日本人のがんによる死亡数で、肺、大腸に続いて多いのが「胃がん」です(2022年※)。特に40代後半から罹患率は上昇するため、更年期世代になると心配になる方も多いのではないでしょうか。ただ、消化器病専門医の福田頌子先生は「胃がんは予防できる病気の1つ」だと話します。効果的な予防方法について聞きました。
※出典:国立がん研究センターがん情報サービス
教えてくれたのは…
監修/福田頌子先生(あさひの森内科消化器クリニック院長)
医学博士。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医。消化器疾患や生活習慣病などの内科疾患まで幅広く診療。検診ドック、腸内細菌外来やダイエット外来などもおこない、病気を治療するだけでなく未然に防ぐ予防医学にも力を注ぐ。
胃がんとは?
胃がんは胃の粘膜にできる「がん」です。慢性胃炎などで炎症が続いていると細胞が傷付き、がん化しやすいといわれています。
一般的に胃がんは、内側の粘膜から徐々に広がっていきます。胃の壁は何層にも分かれていて、がん細胞が胃の粘膜の比較的内側にある「粘膜層」「粘膜下層」に留まっていれば「早期胃がん」、粘膜下層を越えて固有筋層、漿膜(しょうまく)にまで広がったものを「進行胃がん」といいます。
がんが粘膜下層に至るまでには2~3年かかるといわれていて、 定期的な内視鏡検査(胃カメラ)で早期発見することが可能です。早期胃がんは治癒率が高く、5年生存率は90%を越えます。
一方で胃がんは自覚症状がほとんどないことが特徴です。胃痛や胸やけ、体重減少、貧血、タール便(黒い便)などが出た場合は進行しているケースがほとんどです。
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胃がんの原因の99%はピロリ菌
胃がんの罹患率は男性のほうが高く、女性の約2倍。原因は解明できていませんが、女性ホルモンが胃がんの抑制に作用していると考えられています。
罹患率に性差はあるものの、胃がんの発生に大きく影響しているのがヘリコバクターピロリ菌で、日本では胃がんの原因の99%がピロリ菌の感染です。 ピロリ菌に感染すると、慢性萎縮性胃炎を起こし、胃がんのリスクを高めるためです。なお、愛知医科大学の研究では、ピロリ菌に感染している人では生まれてから85歳までに胃がんに罹る確率が男性で17.0%(約6人に1人)、女性で7.7%(約13人に1人)に上る可能性が高いという結果が出ています。
逆にいえばピロリ菌に感染していない人が胃がんにかかることはまれです。心配しすぎなくてもよいでしょう。