鎌倉時代に成立したとされる『平家物語』の冒頭に登場する沙羅双樹。どのような植物を指すのか、興味がある方も多いのではないでしょうか。インドでは聖なる木として人々に大事にされており、仏教に深い関わりを持つ沙羅双樹について深掘りするとともに、日本における沙羅の木の特徴やよく似た樹木、名所、代替によく使われる夏椿の育て方などについて、幅広くご紹介します。
沙羅双樹の基本情報
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植物名:サラノキ
学名:Shorea robusta
英名:Sal tree
和名:サラノキ(沙羅の木)
その他の名前:沙羅双樹
科名:フタバガキ科
属名:コディアウエム属
原産地:インド
分類:常緑性高木
沙羅双樹とは、本来は木の名前ではなく、沙羅の木が2本対になっている状態のことをいいます。沙羅の木の学名は、Shorea robusta(ショレア・ロブスタ)。フタバガキ科コディアウエム属の常緑高木です。原産地はインドで、暑さに強く寒さに大変弱い性質を持っています。自然樹高は30mほど。
沙羅双樹は仏教の三大聖樹の一つで、残りの二つは無憂樹(ムユウジュ)、印度菩薩樹(インドボダイジュ)です。沙羅双樹は若返りや復活を意味する「生命の木」として、大切に扱われています。一方、日本では「沙羅双樹」のことを「夏椿」と認識していることがほとんどです。この謎については、のちほど紐解いていきます。
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沙羅双樹の花や葉の特徴
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園芸分類:樹木
開花時期:3~7月
樹高:30m前後
耐寒性:弱い
耐暑性:強い
花色:クリーム色
沙羅双樹の原産地での開花期は3〜7月で、一番の見頃は4月頃です。花色はクリーム色がかった白で、小さな花を密に咲かせます。ジャスミンに似た、甘くさわやかな香りを持っています。葉はつやのある楕円形で、長さ10〜25cmにもなる大きな葉が特徴的です。幹は頑丈で、現地では建築用木材として加工されたり、樹脂が香料として使われたりと、生活に馴染みのある樹木の一つです。
沙羅の木を沙羅双樹と呼ぶ理由
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沙羅双樹という名前は、お釈迦様が入滅する際に、沙羅の木が対になった場所を選んだことにちなみます。2本の対の沙羅の木の間に横たわったとする伝えや、2本ずつ4カ所に8本植えられていたという伝えがあり、いずれも対に並んでいる様子を指して「双樹」といい、それが名前に含められて広まったようです。お釈迦様が入滅すると、嘆き悲しんだ沙羅の木は白い花を咲かせてお釈迦様を覆い尽くしたという言い伝えが残されており、それによって聖木として扱われてきました。