広い一戸建ての家に1人、あるいは2人で暮すお年寄り。一方、高い家賃に悩む若者。若者が独居老人の空き部屋に住めば、高齢者の孤立化を防げるし、住宅費軽減にもつながり、一石二鳥となる。
第一生命経済研究所の福澤涼子さんが、「異世代ホームシェア」という、世界に広がる血縁関係によらない世代間の支え合いを提言している。
いったい、どんな仕組みなのか。昭和によくあった「下宿」とどう違うのか。話を聞いた。
親に会わせる前に「彼氏の品定めをしてほしい」
<日本に復活した現代版下宿「異世代ホームシェア」 高齢者と若者が支え合い、双方がwin-winになる秘密は?(1)/第一生命経済研究所・福澤涼子さん>の続きです。
――ほかの家主さんはどうですか。
福澤涼子さん 埼玉県のBさん夫婦。Bさんが70歳を迎えた晩、入居者たちがサプライズで古希を祝ってくれたそうです。
Bさんは70歳の誕生日に何ごともなく寝ようとしたら、若者たちに別の場所に連れていかれました。そこに誕生日の飾り付けがしてあったそうです。
Bさんの家では住人たちとBさんで定期的に食事会をしています。そこでは若い人はいつもコンビニご飯ばかりで、野菜不足だからと、Bさんが野菜たっぷりの食事を作ってくれるお礼も兼ねたサプライズなのです。ちなみに下の写真は、Bさんが作っている野菜料理です。
Bさんが若者たちに作った野菜たっぷりの食事(福澤涼子さんより、Bさん提供)
――とても、いい話じゃないですか!
福澤涼子さん 神奈川県のCさん夫婦は、住人の若者たちからいろいろな相談を受けるそうです。「就職活動で内定を取ったけど、どこの会社に行けばいいだろうか」とか、「親に彼氏を紹介する前に、人物を見定めてほしい」と彼氏を連れて来るとか。
若者って、自分の親には素直に相談できない面があるじゃないですか。Cさんが親代わり、いえ人生の先輩としての相談者になっているのです。退居して結婚した人が、子どもを連れて再訪することもよくあるそうです。
Cさん自身も若者たちから、いろいろ教わっています。今の若者にとってステップアップのための転職や起業は当たり前の価値観になっています。そうした価値観に触れてCさん自身も次の目標ができたと話しています。
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「困った人」「変わった人」を入居させるリスクも
――いやあ、いい話ばかりじゃないですか!
しかし、若者とホームシェアをすることに問題点はないのでしょうか。
福澤涼子さん 一緒に住むうえで、人間的に、性格的に合わない人がいるものです。変わった人とか、妙に攻撃的になる人とか。そんな人が入居してきて、「ストレスで夜も眠れなかった」という人がいます。
空き室をすべて埋めて、少しでも利益をあげようとすると、そういう少し「う~ん」という意に沿わない人でも入居させてしまう場合があります。異世代ホームシェアでは儲けようと思わないことです。もともと、あまりお金を持っていない若者が対象なのですから。
――夫婦だってそうですが、人間って一緒に暮らしてみないとわからないものですよね。
福澤涼子さん そのとおりです。ある高齢者の方は自分が楽しみために始めたのに、「困った人」のために苦しむのは意味がない。入居者を選ぶようにしてから楽になったと言っていました。特に高齢者の方は自分の家ですので、合わないからと言って出ていくことができません。自分に合った入居者を選ぶということも大切なのかもしれませんね。
――ホームシェアをするうえで大事な注意点は何でしょうか。
福澤涼子さん 基本的なことですが、他人と暮らすわけですから、家の中にいるときはきちんとした身だしなみをすることがルール。また、若者同士の生活とは違って、夜遅くまで騒ぐというようなことはやめましょう。若者同士よりもそうした生活音には気を遣う部分が大きいかもしれませんね。
ただ、入居者同士の人間関係がうまくいっていると、生活音が気にならないという研究もあります。逆に、うまくいっていないと、ますます気になってストレスが高まります。やはり、人間関係を良くすることが一番大切ですね。