真夏の熱気を和らげる、 パワーのある花で暑気払い。

海水浴や夏祭り、花火大会といった楽しい行事が盛りだくさんの真夏は、暑さがピークを迎えて市場に並ぶ種類が少なくなってくる。それでも、季節を象徴する思い出に残る花も存在するので、暑さを払うものとして手土産に。お盆を過ぎた後半になると、ほんのりと秋の気配も感じられてくる。


ヒマワリ
Helianthus annuus

夏の象徴ともいえる、太陽のような大輪。
科名/キク 原産地/北アメリカ。夏の花の筆頭にあげられるのがこちら。紀元前にはすでにネイティブアメリカンが食用として栽培していたといわれる。コロンブスがヨーロッパに持ち帰り、17世紀になって中国を経由して日本にも伝わった。「ギラギラした太陽を連想するほど、この季節ならではのもの。旬の植物と人間の体はリンクしているので、そばにあると気持ちも整います。人を感動させる花ってどういうものだろうと考えると、最終的には自然につながっていく。だからこそ、真夏限定で贈りたい」


クルクマ
Curcuma

一服の清涼剤のような穏やかで趣ある風情。
科名/ショウガ 原産地/熱帯アジア。タイで多く栽培され、新たな品種も生み出されているトロピカルな植物。花に見える部分は、正式には芽や蕾を包む特殊な形の葉っぱである苞葉で、その間に隠れるように小さな花が咲いている。ピンク系のほか緑色や白色も。「花が少なくなってしまう時季に嬉しい存在です。実は昨年、誕生日にクルクマをいただいたんです。こんなに優しい風情の花があったのだと感激しました。球根なので水を吸い上げる力が強くて扱いやすいし、花持ちにも優れていると思います」


バンクシア
Banksia

ユニークな造形で、ドライとしても楽しめる。
科名/ヤマモガシ 原産地/オーストラリア。オーストラリア固有の種で、18世紀に採集したイギリスの植物学者ジョゼフ・バンクス卿にちなんで、この名前に。花屋に並んでいるときから水分の少ない花材なので、生けたあとはドライにもできる。「ネイティブフラワーと呼ばれているもの。夏は花を贈っても水の管理などが難しかったりするので、扱いやすさもポイントのひとつ。こういう強い種類なら、それほど花に慣れていない方も嬉しいのでは。水は先端がちょこっと浸っているくらいで大丈夫です」

平井かずみ Kazumi Hiraiフラワースタイリスト

草花が身近に感じられる、暮らしに根付いた日常花を提案。東京・恵比寿のアトリエ「皓SIROI」を拠点に、日本全国で花の教室をはじめとしたワークショップや展示を開催。著書に『あなたの暮らしに似合う花』『花のしつらい、暮らしの景色』(ともに扶桑社)など。

illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Wakako Miyake
参考文献:『花屋さんで人気の469種 決定版 花図鑑』(西東社)、『花の名前、品種、花色でみつける 切り花図鑑』(山と溪谷社)

&Premium No. 126 Life with Flowers & Greens / 窓辺に、花と緑を。

人はなぜ、こんなにも花や草木を愛するのでしょうか。植物と触れ合うことは、その美しさを愛でるということにとどまらない大きな喜びを、私たちに与えてくれます。植物とともにある生活は、毎日が発見の連続。 季節の移ろいに敏感になるだけでなく、住まいや暮らしそのものを、心地よく、健やかにしたいと願う気持ちまでもが、ふつふつと湧いてくるように思います。さらに、私たちの中に潜む原初的な感覚の扉をそっと開き、心にやすらぎをもたらしてくれるのです。今号は、花を飾ること、植物を育てることを楽しみながら、心地よく暮らす人たちを訪ねました。

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