一般財団法人・日本総合研究所は、2012年から2年ごとに「都道府県幸福度ランキング」を発表している。各種データをもとに、住みよい都道府県を可視化したものだ。最新の2022年版では、首都・東京をも上回る、北陸地方の充実した生活が明らかになった。また、中部地方や日本海側の幸福度も高い傾向にあるようだ。

◆北陸3県すべてがトップ4入り

 ランキングでは、北陸3県の強さが目立つ。1位は福井県だ。2012年には3位だったが、2014年に1位となって以来、5回連続で首位をキープしている。2位は石川県。2012年に9位だったが、2014年には6位に上昇。以降、5位、4位、4位、2位と、着実に順位を上げている。

 3位は北陸地方を離れ、東京都が食い込んだ。2012年から2018年まで4回連続で2位をキープしていたが、2020年から順位を1つ落としている。4位は再び北陸勢の富山県。2012年に4位に入ったのを皮切りに、一貫して5位以内を保っている。

 調査は、5つの基本指標と50の指標、そして2014年以降ではさらに25の追加指標を設け、合計80の指標の合計値によって評価している。基本指標は生活・社会基盤全体に影響を与える指標と位置づけ、人口増加率、一人あたり県民所得、選挙投票率、食料自給率、財政健全度から構成される。個別の指標は、健康、文化、仕事、生活、教育の5つの分野から、各10項目が用いられた。

 追加指標5点は、調査年ごとに時事の話題が採用されている。2022年版では、コロナ患者受入病床数、救急搬送困難時案件数、燃料供給に関する協定締結率、遠隔教育実施率、家事の男女負担割合、の5点に更新された。

 指標ごとのデータを加算するにあたり、平均からどれだけ離れているかを示す標準化変量を採用した。好ましい事象が加点方向となるよう、プラス・マイナスの方向を調整している。80の指標は重みづけせず、単純に加算された。

◆仕事・教育の充実が強み

 福井県の一貫した強みは、仕事と教育の充実だ。指標を構成する5つの分野のうち、これら2分野で突出している。

 福井県は仕事分野で総合1位となっており、分野を構成する「雇用」「企業」領域のうち、雇用領域でも全国1位の強さを誇る。領域を構成する個別の指標では、若者完全失業率(少ない方が高得点)(2位)、正規雇用者比率(5位)、高齢者有業率(4位)、インターンシップ実施率(1位)、大卒者進路未定者率(少ない方が高得点)2位と、全指標にわたり全国トップ5位内に位置する。

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 一方、同じ仕事分野でも、もう一方の企業領域は、全国25位とやや弱い。障碍者雇用率(11位)、製造業労働生産性(30位)、事業所新設率(36位)、特許等出願件数(9位)、本社機能流出・流入数(40位)となっており、立地企業の現状としては全国下位圏となった指標も目立つ。

◆バランスの良い教育分野

 一方、教育分野は全般に秀でる。1位となった学校領域では、学力(2位)、不登校児童生徒率(少ない方が高得点)(1位)、司書教諭発令率(14位)、大学進学率(10位)、教員一人あたり児童生徒数(19位)と、全国上位の指標が多い。

 教育分野のうち社会領域でも、全国1位となった。構成する個別の指標は、社会教育費(3位)、社会教育学級・講座数(4位)、学童保育設置率(27位)、余裕教室活用率(1位)、悩みやストレスのある者の率(少ない方が高得点)(3位)となっている。学童保育設置率を除きいずれも4位以内となっており、社会教育システム全般において充実した環境が整備されている様子が示されている。

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 なお、2022年版で設けられた追加指標でも、福井県は「遠隔教育実施率」で1位となった。

