恋愛はいまだかつてなく難しくなっています。
現代ではすべての決断が自分次第。
どこに住んでもいいし、どんな仕事にも就くことができますが、その分選択肢も多くなります。
そんな私たちに突きつけられる最大の難問が、「誰を恋愛相手に選ぶか?」です。
今回紹介する本は、『史上最も恋愛が難しい時代に 理想のパートナーと出会う方法』ローガン・ウリー著(河出書房新社)です。
▶前回:「一生困らない」お金のしくみとは?隣の億万長者が17時になったらやっていること
▼INDEX
1. なぜ、付き合うことがいまだかつてなく難しいのか
2. 「恋愛だけはうまくいかない」と思っているあなたへ
~自分の恋愛傾向を理解しよう~
3. 本書のココがすごい!
1. なぜ、付き合うことがいまだかつてなく難しいのか
「恋とは落ちるものだから、自然に起こる科学反応だ」と考えていませんか。
それでもあなたにいまだに恋人はいないし、結婚もしていないのはなぜなのでしょうか。
では、真実をお伝えします。
すばらしい恋愛関係は、見つけるものではなく築くものなのです。
現代人は、マッチングアプリを通して、何百ものパートナー候補のなかから、次々にスワイプで相手を選ぶことができます。
しかし、選択肢が多すぎて、余計に身動きがとれなくなっている人もいます。
最近、購入前にオンラインで検索したものは何ですか?
どの電動歯ブラシがよいか、どのブルートゥーススピーカーがよいかなどグーグルであと少し検索するだけで“完璧な選択”をできるように感じます。
私たちは、恋愛にも「完璧な選択」を求めてしまうのです。
恋愛でも何百もの選択肢を組み合わせると、どれが「正解」かわかるはずだ、という思考のわなにはまるのです。
しかし、恋愛には「誰かと一緒になるべきか」「どれくらいで妥協すべきか?」といった疑問への「正解」はありません。
さらに現代では、「正しいことをすべき」というメッセージが身の回りに溢れています。
自分の親から「私と同じ過ちを犯さないで!」と言われることもあるだろうし、失敗しないことが何よりも大事だと思いがちです。
「誰と結婚するか」で自分の人生が左右されるように感じますし、一定の年齢に達するまでに子どもを持ちたいと望む女性にとっては、時間的なプレッシャーも感じやすいためこの傾向は顕著です。
この本は、そんなあなたの恋愛がなぜうまくいかないか理由を分析し、思考癖をリセットし、人生のパートナーを見つけるのに役立ちます。
2. 「恋愛だけはうまくいかない」と思っているあなたへ
~自分の恋愛傾向を理解しよう~
周囲の人をみて「なぜみんな、恋人がいるの?」「私は仕事も友人関係も良好なのに恋愛だけはうまくいかない」と、考えたことはないでしょうか。
そう考える人の多くは、自分では気づかない恋愛の盲点、つまり恋愛を失敗させる行動パターンにはまっています。
だいたい次の3つに当てはまる場合が多いです。
恋愛を失敗させる原因(行動パターン)を特定し、悪癖を脱して、新たな習慣を身につけましょう。
それでは、まず恋愛を手に入れる旅の第一歩として自分の傾向を把握しましょう。
①ロマンス志向型
「運命の人と出会い、末永く幸せに暮らす」というおとぎ話のような恋愛を求めるタイプです。
自分が独り身なのは、まだ運命の相手に出会えていないからだと思っています。モットーは「恋愛は起こるべくして起こるもの」。
②完璧志向型
事前に下調べし、すべての選択肢を検討し、正解だと確信が持てるまで石橋をたたくのが好きなタイプ。何事も慎重に決断します。
モットーは「結婚の決め手は?」。
③尻込み型
自分は未熟だからまだ恋愛を始めるべきではない、と考えるタイプ。自分自身に高いハードルを設けている。モットーは「最高のパートナーになれるまで待とう」。
これらの3つのタイプはお互いにまったく異なるタイプに見えますが、大きな共通点があります。それは、非現実的な期待をもっていること。
ロマンス志向型➡️恋愛に対して非現実的な期待を寄せている。
完璧志向型➡️パートナーに対して非現実的な期待をもっている。
尻込み型➡️自分自身に対して非現実的な期待を課している。
それぞれのタイプをもう少し詳しく見てから、克服する方法を具体的に説明します。
①ロマンス志向型の傾向と克服方法
このタイプの人は、運命の人に出会うためにどのような努力をしているのか、と尋ねると「彼とは自然に出会いたいの。アプリなんてロマンスのかけらもない。運命に手を加えたくないの」と答えます。
愛とは自然にやってくるもので、いまだに独り身である理由は、正しい相手にまだ出会っていないからだ、と考えています。
また、ロマンス志向型は、愛を待つだけで、愛をつくるための努力をしません。だからたとえ付き合ったとしても、何か問題が起こると
「愛って努力して手に入れるようなものじゃないでしょ?だからこの人は“運命の人”じゃない」
と判断してしまいます。
歴史上ほとんどの時代において、愛のために結婚するなんてばかげていると思われていました。
