たいみち
ガリ版・謄写版
先日、ガリ版のガラスのやすりを入手した。存在するのは知っており、以前から当てもなく探していたが、骨董イベントで売られているのを発見することができた。せっかくなので今回はその使い方について記録を残そうと思う。
ところで、この連載を読んでくれている皆さんは、ガリ版やその「ヤスリ」を知っているだろうか。実は私自身、ガリ版の本体を持っておらず、使った記憶もないので知識もない。
知っていることをネットの情報で補填した程度の説明になるが、ガリ版は簡易的な印刷装置だ。正しくは謄写版というが、印刷用の原稿を作るときに、ガリガリと音がすることから、ガリ版と言われている。
ガリ版は、ガリ版用の原紙(半透明で蝋が引かれている薄い和紙)に文字やイラスト、線、図形などを書いて、それを紙に印刷する道具だ。どういう仕組みで紙に印刷しているのかというと、原紙をガリ版用のやすりの上に載せて鉄筆で書くと、ヤスリの細かいギザギザにより原紙に小さな穴が開く。その穴をガリ版用のインクが通って、紙に写るというわけだ。
*ガリ版用原紙の箱。
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ガリ版用普通のやすり
ガラスのやすりの前に、通常のやすりを持っていることを思い出し、引っ張り出してきた。持っているだけで使ったことがないので、印刷のまねごとをしてみることにした。ガリ版用の原紙はたくさん持っている。ガリ版本体は持っていないが、スタンブ台で代用できるのではないだろうか。
よしやってみよう。
まず、やすりはこういうものだ。漢字で書くと「鑢」である。いろいろな種類やサイズが、形はこれが一般的と思われる。木枠に挟まれたグレーの部分は鉄の塊で、とても重い。目の粗さが裏表で違っており、木枠から取り外してひっくり返せるので、両面使うことができる。他のタイプの目のやすりと入れ替えることもできる。
*ガリ版用のヤスリ。箱のラベルが気に入って購入したが、あまりに重くて持ち帰るのが大変だった。
*やすり部分は取り外せる。
そしてガリ版用原紙と、原紙に書くための筆記具「鉄筆」。原紙はパリパリした触感と透明感に加え、メーカーや商品名のタイトルのデザインが素敵で、使わなくても持っていたくなる。
*ガリ版用の原紙。薄い和紙に蠟がひかれている。罫線は無地や地図、五線譜などいろいろなタイプがある。
*ガリ版用の鉄筆セット(テンプレート付き)。先端を付け替えられるタイプ。
では、実際に書いてみよう。ヤスリの上に原紙を載せて書いてみると、やすりといっても、凹凸はとても細かいので、書きづらさはない。
これをスタンプ台の上にのせて、その上から転写する紙を押し付ける方法で出来るだろうか。
紙はインクが馴染みやすそうなざらっとした紙を使用した。
拡大すると、ヤスリの凹凸の跡がわかる。
本来のガリ版は、原稿の下に印刷する紙を置き、原稿の上にインクを載せるので反転させる必要はないが、今回はスタンプの要領で転写するので原紙を反転させている。この上に紙を置き圧力をかけて見る。
紙が動かないように抑え、指でなぞるように圧力をかけて見た。すると少しかすれているが、思ったよりもクリアに写っている。
印刷風に何回かやってみると、紙がずれないように気を付ければ、概ねうまくいくことが分かった。
調子に乗って、絵を描いて、線もつけてみることにした。線は点線用の鉄筆を使ってみる。
*鉄筆セットに入っていた点線用の鉄筆
線を引くのが下手で曲がってしまったが、いい感じに描けた。
では、紙に写してみよう。
反転させ、描いたところがスタンプ台の中心に来るように置く。
紙を置き、指でなぞるように押す。紙にインクが写るのが反対側からも確認できるまで 繰り返す。
線が途切れているのと、点線がきれいに写っていないが、まぁまぁの出来かな。
同じ原稿のまま何度か繰り返すと、1回目より、2回目以降のほうがインクが浸透しているからか、きれいに写ることが多い。
これはガリ版ではないが、仕上がりはガリ版風で、ガリ版より簡単でなかなか楽しい。