介護離職しないために知っておきたい公的制度
今はまだ介護問題に直面していないという人も多いでしょう。ただし、私たちは一律に年齢を重ねていきます。親や身内の介護にいずれ向き合うことになるかもしれません。今は関係なくても、最低限公的な制度などを理解しておくことは大切です。
まずは公的介護保険に対する理解を深めてください。介護保険は40歳以上から被保険者となります。被保険者は1号と2号に分かれます。
ビジネスケアラーの多くは「第2号被保険者」である現役世代に該当します。第2号の場合、介護保険の給付を受けることができるのは「末期がんなど特定疾病によって要支援者・要介護者になった者」に限定されますが、65歳以上の「第1号被保険者」は介護になった理由は問われません。原則1割の費用負担で介護サービスを受けることができます。以下が居宅サービスの1カ月あたりの利用限度額となります。
<居宅サービスの1カ月あたりの利用限度額>
例えば「要介護1」で週数回のデイサービスなどを利用した場合、月額16万7650円までは原則1割負担で、その額を超えると全額自己負担となります。当然介護の度合いが重たいほど、利用限度額は大きくなります。
介護保険は市町村の役所・役場が窓口となります。介護と向き合う際はしっかり制度を理解しておくことが大切です。例えば「区分変更申請」です。要介護1と認定されていても身体の状況は日々変わっていきます。より状態が悪化した場合などは、いつでも区分変更の申請ができます。要支援・要介護認定は定期的な更新がありますが、状況が変われば更新を待つ必要はありません。等級が上がればより手厚い介護保険のサービスを受けることができます。
また介護する側、ビジネスケアラーが会社員の場合、雇用保険の「介護休業給付」の活用も検討してください。一定の条件を満たした家族を介護するために会社を休む場合、その間の賃金が全く支払われない時などに休業開始時賃金日額の67%が給付されます。
雇用保険は失業や育児休業の際に利用するものという印象を持っている人が多く、介護休業給付の存在自体を知らないという人も少なくありません。同じ人の介護に対して「最大93日まで3回を限度」に給付を受けることができます。例えば父の介護の後、今度は母の介護となった場合はさらに93日と別カウントとなります。
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介護休暇など会社の支援制度を事前に知っておく
笑顔で握手する女性
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厚生労働省は仕事と介護の両立に向けて「仕事と介護の両立支援ガイド」や「仕事と介護の両立支援実践マニュアル」などを作成し、企業に周知する活動を行っています。
どれだけ取り組んでいるかは企業次第ですが、ビジネスケアラーにとって今後、一段と働きやすく、介護をしやすい職場環境になっていくことが期待されています。在宅ワーク制度を積極的に取り入れる企業も増えており、ビジネスケアラーにとっては働きやすくなりそうです。
また、年次有給休暇の未消化分を一定日数まで介護休暇に積立できる制度を導入した企業もあります。社会保険労務士など専門家のアドバイスを踏まえ、就業規則の改訂も行ったようです。有給休暇を毎年すべて消化するのは難しいという人も多く、その未消化分は一定期間後、時効で消滅してしまいます。消滅する前に将来の介護に備え、「介護休暇」として積立ができるのは従業員にとって非常にありがたいですね。
今後、このような企業は増えていくと思います。就職や転職する際に確認する項目に入れておきましょう。