 弱みとしては、文化・運動面に課題があるようだ。文化活動等NPO認証数は全国45位、エネルギー消費量も同じく45位となった。

◆人口・所得では東京が強い

 北陸地方の高い幸福度が明らかになる一方、人口と所得の面では東京など関東圏、およびその他大都市の強さも見られる。

 基本指標のうち「人口増加率」では、東京が断トツの1位となった。人口が減少している折、プラスとなったのは全国でも7都県にとどまる。1位・東京都(3.9%)と2位・沖縄県(2.4%)は顕著な伸び率を確保した。以下、3位から順に、神奈川県(1.2%)、埼玉県(1.1%)、千葉県(1.0%)、愛知県(0.8%)、福岡県(0.7%)となっている。滋賀県と大阪府はともに0.0%で、10位・京都府(-1.2%)以下はすべて人口減となった。

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 基本指標のうち「一人あたり県民所得」では、1位・東京都(541万5000円)が突出して多かった。2位以下は都市部と地方が入り乱れており、愛知県(372万8000円)、栃木県(347万9000円)、静岡県(343万2000円)、富山県(339万8000円)の順に続く。

◆東北の暮らしの良さも

 東北地方の良さが際立つ基本指標もある。「選挙投票率(国政選挙)」では、1位から順に、山形県、新潟県、島根県、岩手県、秋田県となった。山形・岩手・秋田が東北勢で、新潟も東北地方に隣接している。

 「食糧自給率(カロリーベース)」では、北海道、秋田県、山形県、青森県、新潟県、岩手県、福島県の順となり、北海道・東北を中心とした顔ぶれとなっている。北海道(216%)と秋田(205%)は、どちらも200%を超える自給率を誇る。自給率が100%を超えるのは6位・岩手県(107%)までで、その他41都府県は100%を割り込む。

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 このように都道府県幸福度ランキングは、都道府県別の興味深い実態を映し出している。各項目は重みづけせずに加算されているため、集計方法によってはまた違った順位となる可能性もあるだろう。とはいえ、通常意識しない地域ごとの強み・弱みを可視化する試みとして注目に値するランキングだ。

◆47都道府県 ランキング結果(2022年版)

1位
福井
25位
静岡

2位
石川
26位
香川

3位
東京
27位
熊本

4位
富山
28位
群馬

5位
長野
29位
千葉

6位
滋賀
30位
鹿児島

7位
山形
31位
広島

8位
岐阜
32位
福島

9位
鳥取
33位
岩手

10位
島根
34位
兵庫

11位
三重
35位
徳島

12位
山梨
36位
宮城

13位
埼玉
37位
奈良

14位
茨城
38位
宮崎

15位
愛知
39位
愛媛

16位
京都
40位
福岡

17位
秋田
41位
和歌山

18位
佐賀
42位
北海道

19位
新潟
43位
長崎

20位
栃木
44位
沖縄

21位
大分
45位
青森

22位
岡山
46位
大阪

23位
山口
47位
高知

24位
神奈川

◆20政令指定都市 ランキング結果(2022年版)

1位
浜松市
11位
千葉市

2位
川崎市
12位
神戸市

3位
たま市
13位
広島市

4位
京都市
14位
岡山市

5位
古屋市
15位
福岡市

6位
熊本市
16位
九州市

7位
静岡市
17位
大阪市

8位
横浜市
18位
模原市

9位
仙台市
19位
札幌市

10位
新潟市
20位
堺市

◆48中核市 ランキング結果(2022年版)

1位
豊田市
25位
久留米市

2位
金沢市
26位
宮崎市

3位
長野市
27位
大分市

4位
岡崎市
28位
八王子市

5位
富山市
29位
呉市

6位
高崎市
30位
西宮市

7位
豊橋市
31位
和歌山市

8位
柏市
32位
下関市

9位
福山市
33位
枚方市

10位
前橋市
34位
いわき市

11位
高松市
35位
越谷市

12位
佐世保市
36位
鹿児島市

13位
岐阜市
37位
旭川市

14位
大津市
38位
長崎市

15位
盛岡市
39位
八戸市

16位
高槻市
40位
姫路市

17位
宇都宮市
41位
青森市

18位
奈良市
42位
高知市

19位
倉敷市
43位
横須賀市

20位
秋田市
44位
松山市

21位
川越市
45位
函館市

22位
郡山市
46位
那覇市

23位
船橋市
47位
東大阪市

24位
豊中市
48位
尼崎市