近年、『茶禅華』や『わさ』など洗練された中華が高い評価を得て、“ファインチャイニーズ”という地位を確立したが、転換期を迎えた東京の中華において、その存在はどう変わっていくのか?
昨年末、中国料理界のレジェンド・脇屋友詞シェフが料理人人生50年の節目を迎え、自らの集大成とも言える一軒を銀座にオープンした。
『Ginza 脇屋』で供される、胸が高鳴るような食体験とは?
巨匠の息遣いまで感じる近さ。エキサイティングな体験こそが美食の付加価値
それはカウンター8席と個室の小さな店。これまではオーナーシェフとして厨房全体を指揮してきた脇屋シェフも、この店ではゲストの目の前で自ら料理を披露する。
熟練の技と味を目の当たりにしながら、作りたての味を五感で楽しむ醍醐味は格別。ゲストの様子を見計らい、味付けや量をフレキシブルに変える柔軟なもてなしも。
銀座の新しきランドマークで大人たちは、最新の高級中華が何たるかを知るだろう。
緩やかなU字型のカウンターは8席。一段高く設えたおくどさんが印象的な店内は、中国料理店というよりも、さりげなく割烹の趣も漂う。
カウンターの奥も、曲線デザインで統一され、上質な空気を醸している。
特注の炉窯ひとつで無限に広がる中華の可能性
厨房には五徳や中華鍋は置かず、ピザ窯を思わせる炉窯を設置した。それは中華鍋を振ることで、客席に油が飛びちるのを懸念したがゆえ。
ガラスなどで客席との間に敷居を作りたくない、という脇屋シェフのこだわりにも繋がり、ぐっと近くなった厨房と客席の一体感は、ひとしおだ。
半世紀もの間ゆるがない“伝統と創作”という軸が、いまなお革新的な料理を生み出す
中華鍋を使わない中国料理。それこそ、今回この店で脇屋シェフが挑戦するテーマ。
本来の中華なら、清蒸魚(チンジョンユイ)や紅焼(ホンシャオ/醤油煮込み)に仕上げるキンキも、炉窯で数分間火入れされる。
これまでとは一風変わった仕上げながら、キンキの骨からとった出汁と干貝を合わせた旨み豊かなソースでグッと中華に寄せている。
調味料に頼ることなく、斬新な調理法で引き出された素材そのものの美味しさが生きる。時に洋皿で、時には作家ものの和食器で供せられるのも贅沢だ。
顔を見て言葉を交わす。SNS時代だからこそ、心遣いが伝わるもてなしに満たされる
カウンターで繰り広げられる贅沢なプレゼンテーションも語らずにはいられない。
脇屋シェフ自らがその日の食材を披露したかと思えばゲストと距離の近いカウンターで臨場感たっぷりに料理を仕上げる。
さらに、丁寧に解説したコースの最後には、手ずからこだわりの中国茶を一杯一杯淹れるという贅沢過ぎるもてなしが待っている。
巨匠の知見が凝縮した一級品の茶葉を服す
その一連の動き、目配り、言葉、すべてがエンターテインメントとなり、美味しさだけでない至福のひと時を約束するのだ。
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