やっと対面を果たしたグリルドサンドは……。

うれしい意味で、期待を裏切ってくれた。主な具材は、ほうれん草とギリシャのチーズ3種。スブラキサンドは、ギリシャから取り寄せているピタパンを使っているのに対し、こちらは、パン・オ・ルヴァンだ。ほうれん草入りのグリルドサンドはよく見かけるし、パンも、パン・オ・ルヴァンならば、もちろんおいしいだろうけれど、「こんなの初めて!」と感じる新たな味わいに出合うことはないと思っていた。ところが、スブラキサンド同様、こちらも硬派な色っぽさで登場した。

チーズはたっぷりなのに、ケッパーとオリーブの存在感なのだろうか、くどさがなく、キリッとしている。ほうれん草は、とても滑らかな口当たりで、でもクリームで繋いだ感じではなかった。聞けば、アナリというキプロスで作られる山羊乳のチーズと、フェタチーズを加え、少量のオリーヴオイルと一緒に混ぜ合わせているそうだ。それがたっぷりと挟まれていて、これだけでもグリーンサンドと呼びたくなる様相だが、さらには、表面からは見えないけれど、上側のパンの裏にピーマンがベースのペーストが塗られている。こちらは、ピーマンにパセリ、コリアンダー、ディルなどのハーブ、オリーブオイルとクミンを加えて混ぜ合わせたもので、半分は微塵切り、半分はミキサーで攪拌し、それを最後に合わせているらしい。グリーンソースとして、肉や魚に添えてもおいしそう。


茹でたほうれん草にチーズとオリーヴオイルを加えたものをまずパンに広げ、ケッパーと松の実を散らす。


上からグラヴィエラというクレタ島のチーズをおろしながらたっぷりかける。


どちらもドライのフェンネル。ただ、手前は野生。香りが全然違う。2つともサンドイッチに散らす。

とろんとした舌触りのほうれん草が主役の具も、みずみずしさを備えたピーマンとハーブのグリーンソースも、作りたいおいしさの芯が通っている、って感じがした。ランチだったし飲み物は炭酸水にしたけれど、このグリルドサンドはキリッとよく冷えた白ワインとつまむのもいいよなぁ。ちなみに、コットンですぐに洗えるキャップはすっかりジョギングの相棒になって、小雨の日の傘代わりとしても活躍して、いまは4色持っている。

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『Taverna』


56 rue Amelot 75011 06-34-40-09-58 12:00〜14:00 19:00〜23:30(火水 〜23:00)土昼、日休 サンドイッチはお昼のみ、夜はメッゼになる。

文筆家 川村 明子

パリ在住。本誌にて「パリのサンドイッチ調査隊」連載中。サンドイッチ探求はもはやライフワーク。著書に『パリのパン屋さん』(新潮社)、『日曜日は、プーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)などがある。Instagramは@mlleakiko。Podcast「今日のおいしい」も随時更新。朝ごはんブログ再開しました。

&Premium No. 129 Inspiring Words / 明日を生きるための言葉。

SNSをはじめ、私たちを取り巻く社会は、膨大な「言葉」で溢れ返っています。でもその多くは、効率の良さや即時性を優先し、形骸化した「痩せた言葉」のように感じられ、疲れてしまうことも少なくありません。そんなとき、自分を前向きに奮い立たせてくれるような言葉を、ひとつふたつ胸に抱いていられたら、と思いませんか。今号では、エッセイや日記、詩や短歌の言葉などから、思索に満ちた「豊かな言葉」を紹介します。人の心に響く美しい仕事を遺した作家やエッセイスト、詩人、歌人、芸術家、学者、デザイナー、建築家や料理家たち。心をふるわす言葉に触れることで 、明日に向かって進んでいくヒントを見つけてもらえたらと思います。

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