Vポイントの課題は、「サービスの少なさ」「ポイントの活用度」

――ところで、ポイント経済圏を意識し始めたきっかけとして、Vポイント経済圏では、「証券口座」というほかの経済圏上位には見られない項目が入っています。これは、どういうことでしょうか。ほかの経済圏との使われ方に違いがあるのですか。

担当者 証券会社として口座開設数トップを誇るSBI証券は、デジタル金融サービスを強固にするため、SMBCグループ(三井住友ファイナンシャルグループのマスターブランド)との連携を強化。2020年にはSMBCグループはSBIホールディングスの筆頭株主となりました。

SBI証券では、Vポイントを活用したサービスを提供しています。こうしたつながりを消費者が理解し、モバイル通信サービスを持たない金融基盤の経済圏としての強みが活かせている結果かと思います。

また、新NISAの開始もあり、消費者の中で投資や資産運用への関心が高まっていることも、要因として挙げられます。

――なるほど。そうした背景があるわけですか。

担当者 しかし、Vポイントのきっかけ1位が「ポイントカード」で37.6%、2位が「クレジットカード」で23.2%なのに対し、「証券口座」は7.6%にとどまっています。

Vポイント経済圏がほかの経済圏のきっかけの上位にあるような「モバイル通信」や「ECサイト」「QRコード決済」のサービス提供を行っていないことから、「証券口座」が3位に上がらざるを得なかったことも要因の1つです。

SMBCグループの金融サービスの強みを活かして経済圏利用を促進させられるため、ほかの経済圏よりも、金融サービスの利用にかぎった使われ方をしやすいのではと考えます。

――ただ、総合満足度をみると、「イオン経済圏」が1位、「PayPay経済圏」が2位で、「Vポイント経済圏」は6位という結果です。「Vポイント経済圏」の課題はどこにあるのでしょうか。

担当者 Vポイント経済圏の課題として挙げられるのは、「サービスの少なさ」「ポイントの活用度」にあるかと思います。

「サービスの少なさ」は、金融サービスが主な会員基盤になるため、ポイントを活用できる場所が少ないことが挙げられます。ほかの経済圏では、金融サービスを強化しているため、Vポイント経済圏の金融の強みが薄れる可能性も十分にあり得ます。

ポイントを活用できる場所が少ないと、満足度の評価をするにも金融に偏った評価になってしまうことも考えられます。

――「ポイントの活用度」の課題とは何でしょうか。

担当者 今回の調査では、「最も活用している」順位ではVポイントは5位で、割合は6.6%です。まだ、利用者には「最も活用している」といえるほどの積極性がないのではないでしょうか。

VISAブランドを生かして特定サービス利用に絞らずにVポイントを貯められるメリットは大きいですが、その認知が追い付いておらず、ポイントが貯まることを意識して利用するには至ってないのではと考えます。

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ポイントは貯めるだけではなく、お金の代わりに使おう

――今後、「ポイント経済圏」の世界はどうなっていくでしょうか。

担当者 「最も意識している経済圏」でトップとなった楽天経済圏は、ECやクレジットカードから参入して現在の地位を確立し、モバイル通信サービスにも力を入れています。6月27日にはプラチナバンドで商用サービスを開始しました。モバイル通信以外での強みとの連携を進めています。

PayPay経済圏では、PayPay、Yahoo!などの乱立したサービスの中で強いサービスに絞る統廃合を行っています。ドコモ経済圏ではAmazonがdポイント加盟店になり、同サイトでのショッピングでdポイントが貯まるようになりました。

Ponta経済圏ではローソンとのTOBを発表し、実店舗を利用したサービス提供にも力を入れています。ポイント経済圏の競争は、「ポイント還元の積極性」が受け入れられる鍵になると思いますので、消費者は各社の施策を見極めつつ取捨選択をしていく必要があります。

――なるほど。「ポイント経済圏」の戦国時代に入っているわけですね。どこがオトクで勝つか、よく研究しておかないと。

担当者 円安や物価高騰により、オトクであることをより意識している昨今、ポイントを活用した生活がより身近になっていくと考えます。

今後はポイントとお金の差分も減っていき、ポイントを貯めるだけではなく積極的にお金の代わりとして使っていく人が増えることも考えられます。

特に2024年は経済圏に対する動きが白熱していますが、各社の戦略がどのように寄与し消費者の生活を豊かにしていくかが勝敗を決めると考えます。MMD研究所では、今後も通信を基盤とした金融サービスの拡大についても調査を行う予定ですので、ぜひお楽しみにお待ちください。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)