マクドナルド、パリ五輪「1208円バーガー」の味わいは?世界中から辛口な評価でも“五輪ムード”を現地ルポ

 街全体がオリンピック会場になるパリのオリンピックを住人目線で本音を交えて紹介します。オリンピックへの熱量は、最初のうちはそれほど関心度は高くなく、多くのパリ市民は実際に開催前にパリを脱出しバカンスを楽しんでいる方も多いです。

 筆者の職業はフォトグラファーということもありエッフェル塔界隈に住んでおり、住み慣れた街全体がオリンピックのムードになりました。やや冷めていた人々のオリンピック熱も、いざ聖火リレーが近所を通過するとなると手のひらを返したように、一目見ようと群集が道路の両脇にできました。

 実際のところ、特に開会式の反応も、大胆でオリジナリティある内容と聖火の美しさの様子に心を打たれたパリジャンも多いです。現在もチュイルリー公園に浮かぶ気球を写真に収めようと夜景撮影に行く地元民も。気球は昼には地上に降りていますが予約がいっぱいで近寄れません。

 愛国心がもともと強い国民性ですので、今回は様々な困難はあったけれどもとても好意的です。美しいものを素直に美しいと言えるパリジャンの表情も輝いて見えます。

◆パリのオリンピック開催中の物価

 物価は日本と比べて高い印象ですが公共交通機関の値上げも重なります。7月20日から9月8日のオリパラ開催前から終了までは、地下鉄の混雑を避けるために通常2ユーロ(320円)が倍の4ユーロ(640円)に、チケット10枚のカルネは17.35ユーロ(2777円)から32ユーロ(5122円)の値上げです。

 パリでは中心のみの地下鉄移動であれば切符1枚で乗り換え自由ですが、倍に跳ね上がったことは衝撃でした。

 大会は4万5000人のボランティアに支えられており交通費が倍になり問題になりましたが、ボランティアには専用の定期券が配られます。フランス国外からの方向けにはオリンピック期間中有効のパス・パリもあり、空港から市内への移動にもこの乗り放題パスは便利です。1日から14日間までそれぞれ料金が設定されています。

◆スリやひったくりは多いが

 パリの地下鉄といえば、スリ、ひったくりが多いことで有名です。地下鉄構内では日本語でも注意アナウンスが流れます。ペアで働くカップルを装ったスリに前後に挟まれてロックオンされないように車内ではドア前を避けて、中心に移動する必要があります。

 またジプシーと呼ばれる子供たちもプロの早技でお財布を功名な手口で奪います。彼らは地下鉄から降りるやいなや盗んだお財布を確認し、現金を抜き取りクレジットカードはそのままに、素晴らしいコントロールでお財布を投げ返してくれ、もはや匠の技と言っても過言ではありません。

 スリやひったくりには警戒が必要ですが、いつもよりも警察や兵士たちが街をパトロールしています。テロ対策もあり試合会場以外でも多く警備してくれております。大きな機関銃を持つ勇姿を見て初めのうちこそ戦場のようで怖いものでしたが、慣れると安心感があるものです。

◆マクドナルドもオリンピック仕様に

 レストランでも日本と比べますと物価の高さを痛感しますがマクドナルドを例にご紹介します。パリのマクドナルドでは、オリンピック参加の7カ国のご当地メニューが販売されています。ギリシャ、フィリピン、カナダ、インドネシア、イギリス、アメリカ、ニュージーランドでしか食べられないメニューが用意されています。

 オリンピックの入場行進の伝統を守り、まずはギリシャから。ピタパンに挟まれたケバブ・バーガーにサラダとトマト、そしてヨーグルトがベースのヘルシーで爽やかな味わいです。価格は5.7ユーロ(912円)セット9.15ユーロ(1465円)です。

 お次はカナダのメープルバーベキュー・クウォーター・パウンダー・バーガー。7.55ユーロ(1208円)セット9.15ユーロ(1463円)です。塩味とメープルシロップの甘さのハーモニーを奏でる一品。個人的には燻製の風味が甘さに勝っていましたが、まあまあ美味しかったので良しとします。

 インドネシアからは、マックフルーリー・ポップコーン・カラメル。斬新なビジュアルでドライなポップコーンとマックフルーリーのマリアージュ。4.55ユーロ(728円)

 ニュージーランドのフィレオフィッシュ・デラックス。フィレオフィッシュにチーズ、サラダ、トマトに特製ソースを添えて。5.75ユーロ(921円)セット8.30ユーロ(1330円)です。フィリピンからは、コカ・コーラ・マックフロート。キャッチフレーズは「フィリピン風に浮かぶ島」。バニラアイスが浮かぶコーラは3.60ユーロ(577円)。

◆チキンナゲットで幻のソースも

 残り2国はなんとチキンナゲット用ソースでの出場です。イギリスからはガーリック・ソース。パンチの効いた個性的な名脇役です。0.35ユーロ(56円)。最後はアメリカのシェシュアン・ソース。1998年のディズニーアニメ映画、「ムーラン」公開時にプロモーション用に作られた四川風チキンナゲットのソースでアメリカでは有名な幻のソースと言われているようです。0.35ユーロ(56円)。

