どの業界にも存在する「広報」部署。一昔前のパチンコ業界の広報といえば、機械が掲載された見開きのカタログを持ちながら口頭でアピールをするというシンプルな形だった。
その後、販促DVD、豪華なゲストを招いた機種発表会、テレビCMを経て、現在はネット広告やSNS戦略など、プロモーションの手法は多岐に渡る。
実際現場で働く業界人は、日々の業務や今後の業界について、どのように思っているのだろうか? 某パチンコメーカーで女性広報として働いているAさんに話を聞いてみた。
◆パチンコほぼ未経験で広報担当に
——まず初めに、パチンコ業界の広報になろうと思ったきっかけを教えてください。
Aさん:事務希望で面接を受けたのですが、最終的に配属された部署が販促物制作の部署だったんです。多忙な部署で戸惑いましたし、パチンコの知識もその時ゼロだったので苦労しましたね。しかし無知な状態だったからこそ、どの業務も新鮮に感じて、徐々にやりがいが生まれました。今ではパチンコをガンガン打ってます!
——ちなみに今はどのくらいの頻度でパチンコを打たれるんでしょうか?
Aさん:土日中心に週1~2ですかね。先日は某スマパチで一撃約4万発出しちゃいました! とはいえ、そんな出来事は少なく、限られた時間で勝敗は気にせず打ち切ることが多いです。仕事の一環として調査をしに行くわけではなく、ただ遊びに打ちに行く感じです。我ながらホールのいいお客さんですよ(笑)。
◆販売実績に応じたインセンティブはある?
——広報の部署でもさまざまなポジションがあると思いますが、今まではどのようなポジションを経験してらっしゃるのでしょうか?
Aさん:主に販促、プロモーション業務ですね。ひとくちに広報といってもプレスリリースやSNS管理、マーケティングやイベントの精査など業務は多岐にわたります。
——では、この仕事をしていて楽しいところなどありましたら教えてください。
Aさん:この仕事の楽しいところとしましては、メーカーごとに違いはあるでしょうが、派手好きな業界なのでPVやCGを惜しみなく使ったりリッチなものが作れることもあり、お金持ちになった気分になれるところですかね(笑)。逆に苦労する点としては、世間的なイメージがまだまだ良くないので、表現に関しては不自由が多いところでしょうか。
——発表する機械も売れ行きや稼働はそれぞれだと思いますが、機械の結果が給与に反映されることはありますか?
Aさん:業績が良いと特別手当が出ることがありました。部署ごとに実績が評価されるかは、本当に会社次第です。営業はインセンティブがあったり開発はヒット機種を出せば個人が評価されるなど、今も結構聞きますけどね。PRは華やかに見えて縁の下の力持ち的な存在なので、個別で評価されることはあまりないんじゃないかなと思います。
——そういった他社の情報などは、ライバルとも言える他のメーカーさんの広報から聞くのでしょうか?
Aさん:メーカーの組合があるのですが、そこでは他社の会社の垣根を越えて話すことがあります。開けっぴろげに開発中の商品についてを語ることは少ないですが、良い方向への規則改正など、ポジティブな情報交換はしますよ。あとはまだまだ女性が少ない業界なので、女性同士は仲良くなりやすいかな。
◆メーカー広報が語る「今後のパチンコ業界」
——では最後に、広報から見た“パチンコ業界の今後”をお聞かせください。
Aさん:斜陽産業と言われる業界ですが、私個人はそこまでネガティブな気持ちで働いていません。パチンコ・パチスロは日本で生まれた独自の娯楽ということもあり、外資系の参入は今後もないと思いますし、店舗数が減ったとしても気軽にどこでも遊べるという環境は変わらないと思います。
我々メーカーの人間としては、まだまだ「ギャンブル」として見られてしまっている世間のイメージを少しでも「身近な娯楽」に変化させることに注力していきたいと思います。少し前に、全メーカー合同でパチンコに関係のないイベントに試打ブースを出展したり、最近はパチンコ・パチスロ好きの学生さんの連盟ができたりもしました。地道にコツコツとですが、これからも「娯楽」としての面白さを発信していきたいですね。
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特殊な規則や機械の発売タイミング等に右往左往しながらも、パチンコ・パチスロへの愛でプロモーション作業を日々こなすキャリアウーマンの姿がそこにあった。パチンコ業界の印象を良くしたいと奮闘する彼女の背中を今後も追っていきたい。
取材・文/バリンコン
【バリンコン】
パチンコ攻略誌の編集を9年間務めた後フリーの編集者へ転身。多数のメディアやメーカー等業界内に広い人脈を持つ。日々取材をこなしながら業界内の情報を収集中