こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
今年も酷暑の予報に、靴なんか履いてられないという方も多いでしょう。私も仕事や遠出以外は、毎日サンダルを愛用しています。といっても、いい大人ですから、アスファルトやコンクリートにビーサンなど無粋なことはいたしません。
大人が履くべきサンダルは、まず革、レザー一択です。履き心地・歩き心地もスポーツサンダルと遜色はありません。
スポサンはデザインに進化がなく、アウトドアシーン以外ではどうしても子供っぽくなってしまうのが難点です。また、流行りのリカバリーサンダルも「疲労回復=歩きやすさ」ということではなく、意外と足元が不安定になるので、タウンユースで履くなら革サンダル一択といっていいでしょう。
◆大人が履くべきサンダルはレザー一択
本格レザーサンダルの一推しがメイド・イン・ハワイの「アイランドスリッパ」です。セレクトショップや、百貨店でも一部取り扱いがあります。タフで味があってド定番なので、本当におすすめ。
創業は1946年、ハワイへ移住した日本人が創業者です。公式価格では2万2000円。既製品ではありますが、ほぼフルハンドメイド。全工程をハワイの小さな工場で生産しています。もちろん雪駄がモチーフです。
なにせスエードの発色が本当に素晴らしい。世界的に革屋がどんどんつぶれていっているなか、肉厚でほどよいざらつき感があり、退色して経年変化しても味になるサンダルメーカーは唯一無二でしょう。
ハンドメイドならではの「手加減」で、鼻緒が痛くならないのもアイランドスリッパの特徴。自然体で、おしゃれを格上げしてくれます。
筆者が仕事で行っている「フィッティング会」(合わない靴をその場で合わせます)にはよくドクターがお越しになりますが、アイランドスリッパ率はことのほか高い。「鼻緒をつかんで歩く」ことは足の握力を自然に、かつ効率的に鍛えるので、手放せないのだと思います。ビルケンのように過剰なアーチがあるものより、自分でアーチを鍛えたほうが結果的に、健康にはよいということ実践されているのだと思います。
◆もっと予算のある方はユッタニューマン
日本では5万~7万円前後、現地でも200ドル近くしますが、比類なき無骨かつ洗練されたフォルムにはその価値がありますし、エンジニアブーツのようにタフで、もちろん経年変化が楽しめます。
スニーカー仕様のスポーツサンダルは、本格アウトドアショップのもの以外、意外に短命です。底もアッパーの合皮も加水分解を起こすので、安全に履けるのはせいぜい2シーズンほどでしょう。なによりへたったサンダルほど気分を下げるものはありません。
ちなみに筆者は自作したレザーサンダルを愛用しているのですが、元ネタはユッタニューマン。捨てる寸前の廃材を利用したもので、9年酷使してまったく壊れる気配はありません。
コロナ以降開催が見送られてきた「サンダルづくりのワークショップ」も今年あたりから再開され始めていますので、みつけたら申し込んでみましょう。自作サンダルはつくるのも簡単でフィットしますし、なにより愛着もわくので本当にお勧めです。
◆安価な合皮サンダル、ビルケンもどきはNG
無印良品やユニクロ、GUなどの一部例外を除き、5000円以下のレザーサンダルは、99%が合皮です。結論ですが、これはやめておきましょう。
サンダルに使われる合皮は、靴の中でも最下層のレベルで、「ビニール感」が満載です。あっというまに劣化して、ワンシーズンでひび割れを起こします。また合皮を素足で使うと、汗がたまり不潔になるので、どうせワンシーズンだから安いものを、といっても、手出しは厳禁です。
さらに言うと、「ビルケンもどき」の健康サンダルは危険です。フットベッドのコルクも粗悪で、手の力でストラップが抜けかねません。
原材料アップで、このあたりの価格帯のサンダルは年を追うごとにレベルが下がっているので、本当に気をつけてください。2年前の3000円サンダルと今年のものでは、同じショップで同じメーカーでも、断然、粗悪です。業界の裏事情を話せば、GUの本格サンダルが3000~4000円で爆売れした段階で、メーカーは完全に戦意を喪失して、よいモノづくりから撤退しています。これが今。
それでも毎年一定数売れるので、メーカーも生産してしまうのですが、モノが悪いと足をひきずる歩き方になり、健康を害します。3000円でワンシーズン、ツーシーズンで履き倒すくらいなら、はじめから少し高めの「天然革サンダル」を選んで5年以上履くほうがよほどコスパもいいし、健康的です。安物買いの銭失いはいい加減やめておきましょう。
◆サンダル履く際にもっとも重要なこと
こういっては元も子もありませんが、サンダルを履く際に一番重要なことは、「爪を切る」ということです。伸ばしっぱなしの爪は公害です。月に2回でいいので、爪を切ってください。親指は両端を切りすぎると巻き爪になるので、先端のみカット。ほかの指は手と同じ加減でOKです。私はサンダルの着用頻度が高いので、週1ペースで爪は切っています。
ついでに指毛も剃っておきましょう。人の目線はかならず体の「先端」にいくものなので、スネ毛はOKでも「指毛だけはNG」という方がとても多い。毎朝電気シェーバーでヒゲを剃るついでに、指毛も剃っています。
リラックスしたオフの日にサンダルで出かける方は、本当に見られてますよ、爪と指。ただでさえ暑くて不快なうえに、ふと視線の先に「汚い爪と毛」がげんなりしてしまいます。
【シューフィッターこまつ】
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」