日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。
「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸で花に携わってきた谷中直子がご紹介いたします。
毎月、旬の雰囲気を楽しめる花をピックアップして最後の一輪まで楽しみつくす、そんな花のあしらいのお話です。
2023年10月24日から二十四節気は霜降に
霜降(そうこう)とは、露が霜に変わる頃。この時期になると朝晩は冷えこみ、地域によっては霜が降ることも。
次の立冬から暦の上では冬になるので、この霜降が秋の最後の節気になります。
今年は夏のような気候がずっと続いていたので、心地よい秋は短く、すぐに終わってしまって、もう寒い冬になってしまうのだろうな…と少しだけセンチメンタルな気分に浸りながら、この時期にふさわしい花は何か思いを巡らせました。
山々ではこれから燃えるように色づいた紅葉が楽しめる頃になりますが、それとは反対に、秋の澄み渡る空気と静けさを表現してみたいと思って、純白の「胡蝶蘭」をいけることにしました。
胡蝶蘭をカジュアルに楽しむ
カトレアと並び、蘭の女王とも呼ばれる胡蝶蘭。
たくさんの蝶が舞うように見えることから付けられた名前はとても優雅ですが、もともとは東南アジア原産の着生植物で、土に根を下ろさず樹木に着生して生きているたくましい植物です。
根が付いている鉢植えの胡蝶蘭はもちろん、切り花にしてもとても日持ちが良い優秀な花です。
色や大きさも様々ですが、今日は純白で小輪タイプの品種「アマビリス」を選びました。
胡蝶蘭はお祝い事や冠婚葬祭などフォーマルな場面でよく見られるため、きちんとした印象をお持ちの方が多いと思います。
今回はそんな胡蝶蘭を気軽に楽しみたくて、カスミソウと合わせてカジュアルダウンさせてみました。
1本で何輪もの花が付いた長い形状の花をいかして、花が一番きれいに見える角度を見つけましょう。
胡蝶蘭を支えるように、雲のようにふんわりしたカスミソウを添えますが、カスミソウはまんべんなく散らすよりも固めてひとまとめにする方が、今っぽくて素敵に仕上がると思います。
今回使用したカスミソウは小粒でぎゅっと密に咲く「キャンディダブル」という品種を選びました。純白の胡蝶蘭とともに、キラキラした霜のような質感を表現できたかな?と思います。
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大胆なバランスで胡蝶蘭を際立たせる
存在感抜群の胡蝶蘭はボリューミーなグリーンと合わせても負けません!
合わせたのは年末にかけて大人気の香り高いコニファー「ブルーアイス」と銀葉の「ロシアンオリーブ」。
一方にダイナミックに流していけることで器と胡蝶蘭とのバランスをとっています。
氷のような質感の色ガラスの花器と、冷たい霜柱のようなコニファーのフォルムが胡蝶蘭の高貴さをいっそう引き立ててくれる、品のある花あしらいです。