 まだ始まったばかりで大反響とは言い難いですが、ギリシャのケバブ風ステーキ、シェシュアン・ソース、ガーリックソース、マックフルーリー・ポップコーン・カラメルが好評です。

 その他、マカロンで有名なラデュレでは、オリンピック記念の賞品を販売しています。マカロン28個入りは83ユーロ(1万3200円)。美しい箱にオリンピック公式マークがデザインされていることに価値がありそうです。可愛いマカロンで凱旋門やエッフェル塔を作りショーウィンドウを華やかに飾っています。

 番外編は、オリンピック開会式の裏方、ボランティアの食事です。ベジタリアン、通常のサンドイッチ、サラダなどと、チョコレートケーキ、焼き菓子をいただきました。見た目は質素でしたが1200人分の用意は滞りなく行われ、新鮮で美味しくいただきました。その後ずぶ濡れになりながらもセーヌ川で日本選手団の船に向かって元気に手を振る力を与えてくれました。

◆マスコット・フリージュが盛り上げる

 街のレストランやカフェ、お店まで、マスコットのフリージュがあちこちに飾られて愛嬌を振りまいています。最初は可愛いとは思わなかったのですが、日を追うごとに段々となんとも可愛らしく感じてくる魅力です。

 エッフェル塔がモデルかと思っていましたが、実はフリジア帽という先端が折れ曲がった赤い帽子です。革命、自由、愛国心のシンボルだそうで、18世紀の革命時に「自由の赤い帽子」として誕生しました。

 この愛らしいマスコットのグッズを身につけて歩く人々がとても素敵です。バッグに帽子にぬいぐるみ、そしてお菓子までもフリージュでいっぱいです。高級チョコレートのメゾンドゥショコラもフリージュ柄の板チョコを販売しており、お値段は22ユーロ(3520円)。

 またミニぬいぐるみをサッと迷わず買い物かごに入れた素敵なマダムを見かけました。在庫切れの前にネット購入をお勧めしますし、筆者も衝動買い、ではなく記念に購入しました。

◆エコ都市目指すパリと環境

 エコロジーを大切にするパリでのオリンピック期間は彩り豊かです。街の個性的なショーウィンドウはスポーツに関連付けられ、ワクワクします。また大型商業施設ボーグルネルショッピングセンターでは、アート、スポーツ、音楽からなるイベントが大会中に開催されています。

 紙製の巨大な凱旋門、コルドンブルー(伝統ある料理教育機関)が制作したエッフェル塔のケーキ、ギネス記録になったマッチで作った世界一高いエッフェル塔が展示されています。70万6900本のマッチで7.19メートルの高さ、75キロの重さの作品です。

 しかし、こういった街の中で輝いているのは、エコらしい緑色のユニフォームを着たボランティアの女性たちかもしれません。マクドナルドに、商業施設にスーパーに行けば必ず笑顔の彼女たちに会えます。

 そして世界中の選手達やチームの方々が緊張の中で束の間の休憩を美しいパリの街で、普通にコーヒーを飲んだり、散策したりお買い物を楽しんでいる姿はとてもリラックスして見え素敵です。

 もちろん、お顔に国旗をペイントした観客や子供たち、お年寄りまでお祭りを盛り上げています。様々なユニフォームを見てどこの国かを当ててみたりも楽しいですし、まるで選手村が街にできたかのようです。

◆スタバではオリジナルのエコバッグを販売

 パリの気温も日中は30度超えする日も増え、暑さ対策には、街中に給水所と顔にミストをかけられるスタンドも設置して誰でも無料で水分補給ができるようになりました。スタンドには「パリジャンになって、水道水を飲みましょう」と書かれています。

「ペットボトルを買うよりパリ人になりきって」と外国人にも呼びかけています。日本と比べてしまうと劣りますが、道は割と綺麗に清掃されています。スーパーやスターバックスなどの店舗では、オリンピックの思い出にと、オリジナルのエコバッグを売り出しています。

 田舎にバカンスに出かけた友人らから送られる素敵な自然の写真に十分対抗できるパリのカラフルな街に、彼らも良い反応が返ってきます。

◆世界中から色々な辛口の評価

 街の全体的な雰囲気としましては全体的に穏やかでありつつも、熱気に満ちておりますし、警備も徹底しています。オリンピックチケットを購入して観に行くもよし、観に行かずとも楽しんでいただける要素が満点です。

 世界中から色々な辛口の評価を受けていることも、分かっていますが、住人として本音を語りますとオリンピックが街にやってきた毎日はとても楽しいです。規制や交通麻痺などがあっても、それでも周りの人々の笑顔と誇り高い表情から大会に対しての前向きな様子を感じます。

 振り返れば2005年の7月、2012年のオリンピック開催をかけてフランスは激戦の末、4票差でロンドンに開催地をもって行かれた過去があります。誰もが美しい街、パリの勝利と予想していた中での喪失感は大きかったに違いありません。

 大胆でオリジナルなパリオリンピックは、現地では特別な大会で他と違う方法で過去の遺産に頼り過ぎた観光都市から変化への挑戦をしたと個人的に思います。

<TEXT/中山ミチル> 

【中山ミチル】

パリ在住フリーランスフォトグラファー。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。