勤務していた学童保育施設で複数の男子児童の体を触るなどして強制わいせつ等の罪に問われていた元社員・佐藤秀貴被告の裁判が30日、東京地方裁判所で行われ、鈴木悠裁判長が懲役2年の実刑を言い渡した。
“地位”を悪用して性加害
子どもに対する性犯罪の舞台となったのは、首都圏を中心に20校以上を運営している人気学童保育施設だった。
共働き世帯などの増加を受けて、高いニーズがある学童保育(放課後児童クラブ)。子ども家庭庁の昨年の調査によれば、利用登録をしている児童数は145万人を超え、過去最高値を更新している。
被告人は、そんな学童保育施設で社員(チューター)として働き、その地位を利用して犯行に及んでいた。
膝に座らせるなどして男子児童3人の下半身を触った強制わいせつの容疑で逮捕・起訴。後に加害の様子が映された防犯カメラ映像をスマートフォンに保存していたとして、児童ポルノ禁止法違反でも追起訴され、判決では強制わいせつ6件、児童ポルノ製造4件の事実が認定された。
児童2人への加害は認めるも…残る1人へは「正当業務行為」を主張
裁判の争点となったのは、児童3人のうち1人に対する加害行為だ。
被告人はほかの2人に対する罪を認めたものの、1人に対しての強制わいせつは否認していた。しかし、その行為も防犯カメラに記録され、被告人は映像所持していたという。
映像には、被告人が前についたてのあるソファに座り、膝の上に児童を座らせ、白い物体を持った手を児童のズボンの中に入れ股間付近で上下に動かす様子が映っていたという。
弁護側は白い物体について保冷剤だと説明した上で、体調不良を訴えた児童の体を冷やすため行為だったとして正当業務行為を主張。上司から体調不良の児童を隔離するよう指示を受けたとも主張し、ついたてのあるソファに誘導した行為の正当性を訴えていた。
しかし、裁判長は「解熱目的で保冷剤を使用したとして、性的部位に触れるのは避けるのが通常で、弁護側の主張は不自然だ」としてこれらを否定。
他の2件の行為を認めていることなどから、もう1件の行為についても「性的な意味合いを有していると推認できる」として判決では故意を認めた形となった。
「真摯な反省は認められない」
冒頭のように、被告人に言い渡されたのは懲役2年の実刑判決。裁判長は量刑の理由について以下のように述べ、控訴の説明を行って裁判を終わらせた。
「幼く性知識の乏しい児童を狙った卑劣な犯行だ。被害児童らの心身の成長に深刻な悪影響を及ぼす可能性があり、保護者らの処罰感情の大きさは当然といえる。また、医療機関で小児性愛の治療を続けるとしている一方で、一部の加害について仕事のストレス等で衝動的に行ってしまったことで、児童らを性的対象としては見ていなかったなどと述べるなど、真摯な反省は認められない。しかし母親が出廷し、更生に協力的であること等は酌むべき事情として考慮できる。これらを総合して主文の刑に処するのが相当と判断した」
猫背気味に証言台に座る被告人の表情は灰色のマスクに隠れていたが、判決が読み上げられる間、裁判官の方をまっすぐに見つめ、判決の内容を理解しようと集中しているように見えた。
報道によると、弁護側は無罪主張が認められなかったことなどを受けて30日付で控訴したという。