日本の都市部で、シェア型の電動マイクロモビリティの電動キックボードや電動アシスト自転車が急速に普及している。事故の多発が危惧されているが、普及が先行するアメリカでは2017年以降、事故が急増しているという。
◆負傷者・入院者ともに増加
電動自転車と電動キックボードの事故によって負傷・入院した人数が近年全米で急増していることが、23日に発表された最新の研究結果から明らかになった。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームが23日にアメリカ医師会(AMA)発行の医学誌「JAMAネットワークオープン」に発表した論文によると、電動自転車の負傷者数は2017年の751人から毎年倍増し、2022年には2万3493人に達した。入院者数は2017年の66人から3122人に増加した。電動キックボードの負傷者数も同期間に8566人から5万6847人に増加。入院者数は791人から6317人に増加した。
一方、従来の自転車の負傷者数は2017年以降40万人台と一定の水準を維持。入院者数も4~5万人で推移。従来のキックボードの負傷者数は2017年の4万8598人から2022年の6万7497人に、入院者数は2017年の1677人から2022年の5310人に増加した。
電動マイクロモビリティの負傷・入院者数の増加の背景として、自動車の利用を減らして大気汚染を改善する取り組みが広がるなかで、こうした電動マイクロモビリティの販売が急拡大していることが関連している。
過去10年間で電動マイクロモビリティやライドシェア・プラットフォームの導入が進む同国の密集地では、50倍も普及したとされる。
電動自転車の販売台数だけでも2019年から22年で3倍以上に増え、2023年末時点で市場規模は約26億ドル(約4000億円)相当と推定されている(フォーブス誌、7/23)。
◆内臓損傷の確率高い
研究では、アメリカ消費者製品安全委員会(CPSC)の全米電子傷害監視システム(NEISS)の2017年から2022年のデータをもとに、負傷者の年齢、負傷の種類、ヘルメット着用の有無、飲酒の有無などを調べた。
研究チームによると、電動キックボードの利用者は従来のキックボードの利用者と比べて、内臓に損傷を負う確率が高かった。一方、従来のキックボードでは腕、手首、手といった上肢のけがが多かった。
また、電動モビリティで負傷した人は、従来の自転車やキックボードでの負傷者より年齢が高い傾向にあった。さらに、飲酒運転やヘルメット未着用での乗車など危険な行動を取りがちだった。
論文の共同筆頭執筆者でUCSF泌尿器科のチーフレジデントのエイドリアン・フェルナンデス医学博士は、「超小型モビリティの利用は、健康と環境にとってまぎれもない利点があるが、安全な乗車を促進するためには早急の安全対策の導入など、構造的な改革が必要だ」と指摘する(UCSF、7/23)。
◆安全性を高めるには
電動マイクロモビリティも従来型の自転車やキックボードの場合も、事故が多発しているのは、圧倒的に都市部だ。事故件数の増加について、研究チームは「これらの乗り物に対する人気の高まりを反映している可能性が高い」と指摘。また、2017年から2022年の調査期間に全米でシェアサービスやモビリティプラットフォームが急増したことから、都市部で電動モビリティがより手軽に利用しやすくなったことも背景にあるとしている。
しかし、路上に放置された電動自転車や電動キックボードに悩まされている都市は多く、また時に従来の自転車や電動自転車の利用者との間でトラブルが起きるなど問題も多い。規制面でも対応が遅れている。(フォーブス誌)
研究チームは、電動マイクロモビリティの利用者がより安全に乗車できるようにするためには、法律、政策、教育、インフラなどさまざまな改革を行う必要があると指摘した。