男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:デート4回目で、初めて彼の家を訪れた33歳女。しかし、水だけ飲んで急に帰ったワケ
どうしてだろう。何かがおかしい…。
西麻布で開催された、外資系コンサル勤めの男子たちとの食事会。私たちはタクシー代さえもらえなかったので、六本木駅を目指しながらとぼとぼ歩いている。
唯一報われるのは、一緒に参加した、友達の真衣がひたすら謝ってくれていることくらいだ。
「彩、ごめんね。今日の食事会ハズレだったね」
真衣のせいでないことはわかっている。それに、こういう食事会を開いてくれることに感謝しかない。
「ううん、楽しかったよ。ありがとう」
でも私も真衣も、以前だったら男性が乗るタクシーに便乗するか、タクシー代をもらって帰っていた。
自分でもわかっている。最近、出会いの質も下がっているうえに、たとえ良い出会いがあったとしても、恋愛に発展する確率が下がっていることに…。
Q1:男から翌日ではなく、5日後に連絡が来た。その意味は?
学生時代ミスコンに出場経験がある私は、昔からよくモテた。蝶よ花よともてはやされ、食事会へ行けば、翌日には、ほぼ全員から個別にデートの誘いの連絡が来た。
でも最近、打率が落ちた。
焦る気持ちを抱えながら参戦したのが、今回彩から誘われた食事会だった。
男性側の幹事は、外資系コンサル会社に勤める、私たちと同じ33歳だと聞いている。
― 連れてきてくれる友人たちも同レベルなはず…。
必然的に心が躍り、家で念入りに肌などを整えてから、『マーサーブランチ 六本木』へと向かう。
「初めまして、彩です」
得意の柔らかな笑顔を向けると、幹事の拓也と、彼が連れてきてくれた先輩の寛人の顔が、一斉にほころんだのがわかった。
「二人とも、同じ会社なんですか?」
「寛人先輩は以前同じ会社で。今は別なんですけど」
「そうなんですね。拓也さんの会社って、どの辺りにあるんですか?」
一言で“外資系コンサル”と言っても、千差万別だ。
なんとなく会社の場所を探ることで、会社名が脳内検索でヒットできるくらいの場数は踏んできている。
「会社は日本橋にあります」
― ナルホド、あの会社ですね。
人によってかなり変わってくるけれど、大体年収は2,000万弱くらいだろうか。
「すごいですね!」
「いやいや、そんなすごくないですよ。彩さんなんて、僕たちよりすごい人たちにいっぱい出会ってきてるでしょ」
「そんなことないですよ〜。食事会なんて、滅多に参加しないので出会いもほとんどないですし」
「そうなんですか?意外ですね」
20代の頃は、見た目も少し派手だったと思う。でも最近少し路線をシフトして、ふんわり柔らかな清楚系に変えた。
髪の色もだいぶ黒くなり、ネイルも超シンプルだ。
服装も、男性が好きそうなゆるふわ系のシフォントップスにデニム…と、カジュアルな中に男ウケも忘れない。
「もっぱらインドア派なんです。料理したり、のんびりドラマを観たりするのが好きで」
ガンガン外で飲んでいる…なんてブランディングは絶対にしない。あくまでも家庭的な、清楚系で売るのが正解だ。
ソファ席で向かい合いながら、私は拓也の次の出方を待つ。
「彩さんは、何系のお仕事なんですか?」
「私は知り合いの会社で経理をしています」
「経理?それも意外ですね」
「意外に地味なんですよ」
経理といっても、知人の会社なので週に2、3回くらいしか出勤しなくても良い。かなり楽な仕事ではある。
「それ以外には、少しだけ美容のPRしたり…」
「美容のPR?だからそんなに綺麗なんだ!どういうことをするの?」
「SNSに投稿したり?」
拓也はそれからも、私に積極的に話しかけてきてくれた。
「彩さん、絶対にモテますよね?本当に美人だし」
「いえいえ」
今日は久しぶりに手応えがあると思った。しかし想像に反し、23時くらいになると、アッサリ解散となる。
「じゃあ、また」
「え…」
こうして、中途半端な状態で投げ出された私と真衣は、蒸し暑い六本木の交差点をVALENTINOのヒールで歩くことになった。
「なんで…」
そう思った。
しかし意外にも、5日後くらいに拓也から連絡がきて、私たちはデートをすることになる。
Q2:女がモテなくなった、本当の理由は?
結局、食事会から2週間後の金曜の夜。拓也が予約してくれた、神谷町にあるイタリアンで私たちは再会した。
「拓也さんから連絡がきて、嬉しいです♡」
「本当に?彩ちゃん忙しいかなと思ってたから、嬉しい」
翌日とかではなく、5日後の時差連絡というのが気になるけれど、“連絡が来た”という事実は変わらない。
それにデートにまで持ち込めば、男性はたいてい自分に食いついてくる。過去の男性陣も、みんなそうだった。
「彩ちゃん、今日はどこから来た?会社?都合の良いエリア、先に聞いておけば良かったね」
「今日は家から来ました」
「そうなんだ。リモートだったの?」
「いえ、今日は特に何も」
「経理のお仕事だっけ?」
「そうです。でも知り合いの会社なので、週に数回出勤すれば良くて」
「なにそれ、最高じゃん」
知り合いの会社なので、給料は相場より盛ってくれていると思う。なので月13万の家賃分と、最低限の生活費くらいは、そこの会社のお給料で賄える。他のお小遣いは美容系の仕事…という感じだ。
「彩ちゃんの家って、どこだっけ?」
「私は十番に住んでます」
「僕たち、もしかしたらご近所だったりする?」
拓也の家は東麻布にあり、お互いの家が近いことに驚く。良く行くお店などの話で盛り上がり、前回の食事会でのお互いの印象など話し合った。
「彩ちゃんが美人すぎて驚いた」
「本当に?そんなことないよ〜」
「いやいや、本当に。スタイルも良いしすごいよね」
「頑張ってますから♡」
この会話で、拓也に私は刺さっていたことを確認できた。
― 良かった。
今日は最初から拓也の距離は近いし、ここまでいけば順調…なはずだった。
ひとしきりデートも盛り上がり、スマホを見るとまだ22時だ。周りには素敵なバーも多いし、当然ながら、もう少し一緒にいて親睦を深めるもの…と思っていた。
しかし、今日もアッサリ解散となった。
「じゃあ、今日もありがとうね」
「え??」
お酒を飲まない人とか、明日の朝が早い…などだったらわかる。しかし拓也はお酒も飲むし、「明日の朝が早い」なんて会話にはまったく出てきていない。
「拓也くん、もう帰っちゃうの?」
「うん。今日はもう解散しようか」
「…わかった」
以前の私だったら、こんなことはあり得なかった。
それに今日のデートで、私が何か失敗したとは思えない。外見も肌も完璧なはずだし、ネイルも綺麗だ。
まつ毛だって、ちゃんと上を向いている。
でも今日もサクッと食事だけして解散となってしまった。
この後たまに「飲みに行こうよ」と連絡は来るものの、正式なデートには誘われていない。
そもそも、5日後の連絡の意味はなんだったのだろうか。
― ただの遊び目的ってこと?それにしては解散も早いし…。
以前は無敵だったはずの私。それなのに、どうして最近急に自分の市場価値が落ちてきてしまったのだろうか…。
▶前回:デート4回目で、初めて彼の家を訪れた33歳女。しかし、水だけ飲んで急に帰ったワケ
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▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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