社会保険と税制における扶養の違い


仲の良さそうな家族
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合わせてポイントとなるのが税金です。家族を扶養している場合、年齢や人数によって、所得税や住民税の計算上、一定の控除額があるため、その分税金の負担が軽減されるのです。これを「扶養控除」といいます。

<扶養控除>

6親等内の血族もしくは3親等内の姻族(配偶者は扶養親族には該当せず、別途「配偶者」として扱います)申告者と生計を同じにしている所得金額が38万円以下(収入が給与のみの場合は、給与の額面が103万円以下)の者

控除額

16歳未満

0円

16歳以上19歳未満

38万円

19歳以上23歳未満

63万円

23歳以上

38万円

※70歳以上のケースなど今回は割愛しています。

Tさんのお子さんは今後、長子が大学院に入学するということで、それぞれ年齢を1つ加えると、23歳・20歳・18歳となります。上の表にあてはめると38万+63万+38万=139万円の扶養控除(所得控除)を受けることができます。

この所得控除により、所得の金額を小さくすることができます。日本の所得税率は「超過累進税率」という制度で、所得が多くなればなるほど、超過した分に対して所得税率が5%~45%とどんどん上がっていく仕組みです。

「課税所得×税率」の制度では、所得は小さい方が税負担は軽減されます。仮に妻の所得税率が5%の場合、139万円×5%=6万9500円の税負担軽減効果が見込まれます。

一方、夫は自営業として収入が増えているということなので、仮に所得税率が10%に達していれば、139万円×10%=13万9000円の税負担軽減効果を得られそうです。

どちらが節税効果が高いかというと、所得が多く、かつ所得税率が高い方がお子さん3人を税務上の扶養にした方が良いです。

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医療保険(健康保険)と税金の扶養、別々にすることは可能?

ここまでの話でみると、健康保険では妻の扶養に、税金は夫の扶養にするのが良さそうです。このように社会保険と税金の扶養を別々にすることはできるのでしょうか?

自営業と会社員では利用する制度が違うため、扶養をそろえる必要はありません。お子さん3人が一方では妻の扶養に、他方では夫の扶養に入ることは可能です。

ただし、上記の場合、妻の会社では「健康保険では子供3人を扶養しているが、税制上の扶養ではない」という、ややいびつな格好となります。前述のように医療保険と税金は別の制度ではありますが、実務上は「健康保険の扶養判定をするうえで税務上の所得から判断する」というのが一般的です。

要するに、健康保険でも税務上の書類(年末調整など)を使うことで、「被扶養者」であることを確認するということです。

健康保険と税金が連動していない場合、通常の手続きとは異なる書類の提出を求められるなど、やや煩雑となることが想定されます。まずはTさんの会社に事前確認しておくことをおすすめします。