夏椿の育て方

沙羅双樹の代わりとして寺社などで育てられてきた夏椿。日本では沙羅の木といったら夏椿を指すことが多いため、ここでは、夏椿の育て方について解説していきます。

適した栽培環境


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日当たり・置き場所

【日当たり/屋外】夏椿は日当たり、風通しのよい場所を好みます。半日陰の環境でも十分育ちますが、暗すぎる場所では花つきが悪くなるので注意。また、西日が強く当たる場所では、夏の強い日差しによって葉が傷みやすくなるので、避けたほうがよいでしょう。

【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本ですが、寒冷地では鉢栽培にし、真冬は屋内に取り込むほうが無難です。

【置き場所】適度に水はけ、水もちのよい土壌を好み、乾燥に弱い性質をもっています。

植え付け・植え替え

夏椿の植え付け適期は、12月〜翌年2月です。

植え付けの2〜3週間前に直径、深さともに50cm


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程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を崩さずに植え付けましょう。最後にたっぷりと水を与えます。

水やり


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水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、夏椿は乾燥を嫌うので、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。

真夏に水やりする場合は、気温が上がっている昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになってしまいます。すると株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。

また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。

施肥


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順調に生育していれば追肥はほぼ不要です。しかし、木の生育に勢いがないようであれば緩効性肥料を樹木の周囲にまき、クワなどで軽く耕して土に馴染ませて様子を見守ってください。

剪定


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夏椿の剪定適期は、落葉して休眠している時期の12月〜翌年2月です。自然樹高は10mに達しますが、家庭で栽培するなら管理をしやすくするためにも5m以内にとどめ、剪定によって樹高をコントロールしましょう。夏椿は成長スピードがやや遅い方です。もともと枝数が少なく、繊細な枝ぶりが美点といえるので、強い切り戻しをせずに自然に整う樹形を楽しむ剪定を心がけます。

まず樹高の半分くらいまでの高さの下の位置で幹から出ている下枝は、すべて元から切り取ります。次に、幹の内側に向かって伸びる枝を切り、さらに込み合っている部分があれば、不要な枝を元から切って風通しをよくしましょう。枝はどこで切ってもいいわけではなく、必ず枝の分岐点まで遡って切り取ってください。剪定した部分から雑菌が入って病気を誘発したり、木の水分を失ったりするのを防ぐために、切り口には必ず癒合剤を塗っておきましょう。癒合剤は園芸店などで手に入ります。

注意する病害虫


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【病気】

夏椿を育てる際に発生しやすい病気は、さび病などです。

さび病は、かびによる伝染性の病気です。葉にくすんだオレンジ色で楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。この斑点は症状が進むと破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。発症すると株が弱り、枯死することもあるので注意。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用する薬剤を散布して防除します。

【害虫】

夏椿を育てる際に発生しやすい害虫は、チャドクガなどです。

チャドクガは蛾の幼虫で、イモムシのような姿に多数の細かい毛に覆われています。体長は20〜30㎜くらいで、ツバキ科の植物によく発生します。葉裏などに幼虫が大発生することがあり、見た目がよくないだけでなく、毒があるので見つけ次第駆除しましょう。チャドクガは毛に触れるとかぶれて皮膚炎を起こすので、駆除の際には注意が必要です。毛が皮膚につかないように長袖、長ズボン、手袋を着用して作業し、枝ごと切ってビニール袋に入れて処分してください。

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タイやカンボジアで沙羅双樹として扱われる花


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日本では夏椿が沙羅双樹の代わりとなっているのと同様に、タイやカンボジアでは、ホウガンノキが沙羅双樹として広まっています。一層ややこしくなってきましたが、これは仏教が伝わる際に、沙羅双樹をホウガンノキと誤認したことが由来のようです。

ホウガンノキは、学名はCouroupita guianensis(コウロウピタ・ギアネンシス)。サガリバナ科ホウガンノキ属の常緑高木です。原産地は南アメリカで、寒さに弱いので日本では温室のある植物園でしか見ることができません。開花期は3〜5月頃で、花色は朱色。肉厚な花弁が特徴的で、芳香を持っています。花は一日花で、のちに15〜20㎝ほどの実がつきます。