今夏、銀座「和光」本店の地階が、「アーツアンドカルチャー」と銘打った新しいフロアへと生まれ変わった。「舞台と回廊」をコンセプトに改装された新素材研究所による空間のなかで、国内外のクリエイターや職人とともに協働し開発したアイテムを展開していく。オープンには、2人のフランス人デザイナーに白羽の矢が立ち、日本固有の素材をつかったクリエイションが並んだ。そのうちのひとり、ジュエリーデザイナー シャルロット・シェネは、滋賀県のびわ湖真珠「JINBO PEARLS」を使って、有機的なネックレスとイヤリングを生み出した。
「ルールを知らないことを幸せに思う」シェネのものづくり
日本ではパールには、巻き、形、光沢(てり)、キズといったような評価基準がある。フランスでも同様、様々な評価基準や暗黙のルールはあるというが、「それを知らないということを、私は幸せだと思っているんです。だから自由にクリエーションができる。聞けば、きっと自分のクリエイションが崩れてしまうと思います」
ネックレスの価格は¥880,000(税込)〜
バレンシアガでプレタポルテとジュエリーを経験し、ブランドを立ち上げたシェネ。そのものづくりの魅力は、これまでも“規定通り”ではないところにある。
「例えば、フランスではファインジュエリーにおいて伝統的に、ゴールドとシルバーをミックスすることは避けられてきました。でも、知らなかったのでミックスしてジュエリーを作りましたが、良くも悪くも驚かれてしまって。でも、今ではそれが私のブランドの代名詞。まさにルールを知らなかったから。そのことに感謝しています」
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1点ものがつなぐ特別なストーリーに思いを馳せて
現在シェネは、ジュエリーだけではなくプライベートコレクションとして、彫金のオブジェの制作にも意欲的に取り組んでいる。まだ一度もオーダーを取っていないというそのコレクションも、和光の新フロアとウィンドウを飾っている。
和光のウィンドウも飾ったオブジェ
「子どもの頃、家族がよく『海外に行くからお土産何がいい?』と聞いてくれて、私はパリにはなくて、そこでしか買えないものが欲しいとリクエストしていました。いつも家族が持って帰ってくれるサプライズにワクワクして、感動した記憶がそれぞれにあります。
今は、世界中どこのお店に行っても同じものが手に入る安心感があって、それは一つのビジネスとしては正解だと思いますが、今回世界で一つしかないものを作れる喜びが私にもあり、それを手にした人にもその先に特別なストーリーが生まれていくのだなと思うと嬉しいんです。これからも、そういったことができる機会を大切にしていきたいです」
Interview&text: Mio Koumura
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