マンション管理組合は法人化も可能

マンションの管理組合は法人化することも可能です。
法人化すれば、社会的な手続きを法人主体で実施できるようになります。
法人化することでのメリットやデメリットを解説していきましょう。

マンション管理組合の法人化とは?

法人化と聞くと株式会社をイメージする方も多いでしょう。
しかし、マンションの管理組合を法人化する場合、会社を設立するわけではありません。
管理組合の総会にて決議され登記を行うと、「管理組合法人」という法人格になります。
そのため、マンションの管理組合以外の個人や法人が管理組合法人を名乗ることはできず、万が一名称を使用された場合は区分所有法にて罰則が科せられるケースがあります。
法人化したからといって管理組合の仕事に変更があるわけではなく、マンションの住んでいる区分所有者が持つ権利や役割が変わることもありません。

法人化するメリット

マンション管理組合を法人化することで、どういったメリットが得られるのでしょうか。
解説していきましょう。

管理組合法人名義で登記ができる

管理組合を法人化すれば、不動産登記を組合の法人名義でできるようになります。
例えば、駐車場が足りなくなってしまった場合、新しく近隣の駐車場を購入することになれば、法人していない場合は管理組合の理事長名義で不動産登記の実施を行わなければいけません。
その場合、理事長が交代すれば新しく所有権移転登記をする必要があり、手間や費用がかかってしまいます。
しかし、法人化すれば理事長が交代した際も変更の必要がないので手間がかかりません。

個人の財産と団体の財産を明確に分けることが可能

法人化すれば、管理組合名義の口座が作れるようになります。
法人化していない場合、徴収した修繕積立金や管理費などは役員の個人口座で管理する必要があり、団体の財産と個人の財産の区別がつきにくく、不正が起きやすいといったデメリットがあります。
しかし、法人化すれば組合名義の口座が開設できるため、管理組合の財産を積み立てることが可能です。
不正を防ぎやすく、理事長が代わるたびに口座変更を行う必要もないため、手間もかかりません。

理事長の負担が軽減する

マンションでは管理会社と管理組合、管理組合と住人との間でトラブルが起きるケースもあります。
トラブルが大きくなれば調停や訴訟に発展するケースもあり、その場合は理事長の名義で訴訟などを進めなければいけません。
しかし、理事長の精神的な負担は大きいものです。
法人化していれば管理組合法人名義で調停や訴訟が行えるので、理事長の負担を軽減できるでしょう。

課税の心配がない

法人化するので新たに税金の負担が発生すると考える方もいますが、マンションの管理組合法人は法人税が非課税なので新たに課税される心配がありません。
ただし、収益事業を営んでいる場合は課税されるので注意しましょう。

借入が可能

マンションでは改修工事のための費用を修繕積立金として徴収されている場合が多いです。
しかし、不具合が多くあれば、徴収した積立金だけでは資金が不足してしまう可能性があります。
その場合、区分所有者全員から一時負担金として徴収するか、金融機関からの借り入れが必要です。
借入となれば、理事長のほか理事全員の連帯保証が求められ、手続きが複雑化しやすいです。
しかし、法人化していれば手続きがスムーズになるだけではなく、信用力が増すので融資も受けやすくなります。
実際に融資を目的に法人化を行った組合もあるので、修繕の際に融資を考えているなら、法人化を先に進めた方がスムーズに融資を受けることができます。

法人化するデメリット

法人化するにあたってのデメリットはあるのでしょうか。

法人化するための手続きが必要

法人化するにあたっては、登記の手続きが必要です。
登記に必要な書類や登記申請書を用意し、法務局に出向いて申請作業を行います。
面倒であれば司法書士や弁護士に依頼することも可能ですが、報酬が発生するのでコストがかかってしまいます。
あらかじめ、どの程度の費用が発生するのか、問い合わせをして聞いてみましょう。

理事長が交代するたびに登記変更をしなければいけない

登記は法人化するために行う1回だけではなく、その後も理事長が交代するタイミングで代表者の変更登記が必須です。
申請のための手続きや費用が発生するので、手間やコストを上回るメリットがない場合は、法人化はせずに組合のまま管理をした方が良いでしょう。

