8月2日は「ハラスメントフリーの日」 あらためて企業の“パワハラ防止”に必要な基本の取り組みとは?

3月に斎藤元彦・兵庫県知事の「パワハラ疑惑」などを告発する文書を出した職員が7月7日に自死した事件を受け、地方自治体の内部で起こるハラスメントが注目されている。

7月29日には、埼玉県宮代町議会が行ったアンケートで、45%の町職員が「議員から職員へのハラスメントや議員間のハラスメントを見たことがある」と回答したことが明かされた。

8月2日は「ハラスメントフリーの日」。これは職場のハラスメント対策に関わる企業によって制定されたもの。企業や自治体から、ハラスメントが根絶される日は来るのだろうか。

職場の内や外で起こるハラスメント

「ハラスメントフリーの日」を制定したのは、株式会社クオレ・シー・キューブ(以下、クオレ社)。2014年に一般社団法人「日本記念日協会」により認定・登録された。

なお、日付は「ハ(8)ラスメント フ(2)リー」と読む語呂合わせに由来する。

「ハラスメントフリー」はクオレ社の登録商標でもある。同社のホームページによると、「ハラスメントから解放された自由な職場」や「働く人々が人権や人格を互いに尊重しあう職場」などの思いが込められているという。

近年では、職場内の同僚間や上司と部下の間で発生するものに限らず、職場の外の相手との間で発生するハラスメントも問題視されるようになっている。

5月には、東京都で全国初の「カスハラ防止条例」が制定された。

また、11月1日から施行が予定されている「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称「フリーランス新法」)では、フリーランス(受託事業者)に対するハラスメント行為について、適切に対応するために体制を整備することやその他の必要な措置を講じることが、業務委託事業者に義務付けられている。

ハラスメント対策のため企業が実践すべき取り組みは?

クオレ社はセクハラ対策やパワハラ対策など、さまざまハラスメント対策のコンサルティングサービスを提供している。

中小企業にはガバナンス体制が未整備であり、ハラスメントを防止するための措置が手付かずになっている会社も多い。そのような企業が実践すべき取り組みとは何か。

クオレ社の取締役であり、『パワーハラスメント』(日経文庫)などの著書もある稲尾和泉氏は、「まずは社長や取締役などの経営者が『ハラスメント防止宣言』をすることが大切です」と語る。

「人材不足が深刻になり、ハラスメント対策が不十分な企業には人材が定着しない時代になりました。『会社を挙げてハラスメント防止を継続的に実施しています』と宣言し、継続的に取り組む意思を社内外に発信することから開始することを推奨します」(稲尾氏)

具体的な対策としては、相談窓口の設置と運用、従業員の教育研修や啓発活動などを実施する必要がある。

また、社内でのハラスメントの実態調査を継続的に実施することには、ハラスメントを未然に防ぐのみならず、従業員に「この会社はハラスメント対策をずっと続けている」という安心感を育み、従業員間でお互いに相談し合うなどの健全な職場風土も醸成していく効果もあることが、これまでの調査研究により判明しているという。


稲尾和泉氏(本人提供)

「パワーハラスメント」は2001年に誕生

いまや世間に定着した「パワーハラスメント」だが、この単語は英語には存在しない。2001年に、クオレ社の代表取締役である岡田康子氏によって提唱された和製英語である。

岡田氏が生み出したこの単語は、徐々に日本社会に浸透していき、ハラスメント問題の認知度を高めていった。

その後、2020年に「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」が整備されるに至る(同年6月より大企業、2022年4月より中小企業対象に施行)。

稲尾氏も「以前に比べて、人権侵害や人格攻撃を伴うハラスメント問題の救済は進んでいるのではないでしょうか」と語る。

一方で、さまざまなハラスメントの問題は依然として深刻だ。新型コロナウイルス感染症が5類に移行してから一年経ち、会社での宴席などが増えたことから、最近ではセクシュアルハラスメントの相談が増えているという。

「これだけハラスメント問題の認知度が高まっているにもかかわらず、いまだにひどいハラスメント言動がなくなっていないという現実もあります。

ハラスメント防止の取り組みに、終わりはありません。

職場の一人ひとりが当事者であることを自覚し、たとえハラスメント問題が起きたとしても真摯に対応でき、誰もが働きやすい職場を自らつくるという意思を持ち続けられるよう、『ハラスメントフリー』の理念をお伝えできればと思っています。」(稲尾氏)