能である。

 さんまがMCを務めるフジテレビ『ホンマでっか!?TV』(水曜午後9時)について終了説が流されたが、実際には秋以降も続く。視聴率も個人3.7%、コア2.3%(7月10日)と悪くない。

◆秋からレギュラー番組が増えるヒロミ

『ぐるナイ』も相変わらず強い。コアの中でも女性の支持が厚い。看板コーナー「ゴチになります!(ゴチバトル)」が視聴者を引き付ける。

『オモウマい店』はスタッフのリサーチ能力がカギになっているが、番組全体の重しになっているのはMCのヒロミ(59)にほかならない。

 ヒロミは昔から愛情と人情に溢れた人なので、登場する飲食店の店主には絶対に恥をかかせない。店をおとしめることも決してない。若いディレクターが店主に失礼な振る舞いをしたら、厳しく叱る。これが類似番組との違いだ。

 ヒロミは秋からレギュラー番組が増える。TBSの月曜午後9時台、フジの金曜午後9時台に番組を持つ。これからはヒロミを抜きにしてバラエティは語れなくなる。

<文/高堀冬彦>

【高堀冬彦】

放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員