分譲マンションを初めて購入する方が戸惑いがちなマンション特有のシステムのひとつに、「マンション管理組合」というものがあります。
実際、既にマンションの管理組合に所属している方でさえ、管理組合について詳しく理解している方はそう多くはありません。
そこで今回は、マンション管理組合の役割や管理会社との違い、役員になる際に知っておきたいことを解説していきます。
マンションで生活していく上では、ぜひ知っておきたい知識なので目を通してみてください。
マンション管理組合とは?設立義務や役割は?
マンション管理組合とは、マンションの維持・管理を目的に設立される組織のことをいい、マンションの購入者(区分所有者)全員が、この組織の一員となり他の組合員と共同でマンションの維持・管理を行っていく必要があります。
自身も組合員となるからには、マンション管理組合とは何かをきちんと理解しておくことが大切です。
そこでまずは、マンション管理組合の基本として、設立義務や役割を詳しく解説していきます。
マンション管理組合の設立は法律で義務付けられている
マンション管理組合は、区分所有法にて「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うための団体を構成し、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」と定められています。
条文の通り、マンション管理組合の設立は、法律によって義務付けらており、区分所有者が複数集まった時点で必ず結成されます。
区分所有者は、マンションを所有する限り、管理組合の一員として共同でマンションの維持・管理を行っていく義務があります。
ただし、マンションの所有者が第三者に部屋を貸している場合、その部屋を借りて住んでいる人は組合員になることはできません。
組合員となれるのは、あくまでもマンションの所有者だけなのです。
マンション管理組合の主な役割
マンション管理組合には、主に以下の5つの役割があります。
・敷地や建物の管理
・管理費や積立金の管理
・管理規約の作成
・書類の管理
・防犯及び防災
それぞれの役割を詳しく見ていきましょう。
敷地や建物の管理
マンション管理組合の重要な役割のひとつが、建物や敷地などを適切に管理して住みやすい環境を維持すること及び、マンションの資産価値を守ることです。
分譲マンションなどの区分所有建物は、各区分所有者が単独で所有する「専有部分」と、廊下やエレベーター、エントランスなどのように共同で利用する「共用部分」という2つのエリアで構成されています。
専有部分は区分所有者が管理するのが基本ですが、共有部分を管理する人があいまいだと清掃が行き届かず見た目が悪くなったり、設備不良が起きたりしてマンションの資産価値が低下する可能性があります。
それを防ぐために、マンション管理組合を作って区分所有者の中から代表者を選出し、代表者が主体となってマンション管理に関する業務を進めていくのです。
管理費や積立金の管理
マンションの所有者から集めた管理費及び、修繕・設備投資のための積立金を適切に管理するのも管理組合の大切な役割です。
国土交通省の「マンション管理標準規約」では、管理費・積立金の管理に関して次にように定めています。
・修繕積立金の運用
・管理組合の消滅時における残余財産の精算
組合員から徴収した費用をどのように運用していくかは、理事会が中心となって決めます。
管理規約の作成
様々な人が共同生活を送る上では、ルールの規定が欠かせません。
マンション管理組合では、区分所有者同士のトラブルを防止するためのルールとして「管理規約」を作成します。
国土交通省が定める「マンション標準管理規約」に基づき、共用部分の範囲や使用方法、理事会の権限といった基本事項の他、マンションごとの状況に合わせたルールなどを定めます。
その後も、法律の改正や状況の変化によって従来の管理規約では対応できなくなることが考えられるため、定期的な見直しが求められます。
書類の管理
新築時に宅地他店物取引業者から交付された設計図や、修繕の履歴が分かる書類などの管理も管理組合が行います。
これらの書類は、修繕工事や建て替え工事が必要となった時に重要な資料となるため、保管先を明確にし、くれぐれも紛失しないよう気をつけなければなりません。
管理会社や施工業者に貸し出す場合は、記録に残すなど責任を持って管理することが大切です。
防犯及び防災
マンションの住人の防犯と防災に対する意識の向上や、万が一の際の自助・共助がスムーズにいくようにすることも管理組合の務めです。
そのためには、見回りや避難訓練、防災マニュアルの作成に加え、住人同士の親睦を深めるようなイベントの企画・開催も有効です。
また、専有部分であっても排水管や火災報知機の点検に関しては、管理組合が主体となって行うことが一般的です。
これらの設備が故障していた場合、大きなトラブルにつながる恐れがあるので、定期点検は必ず行っておく必要があります。
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理事会役員の役職・活動頻度は?
