ラーメン店「過去最多の廃業」の中、大阪発“異端”ラーメンチェーンが逆境下でもファンに支持されるワケ

 日本人の食生活に欠かせない国民食であり、多くの人に愛されるラーメン店だが、個人店を中心に経営は厳しい。ラーメン店は独立志向の高い人や趣味と実益を生かして一国一城の主になりたい定年退職者の受け皿にもなっている。

 一見、簡単に開業できそうなラーメン店だが、事業を継続させるのは難しい。開業から1年以内に閉店するラーメン店は実に4割、開業から3年以内にはさらに3割近くが閉店に追い込まれているのが実情だ。あらゆるコストが値上がりする中、ラーメン店は「1000円の壁」と煽られ、値上げを躊躇し、その結果の経営難が、倒産件数に表れている。そんななかでもファンに大阪発の“異端”ラーメンチェーンを分析したい。

◆小規模ラーメン店の廃業が増加

 ラーメン店は全国に1万8000店舗あり、その約半数の約9000店が個人店で、市場は6000億円市場と推計される(経済産業省の経済センサス活動調査)。需要も相当あるが倒産も多く、理由の1位は「競争が激しい」だ。

 他業態に比べて初期投資額が低く参入しやすい半面、商圏内での同業店舗の乱立で同業者競争が激しい。限られたパイの奪い合いでレッドオーシャン化が進みやすい。そのため、味で差別化を図ろうと店は努力するが、お客さんに差別的優位性を認めてもらうのはなかなか困難だ。

 結果として価格を安くしたり、各種クーポン券を配布して集客せざるを得ず、結果的に価格競争に埋没する消耗戦を強いられている。

◆外国人旅行者にも人気のラーメン

 加えて、今はあらゆるコストが値上がりし、赤字店が多い。最近も豚肉が輸入・国産ともに高騰し、個人店では太刀打ちできないのが実情だ。水道光熱費の上昇、円安影響も含めた原材料高、人手不足や人件費の高騰は、経営体力のない個人店を廃業に追い込んでいるようだ。

 せっかくコロナが収束し、人流が復活し、インバウンド効果で外国人旅行者も増えてきている。日本のラーメンは外国人旅行者にも人気で、需要は伸びているのに、供給側に原因があり、需給バランスが乱れている。

 訪日外国人消費動向調査(2023年7~9月期)によれば、「1番満足した飲食」は「肉料理(焼肉・すき焼きなど)」が首位で、2位は「ラーメン」とのことで訪日客にとってもラーメンは絶対的存在だけに効果的な打開策を講じなければならない。

◆それでも後を絶たない脱サラ開業者

 筆者の近くでラーメン店を開業する準備をしていたご夫婦と話す機会があった。ご主人が退職金を元手に居抜き店舗を賃借し、ラーメン店を開業するとのことだった。ずっと会社勤めをしていて飲食店の経営経験がなく修行することもなく、自らが食べ歩きで蓄積した人気店の味を模倣しながら、独自のラーメンを開発したそうだ。

 この大胆な行動に驚き、個人店の廃業が多く逆風が吹くラーメン業界の中、この挑戦は無謀すぎないかとお話ししたが、頑張ると意気込みを見せられたのでそれ以上は助言しなかった。しばらくして、食べログを見ると高評価の店になっていたので再度驚いたものだった。最近はYouTubeで調理技術を学び、飲食店を始める人もおられ、時代の変化を感じる。

 ラーメン店は比較的簡単に開業できると思う人が多いし、素人でも趣味の延長で経営が可能と思いがちなので開業したいと考える人が増えている。定年して会社人生を終えたサラリーマンが人生100年時代までたっぷりある時間をどう有意義に過ごすかを考えた時、ラーメン屋でもやるかと単純に考えたのだろう。

 しかし、実際にやってみたらそんなに簡単ではなかったと後悔すると思う。業態の陳腐化サイクルが短い外食業態の中で、ラーメンは特にトレンドの変化が激しく、新たな味と共に次々にオープンする新規出店者と既存店の戦いの構図が鮮明となり、生き残り競争が激化しているのが実情だ。

◆勢力を拡大する大阪発祥のチェーン店

 コロナが収束し、人流が復活したのに、物価高・エネルギーコストなどあらゆるコストの上昇などで、ラーメン店の倒産が増えている。東京商工リサーチによると昨年(2023年)にはラーメン屋の倒産件数が過去最多となる45件を記録し、過去15年間での最高記録とのことだ。

 そういった厳しい経営環境の中で、いつも行列を生み出すラーメン店を運営する企業がある。人類みな麺類を中核ブランドとする「UNCHI株式会社」だ。2012年4月12日、大阪・西中島に1号店となる醤油らーめん専門店・人類みな麺類をオープンして以来、週末50人以上の行列を作り続けている。

 とろとろ極厚チャーシューと極太メンマ、全粒粉入りの極太自家製麺が有名で、見た目はガッツリしたG系ラーメンだが、アサリやハマグリの旨みを閉じ込めたスープはあっさりしている。並ばないと食べれないというのがネックだが、ラーメンマニアを含め皆さん我慢して並んでいるようだ。

◆行列ができると話題の「人類みな麺類」

 フランチャイズ契約資料によると、店の雰囲気も、女性にも支持される、こだわりの店舗デザインを目指しているという。集客力を強化するには、女性一人でも入りやすく居心地良く、男女問わず高い評価の内外装デザインが必要だ。女性は食事の様子を他人に見られなくないという人も多いため、それを考慮した店づくりになっている。

 UNCHI株式会社は関西No.1繁盛ラーメン店を標榜し、月商2400万円の人類みな麺類を中心に複数のヒットラーメン店を続々と生み出し、食べログ百名店6年連続、コンビニカップ麺が発売されるほどで、全国的な人気・知名度を有している。

 その成功の再現性をパッケージ化している。未経験の個人加盟店が儲けられるようなフランチャイズシステムを確立して、勢力拡大を図っているのだ。

 現在では「醤油・塩・味噌・豚骨」4業態をリリースし、物件ごとに地域市場に合致した最適な業態で出店している。人類みな麺類本店は、新大阪近くに立地し、 売上2400万円、営業利益600万円、営業利益率25%と驚異の収益力を誇っている。店は30坪、35席で、最大150mの大行列になることも多いそうだ。

 競合店の状況や客層、立地などの実態から「最も勝ちやすい」業態で出店し、競争優位を勝ち取るという。物件に合わせてあとから味を決められるので 物件が見つけやすいメリットもある。SNS/グルメサイト/口コミを中心に情報を拡散しやすくしており、集客力を強化している。

◆フランチャイズに加盟するのもテ

 今年6月にも大阪市内で「生わんたんらぁめん専門店 赤黄緑」を新ブランドとしてオープンして話題を集めている。人類みな麺類と高級生食パン専門店「乃が美」の創業者のノウハウを融合させたラーメンで、UNCHI株式会社の系列店だ。

 同社は、ほかにも「くそオヤジ最後のひとふり」「世界一暇なラーメン屋」「ラーメン大戦争」といった独自のネーミングで既成概念にとらわれないラーメン店を展開している。こうした新たな発想で話題性に富んだ姿勢が絶対的なファンに支持されているようだ。

 自己資本が十分でなく、借入金も活用しないと開業できない。しかし、ラーメン店をやりたい人は意外と多いのではないかと思う。そんななかで経営基盤が盤石なフランチャイズ本部に加盟するのは魅力的に映るに違いない。こうした需要を見事にキャッチしているUNCHI株式会社は、今後も勢力を拡大するのではないだろうか。

<TEXT/中村清志>

【中村清志】

飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan