軽井沢のラウンドアバウト 六本辻

マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。雲場池通りと離山通りが交差する六本辻は軽井沢で最も有名な交差点?

フランスではよく見かける交差点ラウンドアバウト

ラウンドアバウト(ROUNDABOUT)という言葉をご存知でしょうか? 環状交差点とも、円形平面交差点とも訳されていますが、交差点の一種で、中心の円形スペースの周囲を一方向に周回するシステムです。環状の道路には信号機や一時停止のサインは一切なく、環道の交通が優先されます。ヨーロッパではよく見かける交差点です。

2024オリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市であるパリにはラウンドアバウトが多く存在し、凱旋門の環状交差点やコンコルド広場はとても大きなラウンドアバウトとして有名です。特に凱旋門のラウンドアバウトはシャンゼリゼ通りをはじめとする12本の道が放射線状に凱旋門に向かっていて、パリの代表的な風景を形作っています。

ラウンドアバウトは日本ではあまり見かけませんが、それでも40都道府県、約150カ所に存在するそうです。長野県には10カ所あり、最も有名なのが軽井沢にある六本辻と呼ばれる円形交差点です。「離山通り」や「雲場池通り」といった6本の通りが交差するこの六本辻付近には、お肉が美味しい「PYRENEES(ピレネー)」や、ロシアンティーとサンドイッチの店「MICHAEL(ミハエル)」、イタリアンの「LA TEGOLA(ラ・テーゴラ)」、時々店内で小さなコンサートも開くカフェ「RAPHAEL(ラファエル)」といった、新旧のレストランやカフェがあり、いまも多くの人に愛されています。


雲場池通りからの六本辻

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軽井沢でバーといえば

そんな六本辻から離山通りを旧軽井沢のロータリーに向かって数十メートル行くと左手に「ð RASCAL(ザ ラスカル)」というカフェ・バーがあります。軽井沢でバーといえば「ð RASCAL」、ともいわれる老舗のカフェ・バーです。


離山通りに面した現在の「ð Rascal」

「ð RASCAL」は、ヨーロッパで「WHISKY A GO!GO!」というクラブを開いていた方が帰国し、伊豆の下田にまずお店を開き、50年前、旧軽井沢に支店をオープンしたところから軽井沢での歴史が始まりました。

当時の軽井沢には避暑に訪れる人達のために、スーパーマーケットの「紀ノ国屋」や、おしゃれなカフェ&ブティック「水野」、「サンモトヤマ」といった有名店もありましたが、大人が夜、お酒を飲め、リラックスできる店がなかったのです。「ð RASCAL」はそんな人達の間で人気のお店になり、軽井沢の名士やおしゃれな人達が訪れるようになりました。いろいろなインタビューで「行きつけの店はどこですか?」と聞かれても全く答えない軽井沢の名士の一人が、「ð RASCAL」とだけ答えたという有名なエピソードもあります。

文化人や著名人も多く訪れますが、お店を訪れるマナーあるすべての人達と、個人対個人として接するというオーナーの姿勢は、オープン以来、今も変わりません。

旧軽井沢の聖パウロ教会の近くにあった旧店舗から、12年前に現在の場所に移転しました。

面積は旧店舗の1.5倍と広くなりましたが、店内の雰囲気は50年前とほとんど変わりません。カウンターやテーブル、壁にかかるポスターなどは50年前のままです。店内から見えたガラス張りのDJブースはなくなってしまいましたが、現在もレコードがたくさん並ぶコーナーから、夜はレコード盤を中心に、1960年代や1970年代のジャズやロックが、中音量で流れています。提供するのはジン、ウイスキーそれにワインといった酒類に、年季の入ったコーヒーマシーンで作られるコーヒー各種。軽食も提供しています。


Woodyな店内は歴史を感じさせる

最近では、オーナーの目にかなった新しい料理人が、西洋料理も提供するようになりました。また今までとは違った「ð RASCAL」の歴史が刻まれ始めています。

「ð RASCAL」のオーナーは、気心が知れれば、本当にいろいろなことを話してくれる軽井沢の生き字引のような存在です。夏の夕暮れ、冷えた白ワインを飲みながら、彼の話にゆっくりと耳を傾けて軽井沢の歴史を知るのも、自分にとっては、とても豊かで大切な時間です。

2024年7月25日