「スカートの下でフラッシュが…」元CAが機内で盗撮被害に。先輩に報告した結果…

 日系航空会社CAから六本木のクラブママを経て作家となった蒼井凜花が、実際に体験した、または見聞きしたエピソードをご紹介。今回は「盗撮の迷惑客」についてお届けする。

◆飛行機内で遭遇した「盗撮マニア」の迷惑客

 筆者が新人CAの頃、とあるフライトで高価な一眼レフカメラを持った20代後半くらいの男性が、着席時のCAと対面になる席、通称“お見合い席”に座った。通常、壊れ物などは上の棚に置けないため、カメラを手元に持っていること自体は違和感ないことなのだが、その男性の行動が何とも怪しいのだ。

 まずは筆者への視線である。舐めるようにじっと見つめられ、お客さまとはいえ、かなりの嫌悪感があった。それでも離着陸時にはCAも着席が義務付けられており、逃げることができない。

(この人……なんか気味が悪い)

 そう思いつつも、CAスマイルを保ち、キャビンに異常がないか「キャビンウォッチ」をしていた。

◆振り向くとシャッター音が…

「カシャッ」とシャッター音が響いたのは、筆者が後ろを振り返ってキャビンを見渡した時である。驚いて男性のほうを向き直ると、ニタニタと薄笑みを浮かべながら、カメラを掲げている。間違いなく撮られていると察した。

「あの……今、わたくしをお撮りになりました?」

 戸惑いつつも、そう尋ねると、「いや、撮ってません」と、男性は笑みを浮かべながら首を振る。

 何ともうすら寒い気持ちのままキャビンウォッチを続けると、後ろを振り向いた時、再度シャッター音が響いたのだ。「あの……お写真、お撮りになりましたよね?」と再度尋ねるも、男性はあくまでも「撮っていない」と主張する。

 その時、シートベルトのサインが消えたため、筆者は「失礼しました」と立ち上がり、ドリンクサービスの準備のため、ギャレーに向かった。

(あのお客様……絶対に盗撮しているわ。でもなぜ、顔を背けた時だけ撮るの?)

 そう思った私は、乗務する先輩CAたちに「カメラを持ったお客様の行動が明らかにおかしい」という情報共有をした。

 そしてドリンクサービスが終わり、着陸態勢に向け再び着席した際にその男性を見ると、カメラを手にしたまま眠っていた。あとは着陸してお見送りすれば、このお客さまともお別れだと安堵したのだが……。

◆深々と礼をした瞬間にスカートの中を…

 決定的なことが起こったのは、目的地に着陸し、筆者が通路を歩くお客様に向かって見送りの礼をしていた時のこと。お子様連れのお客様に向かって深々と礼をしたその時、制服のスカートの下あたりでフラッシュが光ったのだ。

(えっ……うそ。もしかして、スカートの中を撮られた?)との疑念をいだいたが、次々と出口に向かっていく他のお客様に対しての御礼をストップして、男性に「スカートの中を撮りましたよね?」と確認する勇気はない。

 当の男性は、満面の笑みでカメラを高々と掲げた。そして私に対して「最高のお土産をありがとう!」と言い残して、去っていったのだ。

◆先輩CAに被害を報告すると…

 あまりのショックに、お客様が降機後、先輩CAに事の顛末を報告した。

「先輩、完全に撮られました。スカートの下でフラッシュが光ったんです」

 半泣きになって訴えたが、「シャッター音が響いた」「フラッシュが光った」だけでは、どうすることもできないとのこと。それよりも、次のフライト時間が迫っているから早急に準備をしてほしいとの言葉が返されるのみだった。

 次便では、とあるプロ野球選手一同が乗り込んできて、キャビンは明るさと賑わいで一変したため、暗い気持ちがいくぶんか軽くなったのを覚えている。

 ただ、明らかに盗撮をされた悔しさと怒りは、今もふとした時に湧き上がってくる。迷惑客を通り越した「盗撮の犯罪者」といえる男性は、あの写真を一体どうするつもりだろう。考えただけで身の毛がよだつ。

 機内の迷惑行為はもちろん、盗撮の被害者が増えないことを祈るばかりだ。

文/蒼井凜花

【蒼井凜花】

元CAの作家。日系CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママを経て、2010年に作家デビュー。TVやラジオ、YouTubeでも活動中。