スタイリストの原由美子による初の暮らしエッセー集『スタイルを見つける』

スタイリストの草分け的存在である原由美子さんの初の暮らしエッセー集『スタイルを見つける』(大和書房刊)が発売された。時代の空気を読み取りつつ、シンプルで着る人の個性や魅力を引き出すスタイリングを長年行ってきた原さん自身の暮らしもまた、シンプルであり、独自のスタイルがある。

原さんは慶応大学文学部仏文科を卒業後、1970年に『アンアン』の創刊に参加。フランスの雑誌『ELLE』のページの翻訳スタッフを経て、1972年からスタイリストの仕事をスタート。『クロワッサン』や『エル・ジャポン』、『フィガロジャポン』など数多くの雑誌のファッションページを担当してきた。


©︎木寺紀雄

この本では、カーディガンやスニーカー、サングラスなど、自身の定番などの愛用品との出会いや付き合い方について書きつづっている。ものと真剣に向き合い、自分のものとし、でも定番に安住することなく、アップデートされている姿勢がよくわかる。


©︎木寺紀雄

原さんの自宅に何度もお邪魔したことがあるが、「これはどこで買ったのですか」と思わず尋ねたくなるようなものばかりだ。仕事部屋の本棚も、よく見ると、ファッションショーや展示会の招待状、スノードームなどが、さりげなく、しかもセンスよく並んでいたりする。

衣食住のすべてにおいて、自分らしさを大切にし、ファッションももちろんその延長線上にあるということが、原さんらしい文章から読み取れる。

あとがきには「ずっと考え続けている『着る』ということ。地球上で洋服を着て暮らしているのは人間だけ。新しいもの探しが必要な時もあるが、身についたお気に入りは長く大切に着たい。そうすることで自分らしさができあがり、自信もつく」と記している。


©︎木寺紀雄

自宅の部屋やお気に入りの服やアクセサリー、日用品など、フォトグラファーの木寺紀雄さんの切り取った写真も美しい。原さんのように暮らしてみたい、と思わせる一冊だ。

text: 宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)

・美しいパリへ誘う、ルイ・ヴィトンの大判「シティ・ブック」 は必読
・オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーから菜園の香りを閉じ込めた「植物図鑑」が発売