マンションの区分所有者は、もれなく組合員となりますが、マンションの維持・管理を推進する組織である「理事会」に参加できるのは、理事に選出された人のみです。
ここからは、理事会役員の主な役職と役割、活動頻度について見ていきましょう。
理事会役員の主な役職
理事会役員は、管理組合の最高意思決定機関である総会で、全ての組合員の中から選出されます。
選出方法は、マンションによっても異なりますが、立候補か推薦、あるいは持ち回り(輪番制)が一般的です。
代表的な役職と役割をご紹介します。
・理事長
マンション管理組合の代表として、総会の招集や議事の進行、理事会の取りまとめ、管理会社などの外部業者に対する窓口なども担います。
ただし、理事長が全ての決定権を有しているわけではありません。
マンション管理に関する取り決めは、理事会で協議して総会で承認を得た上ではじめて決定します。
・副理事長
理事長の補佐役として職務のサポートを行うほか、理事長が不在の際は代理として理事長の職務を担うこともあります。
・会計担当理事
区分所有者が積み立てている管理費などの出納、保管、運用といった会計業務を担います。
専門的な知識が必要とされるため、業務の大半は管理会社が行っていることも多く、その場合は管理会社から提出された会計書類をチェックし、収支状況を把握する役割を果たします。
自主管理の場合は、現金や通帳の管理、家賃滞納者への督促、会計書類の作成などを全て自分たちで行わなければならないため、より重責が伴います。
・監事
中立的な立場から、上記の役職者が適正に業務を遂行しているかを監査します。
そのため、理事会の決議には加わりませんが、必要に応じて意見を述べたり監査結果を報告したりします。
監査の結果、不正が疑われる時には臨時総会を招集する権限を有しています。
・防災担当理事
管理組合によっては、防火管理者の資格を有するマンション防災の責任者「防災担当理事」を設置するところもあります。
・理事会役員以外
理事会役員以外の組合員は、役職がないからといって何もしなくて良いわけではありません。
管理規約の変更や、管理費・修繕費などの積立金の使い道に関する議案を決定する際に投じる一票が、マンションの資産価値を左右します。
そのため、議案が適正かどうかをしっかり見極めなければなりません。
理事会の活動頻度
理事会の開催頻度は、管理組合によって異なりますが、多くは月に1回~数ヶ月に1回のペースで開催されます。
また、管理会社へ業務委託をしているか、自主管理かによっても業務の負担割合が変わってきます。
管理会社に管理業務の一部を委託している場合は、共用部分の清掃・点検、会計管理といった日常業務の大半を管理会社が行います。
また、委託された業務内容を理事会で報告し、必要に応じてアドバイスや提案も行ってくれるため、役員に選出されたからといって急に忙しくなるという心配はありません。
しかし、管理会社からの報告やアドバイス、提案を受けた上で、最終的にどのような判断をするかは管理組合の裁量に委ねられています。
適切な判断を下すには、管理会社からの報告にしっかりと目を通し、マンションの状態を正しく把握する必要があります。
不安なことや分からないことがあれば、積極的に管理会社に尋ねるようにしましょう。
一方、自主管理の場合は、自分達で対応しなければならない業務が増えるため、組合の運営方法や役割分担には一層の工夫が必要です。
専門知識を要する業務については外部の専門家に相談するなど、マンションの維持・管理がきちんとできる体制づくりが求められます。