占いは非科学的なものであるはずなのに、どうして古代から現代になっても、そして日本だけでなく世界中で愛されているのか?
そんな疑問を掘り下げた特集「30歳からの占い」のスピンオフ的展開としても楽しめるドラマ作品が登場した。
舞台を中心に活躍する俳優・今井朋彦が、11月公開の映画「シンデレラガール」でも注目の俳優・太田将熙とバディを組んで異色のミステリードラマに挑戦。
物語は、恵まれない家庭に育ち、夢も希望も諦めた青年・風見義正(太田将熙)が、勤めている100均ショップオーナーの代理で占い師・八卦実綱(今井朋彦)に会いに行くところから始まる。八卦に「明日、何かが起こる」と断言された風見の元に、元カノの武井光里が意識不明の重体だという知らせが届く。自尊感情が低く、現実を素直に受け入れられない風見や武井光里の親友で心の病を抱えた安藤久理子(菅野莉央)など、登場人物たちの持つ自己否定の感情が「認知バイアス」を生み、目の前の現実を歪めてしまうという「心の問題」を八卦実綱が鋭く指摘していく。さらに事故の真相が八卦実綱の推理によって解決されていくというストーリーだ。
このドラマで随所に出てくる、バーナム効果、認知バイアスといったキーワードはHarumari TOKYOでの取り上げてきた「占いと心の関係」における重要な心理用語。これまでの取材でも占い師の鏡リュウジさんや精神科医の和⽥秀樹さんを通じて、その心理と注意点を明らかにしてきた。占いは科学や統計学で実証できるものではない。それでも占い的コミュニケーションが必要とされるのは、人々が人間生活において「科学的なもの」だけに依存することでは心が持たないという現実にも依っている。非科学的ながら、科学では解決できない「自分の性格」や「人生」について占いというタームを利用して、言語化や解釈を愉しむというのが本誌が伝えたい占いの上手な活用法。『八卦実綱』の主人公は”占いをしない”占い師という逆説的な立場でその本質を突き、聴く者に気づきを与えてくれる。
また、「自尊感情の低さ」もドラマの全編を通じたテーマの一つ。自分に自信が無い、否定的に捉えがちな気持ちは誰しもが抱えてしまう心理だ。それによって現実を悪い方向に認識してしまうことで、さらなる失敗や不幸を招くことも。現実社会はもちろん、自分自身の評価についても、ネガティブ、ポジティブバランス良く認識することが心の安定につながることはこれまでの取材でも明らかにしてきたが、『八卦実綱』の登場人物たちが、その心理とどのように向き合っていくのか、ストーリーの展開にも注目したい。
『八卦実綱』の視聴はこちらから。
【NUMA】
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