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マンション管理組合の役員になる際に知っておきたいこと

マンションの管理組合で役員になった場合、知っておくべきことがいくつかあります。
以下にまとめているので参考にしてください。

役職ごとに立ち回りに違いがある

前述したように、管理組合の理事会役員には役職があります。
役職ごとに立ち回りが代わり、任された業務を全うしなければいけません。

・理事長:組合の代表
・副理事長:理事長の補佐
・会計:会計業務
・監事:管理組合の監査

管理組合の代表者でもあるべき役員ですが、決議には組合員の合意が必要です。
合意がなければ決議ができず、自分の好きなようには規則を変えられないので注意してください。

理事長に選任されても断ることができる

「理事長にはなりたくない」「役員になりたくない」といった思いを持つ方もいるはずです。
役員を決める際には、公平性を出すために輪番制を採用しているマンションも多いです。
輪番制とは、順番を決めて代わる代わる担当になる制度を指し、役割を順番に割り当てることを言います。
そのため、長く住んでいればいずれは順番が回ってきて役員に選任される可能性があります。
ただし、役員は義務ではなく法律で決まりがあるわけではないので、輪番制でも断ることは可能です。
しかし、「面倒だから」「仕事で忙しいから」「小さい子どもがいるから」などといった理由で拒否をすると、他の区分所有者から反感を買う恐れがあります。
プライベートが忙しくても役員になっている人は多くいるので、できる限り引き受けて役員の仕事を全うしましょう。
ただし、体調不良といったやむを得ない理由がある場合は、事情を説明すれば辞退できます。
順番を後回しにしてもらうと他の人からの理解も得やすいです。
また、理事長に選任された場合も他の役員同様断ることができます。
役員になればいずれは理事長になる順番も回ってくるので、極力断らず、どんな役割を担うのか事前に確認しておくと、物事をスムーズに進められます。

役員報酬の有無について

役員になれば報酬が貰えると考えている方もいますが、実際には無報酬で活動しているマンションが多いです。
しかし、報酬はマンションの管理組合の規約で定められている事項です。
マンションによっては報酬を設定しているところもあり、役員で一律の額を支払っているマンションもあれば、役員によって報酬額が違うケースもあります。
報酬額は、総会の決議に基づいて制定し、管理規約に記載する必要があります。
予算が余ったからといって報酬に上乗せすることはできないので注意してください。

管理用語について

マンションの管理組合では、理事会を開催する際、管理に関する専門的な用語が使用されるケースもあります。
話を理解するためにも、あらかじめ用語について把握しておいた方が総会時に困らずに済むはずです。

・管理組合:建物や敷地、付属施設の管理を行う所有者全員で構成される団体
・管理規約:マンションの管理や使用に関わる組合独自のルール
・専有部:居室を指した用語で、倉庫や店舗、事務所なども該当する
・共用部:マンションにおける専用以外の共同で使用する建物や付属物
・管理費:マンションの管理で使用する費用で毎月支払いがある
・修繕積立金:修繕工事に充てられるためのお金で毎月支払いが必要
・大規模修繕工事:建物や設備の維持や修繕など、大掛かりな工事で一般的に15年前後の周期で実施する

基礎的な用語となるので、話しを理解するためにも覚えてから総会に参加しましょう。

役員代理について

理事会は週末に開催されるケースが多いです。
しかし、プライベートの都合や仕事によって参加できないこともあります。
その場合、「自分の代わりに家族を参加させたい」と考えるはずです。
役員でない人間なので、参加は難しいと感じる方もいますが、法律上に定めはありません。
しかし、マンションの管理規約によって代理出席が可能か否かは設定されているので、あらかじめ確認しておきましょう。

・原則NG
・やむを得ない理由がある場合のみ参加OK
・代理人は配偶者や一等親の親族に限る
・オンライン会議システムでの参加が可能
・議決権行使書の提出が必要

といった決まりがマンションごとに存在します。
理由がある場合のみ代理人による出席を認めている組合は多いので、都合によって参加できない場合は、事前に事情を説明して代理人が出席する旨を理事長に伝えておきましょう。