その土地でしか味わえない食や、ものづくりに出合うことは、旅における大きな楽しみのひとつ。さらに、その町に暮らす人たちが織り成すカルチャーに触れられれば、より一層、旅の思い出が心に刻まれるもの。訪れたのは、本州とは気候も植生も異なる南の島、奄美大島。そこでは古くからサトウキビを原料とした黒糖が作られ、バラ科の植物シャリンバイによる泥染めを施した大島紬といったものづくりの歴史がある。アパレルの草木染めなども手がける『金井工芸』の金井志人さんが、奄美市を中心とした北部の町の楽しみ方を伝授。
Landscape_『2つの海が見える丘』から、東シナ海と太平洋を一望する。
標高約130m。加世間峠頂上付近のビュースポット『2つの海が見える丘』(大島郡龍郷町赤尾木)からの眺め。左は東シナ海、右には太平洋が望め、その名前の通り、2つの海を一望できる。くびれた部分は赤尾木集落になっていて、それぞれの海の間は徒歩で約10分という近さ。「天気が良ければ太平洋側に、サンゴ礁が隆起してできた喜界島を見ることができます。奄美の地形がわかるユニークな眺望だと思います」と、金井志人さん。午前中は逆光になるため午後に訪れることをおすすめ。特に看板があるわけではないが、車を数台、停められるスペースがある。パラグライダーのランチャー台があるが、危険なため、ロープの外には決して出ないように注意。
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Culture Spot_様々なジャンルの人が行き交う、『金井工芸』の工房とギャラリー。
ギャラリースペース。予約なしでも訪問可能。奄美の作家の作品も並ぶ。
工房。下で火を焚き、600㎏のシャリンバイを大きな釜で煮出している。地下水を使用。
シャリンバイの煮汁と泥田を使う奄美の泥染めは、1300年以上の歴史がある大島紬の絹と糸を染める技法。大島紬発祥の地といわれる龍郷町にある『金井工芸』(大島郡龍郷町戸口2205−1)の金井さんは、それだけでなく自身の作品づくりや、アパレルや異業種からのオーダーも受け、天然染色の新しい世界を切り拓いている。併設のギャラリーではイベントや展示会が行われ、島内外や海外からも人が集まり、ハブ的な役割を果たしている。事前予約にて染色体験も実施。