日本人のがんによる死亡数で、肺、大腸に続いて多いのが「胃がん」です(2022年※)。胃がんにはいくつかタイプがあり、このうち見つかったときにはすでに進行していて治りにくいのが「スキルス胃がん」です。なぜ予防や治療が難しいのでしょうか? 消化器病専門医の福田頌子先生に解説してもらいました。
※出典:国立がん研究センターがん情報サービス

教えてくれたのは…

監修/福田頌子先生(あさひの森内科消化器クリニック院長)
医学博士。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医。消化器疾患や生活習慣病などの内科疾患まで幅広く診療。検診ドック、腸内細菌外来やダイエット外来などもおこない、病気を治療するだけでなく未然に防ぐ予防医学にも力を注ぐ。

スキルス胃がんとは?



胃がんにはいろいろな種類があります。このうち胃がんの5~10%を占める「スキルス胃がん」は胃の表面にはあまり出ず、胃の奥のほうに広がっていくがんです。がん細胞が増殖するにつれて胃の壁が厚くなっていきます。

通常の胃がんは胃の内側に塊を作ります。胃の形状が変化するので内視鏡検査(胃カメラ)で発見しやすいのですが、胃の奥にできるスキルス胃がんは見つけるのが困難です。進行も早いので診断がついたときには、腹膜播種(ふくまくはしゅ:臓器を覆う膜を突き破り、がんが体の中に広がること)を起こして他の臓器に転移しているケースも少なくありません。

予後は厳しく5年生存率は10%を切るともいわれます。見つかりにくく治療も難しい、かなりたちの悪いがんです。

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若年層や女性に多く見られる理由は?

一般的に胃がんは50代から増えて80代でピークになりますが、スキルス胃がんは若年層にも発症します。

また通常、胃がんの罹患率は男性は女性の2倍と高くなっていますが、スキルス胃がんに関しては女性のほうが男性よりかかる割合が高いです。原因は解明できていませんが、女性に多い遺伝子変異が影響しているのではないかといわれています。