日本の民間企業における防災投資は?
企業による防災対策としては、従業員や顧客の安全を確保する、帰宅困難者の発生を防ぐといった取り組みがあります。飲み物や食料品の備蓄、防災訓練、建物の耐震補強などがその一例です。
企業が防災対策に使うお金は消耗品費や福利厚生費として計上されるため、防災に対していくら投じているのかは明らかではありません。
参考までに、飲み物や食料品の備蓄にいくらかかるか試算してみましょう。首都直下地震帰宅困難者等対策協議会の「事業所における帰宅困難者対策ガイドライン」をもとに、1人あたりに必要な備蓄品・備蓄量をまとめたものが下表です。
図表:首都直下地震帰宅困難者等対策協議会における帰宅困難者対策ガイドラインを参照し筆者作成
上記一式の8人用商品がECサイトにて8万3000円程度で販売されているため、1人あたりだと1万375円です。もし従業員100人分を用意するなら約104万円が必要です。
このほか、ヘルメットや担架の準備、安否確認システムの導入、キャビネット類の転倒防止対策などにも費用がかかります。
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AIやドローン活用、世界で防災テック市場は48兆円にも
災害が増えるなか、防災をビジネスとする企業もあります。特に近年はAIやドローンを使って災害から身を守る「防災テック」が身近な存在となってきました。災害予測や、避難指示などの情報発信などにより、被害の回避・軽減を図ります。
米国の企業Pano AIは超高解像度カメラとAIを使った森林火災を早期に検知できるプラットフォームを開発しました。
日本でも愛知県豊川市が2018年に防災ドローンを導入し、災害時の被害状況をより的確に把握できる仕組みを構築しています。
パノラマデータインサイトによれば世界の災害対策システムの市場規模は2030年に2981億ドル(約48兆円)に達し、2020年のおよそ2倍になると予測されています。
日本では防災関係予算のうち防災・減災の調査研究が占める割合は2%にも満たない状況ですが、今後は防災テックの発達などにより調査研究分野への利用にも期待したいところです。