そもそも結婚とは、経済性と利便性にのっとったものでした。
自分の父親の所有地が、相手の父親の土地と隣同士だったから結婚する。あるいは、貧しい家に生まれて、相手から結婚と引き換えに牛12頭をもらえることになったから結婚するなど。
一方で、古代から人類がつねに愛を経験してきましたが、愛とは婚姻関係以外でするものと考えられていました。
「愛のために結婚する」という考え方が広まったのは1750年頃、ロマン主義の時代にまで遡ります。
愛の詩を吟じる哲学者たちによってヨーロッパで始まった思想運動が、世界中に広まったのです。
ロマン主義が愛を「病気の一種」から、長期的な関係を求める新モデルにまで押し上げました。
それから数世紀がたったいまでも、ロマン主義が私たちの恋愛観を支配しています。
ロマン主義思想の影響を受けていると「運命の人」を待ち続け、自分の現実離れした恋愛観にそぐわない人は拒絶して、何年もの時間を無駄にすることになります。
現代では、ディズニー映画やラブコメに影響され、素敵な出会いがあり、最後は白馬の王子様と永遠に暮らすと思わされてしまいます。
【ロマンス志向を克服するために】
理想と違う恋愛に対して心を開く。白馬の王子様は手が届かないから2番手と結婚するのではなく、そもそも白馬の王子様なんて存在しないことを理解することが大事です。
具体的には、下記のことを理解し実行することです。
・完璧な人などいないことを理解する
「白馬の王子様でも寝起きの息はくさい」。理想の人の外観は、理想通りではない可能性があることを受け入れる。
・どんな結婚生活も、努力を要することを理解する
信頼関係を築き、維持するために日々努力を惜しまないこと。
・愛はあちらからやってくるという幻想を捨てる
誰かを見つけるために努力し、出会い方にこだわらない。
・SNSで目にする理想の恋愛像を信じない
SNSはこのうえなく幸せで情熱的かつ写真映えする恋愛を、誰もが簡単に手に入れているように見せます。どの投稿も過剰なほどフィルターがかけられていることを理解する。
②完璧志向型の傾向と克服方法
大切なことでもささいなことでも何かを決めるときは、常に下調べを徹底するタイプがこの完璧志向型。
このタイプは何かを選ぶ際、可能な限りすべての選択肢を検討しないと気が済みません。
恋人と結婚したいと思っているけれども、なかなか決断ができない。その理由は「ほかの人と結婚すれば、あと5%幸せになる可能性があるかもしれない」と思っているから。
完璧志向型は、間違った決断をすることに不安を抱えています。その不安が大きなプレッシャーとなり、完璧でないものはすべて失敗のように感じてしまいます。
そのため、離婚して1人で子どもを育てることになったらどうしようかとか、結婚に飽きて浮気してしまう可能性があるのでは、と考えて行動が起こせないでいます。
私たちの生活は、いまはありのままの自分を表現する自由を手にしています。同時に正しい振る舞いをしなければならないというプレッシャーにもさらされています。
自分の物語の著者は自分でもあるので、物語がつまらない責任はすべて自分にあります。
誰と結婚するのが正解か、答えがあると思い込んでいますが、実際には正解などは存在しません。
【完璧志向を克服するために】
「アプリを使って何百回もデートをしてきた。自分の求めるものはわかっているのに、その理想の男性に出会えない」
このような完璧志向型を克服するためには、不安と不確実さを受け入れること、徹底的とは程遠い下調べに基づいて決断する必要があります。
「秘書問題」として知られる意思決定の問題を紹介します。
あなたは秘書を1人雇おうとしています。候補者は100人いて1人ずつ面接をします。面接を終えるたびに、その人物を採用するか別の人を採用するかを決めます。不採用にした人はそこで終わり、あとで心変わりしてもその人を呼び戻すことはできません。
最高の候補者を選ぶには、どうすればチャンスを最大限生かせるのでしょうか。
あまりにも早い段階で決断するのは、後方で順番待ちをしている強力な候補者を逃す可能性があります。かといって判断を先延ばしにしていても、最後の候補者がいまいちな場合もあります。
この問題に対しては、数学的に正しい答えがあります。候補者の37%と面接し、そこで一旦停止して、その最初のグループの中から最高の人物を特定します。その人物が重要な基準値となります。そして残りの面接で、その基準値の人物を超す候補者が現れたら、すぐに採用を決めるのです。
この論理を恋愛にあてはめてみます。
パートナー探しの期間が18歳から40歳までだとすると、37%ルールでは26.1歳が観察か躍動への転換点となります。
つまり26.1歳までにこれまで付き合った男性の中で最高の人物を特定するのです。そしてそれ以降、出会う人のなかからその基準値を超える最初の人と結婚すればよいのです。
もしあなたがいま30代なら、その地点を越えているでしょう。あとは基準値となる人物を割り出しましょう。
もうリサーチは必要ありません。次に基準値と同等かそれ以上の人と出会ったらその人と真剣交際を始めてください。
