老後の月の支出目安

実際に老後の月の支出はどのくらいかかるのか見てみましょう。2022年の家計調査報告から65歳以上の夫婦二人と一人暮らしの場合で比較してみます。

1)夫婦二人の場合

夫婦二人で生活する場合の月の支出は約27万円、年金の収入は二人合わせて約22万円でした。この場合、毎月約5万円が不足しており、その分を金融資産の取り崩しでカバーしていることになります。

引用:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要」より一部抜粋

2)一人暮らしの場合

65歳以上の一人暮らしの場合だと月の支出は約15万5000円、年金の収入は約12万円となり、不足分は約3万5000円でした。

引用:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要」より一部抜粋

この調査で注意が必要なところは「住居費の割合」です。二人世帯と単身世帯のどちらも消費支出の10%以下になっており、単純に計算すると住居に必要な費用が2万円以下ということになります。

住宅ローンの支払いが終わっていれば10%以下ということもありえますが、現実的には賃貸の人や65歳以上でも住宅ローンの支払いが続く人もいるでしょうから、統計上の数字からは外れているご家庭も多いでしょう。

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老後の必要資金シミュレーション


上昇矢印が書かれた財布
【画像出典元】「stock.adobe.com/thanksforbuying」

次に、具体的なシミュレーションを行いましょう。今回は、不動産の有無、60歳から65歳の間に働かない場合の必要額を考慮します。

1) 持ち家の場合

持ち家がある場合、家賃は不要ですが、住宅ローンの支払いがあるか否かで家計の状況は大きく変わります。例えば40歳の時に住宅を購入し、返済期間を35年間とした場合、単純計算で75歳頃まで返済が続きます。65歳で退職したと仮定すれば、約10年間は年金から住宅ローンを返済することになります。また不動産を所有していれば固定資産税の納税が必須になり、マンションであれば管理費や修繕費が必要です。なお管理費や修繕費は地域や建物の築年数などで異なりますが、毎月2万円から3万円程度が必要なことが多いようです。

2)賃貸の場合

賃貸の場合、毎月の家賃が必要です。特に都市部での家賃は高額になるため、計画的な貯蓄が不可欠です。また高齢になると新たに賃貸物件を借りにくいという傾向も少なからずあります。

60歳定年・再就職ナシ、年金繰り上げ受給をしない場合に必要な費用

60歳で定年退職し、再雇用や再就職をせずに65歳になるまでの間に年金受給を繰り上げないなら、生活費は全額貯金から賄う必要があります。この5年間の生活費を試算すると以下のようになります。

65歳以上の二人世帯における月の支出平均値である約27万円を当てはめて試算してみましょう。

毎月の支出27万円×60カ月=1620万円

あくまでも目安ですが、5年間で1600万円相当の資金が必要という結果になりました。一人暮らしの月の支出15万5000円で計算しても、5年間で930万円の資金が必要となります。住宅ローンの返済が残っていたり、賃貸住まいの場合は、住居費5年分がこれに加算されます。仮に月10万円の支払いとしても、5年間で追加600万円が必要です。

当然年金を受け取るようになってからも、求める生活のレベルに応じて月の不足額が出てくるでしょう。

乱暴な計算ですが、85歳まで生きるとすると、65歳で年金を受給しはじめるとして、月の不足額×20年(240カ月)が必要となります。月の不足額が仮に5万円とすると1200万円、住宅ローンの残債額、マンションの管理費・修繕費などの住居費が別途加算されます。賃貸の場合は家賃20年分(仮に月10万円だとすると2400万円)が必要となります。こうして計算していくと、老後2000万円の準備ではとても足りないという人も多く出てくるでしょう。

老後資金を考える場合は、年金を受け取らず、収入もない無給期間にいくら必要なのかも計算してみましょう。試算をして、このままでは老後資金が足りないとなれば、60歳で退職した後も再雇用や再就職をして収入を確保するなど、ライフプランの見直しが必要となってきます。