沖縄県の玉木デニー知事が2024年8月7日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見し、9月に訪米する考えを明らかにした。

沖縄県では、在沖縄米兵の性的暴行事件が相次いで発覚しており、再発防止や基地問題について訴える考え。事件をめぐっては、沖縄県警などが事案の内容を県に伝えていなかったことが問題化している。インドネシアの記者からは「ありえない」という声もあがった。

起訴の3か月後に地元局の報道で発覚→県も把握

最初に発覚したのは米空軍兵長による事案。23年12月24日に少女に性的暴行を加えたとして、沖縄地検が24年3月27日に起訴。この時点で外務省は駐日米大使に抗議していたが、沖縄県が事案を把握したのは24年6月25日。地元局の琉球朝日放送(QAB)が報じてからだった。

24年5月26日には、海兵隊の上等兵が成人女性に性的暴行をしようとして、けがを負わせる事案が発生。6月17日に起訴されたが、事案が明るみに出たのは6月28日のことだった。

23年から24年にかけて、このような事案が計5件あったことが明らかになっている。

沖縄県では1995年に小学生の少女が米兵3人に性的暴行を受ける事件が起きた。これを機に、在日米軍が関係する事件事故が起きた際の通報手続きが1997年に日米合同委員会で合意されている。

それによると、事案発生時は米軍側から防衛省側に連絡し、防衛省側から県や関係自治体に連絡することになっていた。これが現在、事実上形骸化している形になっており、県警や外務省は、今回の事案で県側に連絡しなかった理由として「被害者のプライバシー保護」を挙げている。

7月5日には、林芳正官房長官が「可能な範囲で」地方自治体に対して情報伝達することを表明。玉城氏は、被害者のプライバシー保護を前提に「『可能な範囲』で情報伝達をするのではなく、事件発生後の速やかな情報の共有が必要だと考えている」と述べた。

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「自分のエリアの警察から通報されていないのはありえない」

こういった経緯を説明する中で、インドネシアの記者から出たのが「自分のエリアの警察から通報されていないのはありえない」という指摘だ。この記者は、玉城氏が県警と良好な関係を築くためにどんな取り組みをしたかについて質問した。

玉城氏は、

「県警の本部長とも 必要であればお互いに意見交換をするようにしているし、厳しい財政事情ではあるが、例えば警察に対する予算もできる限り配分をして警察業務がスムーズに、県民の安全を守るために行われるよう、サポートさせていただいている」

などと応じた。

県知事は県警を所轄(指揮命令権のない監督)し、知事が県議会の同意を得て任命する公安委員でつくる「公安委員会」が県警を管理することになっている。ただ、県警本部長は県警の「たたき上げ」ではない。現本部長の鎌谷陽之氏は、前職が警察庁警備局外事情報部外事課長で、つまり沖縄県が辞令を出した異動でなく、いわゆる中央官庁が持っているポスト枠を異動する形で22年8月に就任している。この点を念頭に、玉城氏は次のように説明した。

「そのように命令(警察庁の辞令)を受けて沖縄県にやって来て、やがてまたどこか他の場所で赴任をしていく、というような状況にあっても、『あなたが本部長でいる間は県民の命と安全を守るために、我々は協力しなければいけないんだ、ということをしっかりと考えてください、連携してください』ということをお伝えし、本部長も『それは理解した』ということで回答している」

9月の訪米では「沖縄県民の声を直に届ける」として、

「沖縄が抱えている様々な問題を解決する必要性について国防総省や国務省などの米国政府そして連邦議会議員、米国の世論にも訴えていきたい」

と話した。

(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)