沙羅双樹を含む三大聖樹とは

仏教では、沙羅双樹、無憂樹、印度菩提樹を三大聖樹としています。沙羅双樹については前述した通りなので、ここでは無憂樹、印度菩提樹について簡単にご紹介しましょう。

無憂樹


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学名はSaraca indica(サラカ・インディカ)で、マメ科サラカ属の中木。原産地はインドで、暑さに強く寒さに弱い性質を持っています。花色は黄色〜オレンジで、小さな4弁花が集まって咲きます。お釈迦様はこの木の下で4月8日に生まれたと伝えられ、この日を灌仏会(かんぶつえ)や降誕会(こうたんえ)と呼んでいます。「阿輪迦の木」(あそかのき・あしょかのき)という別名も持っており、「憂いがない」という意味のサンスクリット語「アショカ」に由来しています。インドでは「憂いのない」、出産・誕生・結婚をかなえる幸福の木とされています。

印度菩提樹


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学名はFicus religiosa(フィカス・レリジオーサ)。クワ科フィカス属の高木で、原産地はインド。暑さに強く寒さに弱い性質を持っており、日本では観葉植物として流通しています。葉は縦長の楕円形で、先端が少し尖っているのが特徴的です。花や実はつくものの、ほとんど外からは見えません。お釈迦様がこの木の下で49日間瞑想し、2月8日に悟りを開いたと伝わっており、この日を「成道会(じょうどうえ)」と呼んでいます。ちなみに、ボダイジュやセイヨウボダイジュ、ナツボダイジュなどのボダイジュはシナノキ科で、印度菩提樹とは別種です。

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日本で沙羅双樹とされる大半は夏椿

沙羅双樹は寒さを苦手とするため、日本の気候では温室でない限りは育てられません。しかし仏教では聖木とされているため、代わりに花姿が似ている夏椿を植栽して沙羅双樹と呼ぶようになりました。ここでは日本の沙羅双樹、夏椿についてご紹介します。

夏椿の基本情報


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植物名:ナツツバキ
学名:Stewartia pseudocamellia
英名:Japanese stewartia
和名:ナツツバキ(夏椿)
その他の名前:シャラノキ(沙羅の木)
科名:ツバキ科
属名:ナツツバキ属
原産地:日本、朝鮮半島
分類:落葉性小高木

夏椿の学名はStewartia pseudocamellia (ステワルティア・プセウドカメリア)。ツバキ科ナツツバキ属の小高木。原産地は日本、朝鮮半島で、暑さにも寒さにも強い性質を持っています。花の形がツバキに似ており、6〜7月に開花するため夏椿と呼ばれてきました。花色は白で、5〜6㎝ほどの5弁花。一日で散る一日花です。自然樹高は10mほどですが、剪定によって樹高をコントロールすることができます。冬には葉を落とす落葉樹です。

お寺によく植えられているのは、日本の寒さに耐えられない沙羅双樹の代わりとして、葉や花姿が似ている夏椿を植えたためとされています。そのため、日本では夏椿が沙羅双樹だとして広く認識されるようになりました。また、僧侶が夏椿を間違えて沙羅の木と読んだことが由来、という一説もあります。

ほかの椿との違い


左上から時計回りに夏椿、椿、ヒメシャラ、サザンカ
High Mountain、Mei Yi、sabot27、tamu1500/Shutterstock.com

夏椿は、ツバキ、サザンカ、ヒメシャラと見た目がそっくりなため、これらの違いがよく分からないという人は多いのではないでしょうか。ここで、見分け方についてご紹介します。

ツバキの花色は赤、ピンク、白、複色。種類によって咲く時期に幅があり、12月〜翌年4月頃までで、花の終わりには花ごとポトリと落ちます。常緑樹で、葉は肉厚で艶やかです。

サザンカは、性質はほとんどツバキと似ていますが、花の終わりに花ごと落ちるツバキとは異なり、花弁をバラバラに散らします。また主に冬に咲くことや、枝に毛が生えること、葉が小さいことも見分けるポイントです。

ヒメシャラの開花期は5〜7月頃。花色は白か淡いピンクで、小さめの花を咲かせます。花も葉も夏椿より小ぶりなため、「小さい沙羅の木」という意味で姫沙羅と呼ばれるようになりました。落葉小高木で、常緑のツバキやサザンカと違って冬は落葉します。