③尻込み型の傾向と克服方法
すごくモテそうなのに、積極的に恋愛をしないタイプ。
この手の人たちを尻込み型と呼びます。恋愛をすべきだとは感じるけれど、なかなか行動に移せない。
デートに出かけない理由は「仕事で昇進したら…」「あと5キロ痩せたら…」「仕事が一段落したら…」と言い訳をする。
100%準備が整うのを待っている人は、自分が見逃しているものを過小評価します。
どんなことでも、おそらく恋愛においてはとくに、準備が完璧に整うことはありません。
完全に自己表現できたと思えるまで待ちたい気持ちはわかりますが、せっかくの理想の相手に出会えたのに、時期尚早で拒否されるなんてたまりません。
尻込み型の人は、いつか朝、目が覚めると「準備ができた」と思える日がくると思っていますが現実には起こりません。
恋愛するのを待ってばかりいると、あなたが思っている以上のものを逃します。
経済学者がよく使う言葉を借りると意思決定における「機会費用」というもので、ある選択肢を選んだときに払う代償を指します。
機会費用の1つ目は、学ぶ機会を逃していることです。
さまざまな人と付き合ってみなければ、自分の好みがわかりません。デートの大半は繰り返しなので、時間をかけて学びながら少しずつ変えていくものです。
実際に付き合ってみなければ、自分がどういう人物と長い時間をともに過ごしていきたいかには気づけません。
【尻込み型を克服するために】
・締め切りを設ける
恋愛の最初の一歩の締め切りを設けましょう。お勧めはいまから3週間後です。
それだけの時間があれば最初にやるべきことができますし、かといって勢いをくじくほど遠い未来でもありません。
・準備
締め切りを設けたらデートの準備にとりかかります。
マッチングアプリをダウンロードしてください。デート用の勝負服をそろえましょう。友人と夕食をともにする機会があればチャンスです。自分のことばかり意識するのではなく、友人の話に興味をもって真剣に聞いているかを確かめましょう。
・人に話す
自分の目標を公言すると目標達成に専念できるようになります。親しい友人や家族にデートに出かけることを伝えましょう。締め切りを共有してください。
・新たなアイデンティティを手に入れる
鏡の前に立ち、声に出して「私は愛を求めている。私はデートの達人だ」と言ってみてください。ばかげていると思うでしょうが、でも試す価値はあります。
続けていると、鏡の前の自己暗示がきいてきます。すると自分をデートの達人だと思うと周りの人も同じようにあなたをそう見るようになります。
・小さく始める
基本的に1週間に少なくとも1回はデートするように勧めています。デートのために積極的にスケジュールを空ける必要があります。
・自分をいたわる
デートとは大変なものです。デートが思ったようにうまくいかなかったら、親友に語りかけるように自分をねぎらいましょう。
・元恋人との縁を切る
最後に1つだけ、これまで尻込み気質のクライアントの多くがなかなか真剣にデートに乗り出せない原因として、元恋人への未練を持っていることがあります。
これはデートに臨む人全員に言えることでもありますが、元恋人との縁は切りましょう。
3. 本書のココがすごい!
今回紹介した『史上最も恋愛が難しい時代に 理想のパートナーと出会う方法』ローガン・ウリー著(河出書房新社)のすごいところは下記に集約される。
①いまの時代、待っているだけでは出会いは訪れないし、結婚もできないということを痛感させられる。
②「これ私に当てはまる」と思うような例がたくさん紹介されており、パートナーを探している多くの人に気づきがある。
【著者】 ローガン・ウリー Logan Ury
行動科学者からデートコーチに転身し、現代の恋愛に関する専門家として国際的に名をはせる。
マッチングアプリ「ヒンジ(Hinge)」のリレーションシップ・サイエンス・ディレクターとして、人々の恋愛を助ける研究チームを率いる。
ハーバード大学で心理学を専攻したのち、Googleの行動科学チーム「Irrational Lab(非合理実験室)」を運営し、社内プログラム「Talks at Google」にて現代の恋愛をテーマにしたインタビューで人気を博した。TEDレジデント。
【訳者】 寺田早紀 てらだ・さき
コロンビア大学ティーチャーズカレッジにてTESOL(英語教授法)修士号取得。
高校英語教師を経て、出版翻訳と実務翻訳の英日翻訳者に。実用書や自己啓発書、ウェブ雑誌記事、IT系のマーケティング文書などの翻訳に携わる。
訳書『最新科学が証明した 脳にいいことベスト211』(文響社)、『モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた 進化心理学が教える最強の恋愛戦略』(共訳、SBクリエイティブ)。大学で英語講師も務める。
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