前例のない華やかさと奇抜な演出が大きな反響を呼んでいるパリ2024オリンピック開会式。その衣装制作を手がけたアトリエで本番前、今回の芸術監督を務めた舞台演出家トマ・ジョリーらを取材したという舞台裏リポートを、マリ・クレール インターナショナルのフランス版デジタル記事よりお届け。
2024年7月26日(現地時間)、オリンピック開会式で世界中の視線がセーヌ川に集まった。数週間前から、各チームはダンサーやアーティストが着用する衣装の最終調整に追われていた。極秘裏に。
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「この糸を引っ張れば、そう。もし弾力がなくなっても問題ない」
パリ・オペラ座の元衣装デザイナーでテーラーのRoberta Oakey(ロベルタ・オーキー)は、このアトリエで物事に目を光らせながら、40年間使い慣れたハサミを握りしめていた。パリオリンピック2024の本部から目と鼻の先にあるこの場所で、オリンピックとパラリンピックそれぞれの開会式と閉会式の衣装が作られる。
そして6月のある火曜日の朝、私たちを迎えてくれたデザインチームは抑えきれない熱意に満ちていた。喜び、同時にストレスもある。ミシン、作業台、布地、型紙……材料や道具が私たちの好奇心いっぱいの視線に触れるよう展示されているが、最終的な仕上がりを見ることはできない。すべての衣装にはカバーがかけられている。2024年7月26日までの極秘事項だ。残念ながら。
セレモニーのために作られた3000ものユニークなシルエット
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とはいえ、映画『プセの冒険 真紅の魔法靴』(2001年)の主人公、親指小僧のように、各チームはこれらの衣装の緻密(ちみつ)なミリメートル単位のデザインについて、いくつかのヒントを誇らしげに明かしている。
出演者ひとりひとりが自分用の衣装を着られるようにするため、総計3,000着のユニークなシルエットが、20人ほどのコスチュームデザイナーと帽子職人によって作られている。また、フランス国内外の若手デザイナー12人が選ばれた。「フランスのファッションがいかに活気にあふれ、豊かであるかを示したかったので、有名な何人かを招待しました」と式典の芸術監督を務めるThomas Jolly(トマ・ジョリー)は説明する。
彼は、「何か良いもの、何か美しいもの」を提案し、オリンピック選手村の多文化的な性質を強調して、スポーツウェアの世界、フランスの歴史、ラグジュアリーにおけるフランスのノウハウの結集を人々に提供するような式典にしたいと熱望していた。
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華やかなセレモニー
私たちが取材した6月の時点で、すでに衣装の85%が出来上がっており、その10日後に予定されていたリハーサルに向けて、デザイナーたちは最後の仕上げに余念なく取り組んでいた。
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「私たちは本当に秘密裏に動いています」とDaphné Burki(ダフネ・ビュルキ)は言う。『Culturebox l’émission』の司会者であり、『Drag Race France』の審査員でもある彼女がトマ・ジョリーに選ばれた理由は、ディオールでのプロとしての経験と、フランスの若手デザイナーに対する「鋭い目」だった。
カバーで覆われた衣装の横で、衣装デザイナーの一人であるCorinne Paget(コリンヌ・パジェ)が話してくれた。「トマからモックアップ(実物大の模型)をもらって、そこから衣装を作ります。各アーティストに余白を残しておき、彼らが試着に来たとき、それに応じて調整するんです」。チームは、多様性に満ちた華やかなセレモニーを目指すと同時に、「衣装が第二の人生を与える循環型」を目指している。