8月7日、玉城デニー沖縄県知事は日本外国特派員協会(東京都)で記者会見を行い、県内における米軍人の犯罪に関して、米国と日本政府の双方に情報の共有と再発防止を求めた。
事件の情報が沖縄県に知らされたのは半年後
2023年12月、沖縄の米空軍に所属する25歳の兵士が面識のない16歳未満の少女をわいせつ目的で誘い出し自宅に連れ去ったうえ、性的暴行を加えた。
この事件について外務省は2024年3月に米軍に抗議を行ったが、日本政府から沖縄県に対する情報提供はなかった。知事や県庁職員など沖縄県関係者が事件を知ったのは6月25日、那覇地検を取材した地元メディアの報道によってのこと。
また、2024年5月にも米海兵隊に所属する21歳の上等兵が女性に性的な暴行をしようとし、不同意性交致傷の疑いで県警に逮捕され、その後起訴されていた。
この事件についても日本政府は当初から把握しており、外務省はラーム・エマニュエル駐日米国大使に抗議を行っていたが、沖縄県に情報が開示されたのは6月28日だ。
さらに、沖縄県は、上記の他にも米軍兵士による性的暴行事件が3件あったとの情報を得ているという。
捜査当局は「被害者のプライバシー保護」を名目とするが…
「これらの事件には、2つの問題がある。
まず、米軍人による、女性の人権と尊厳を侵害する、非人間的で悪質な犯罪だ。断じて許すことはできない。
そして、日本政府や沖縄県警察から、沖縄県への情報提供がなかったことも問題だ」(玉城知事)
捜査当局が沖縄県に情報を開示しなかった名目は「被害者のプライバシーを保護するため」だという。
玉城知事は、地域住民の安全確保のために事件の情報を周知することが必要であること、また情報の周知とプライバシーの保護は両立することを指摘。
「私には、県知事として県民の生命と財産、安心と安全を守る責任がある。
そのため、米軍と日本政府の両方に、今後同様の事件が起きないように要求する権利と責任がある」(玉城知事)
「県民の声を直にとどける」知事は近日中に訪米の意向
沖縄県が1972年に日本に返還されてから2023年までの51年間、県内では米軍構成員など(米軍人や軍属とその家族)の刑法犯が6235件摘発されてきた。そのうち、殺人や強盗、不同意性交などの凶悪犯の摘発は586件(759人)だ。
7月、一連の事件を受けた沖縄県が日本政府に抗議したところ、林芳正官房長官から「在日米軍の犯罪に関する情報共有」の方針が示された。
だが、その方針は「被害者のプライバシーに配慮しながら、可能な範囲で情報共有を行う」というもの。玉城知事は「『可能な範囲』ではなく、事件発生後から、迅速な情報共有が必要だ」と不満を示した。
2000年、米軍と国や県などが参加する、米軍人や軍属による事件・事故防止のための協力ワーキングチーム(CWT)会議が開催され、その後もCWT会議は2017年まで年に一度以上行われていた。
しかし、2017年4月以降、CWT会議は一度も開催されていない。沖縄県は日米両政府に対して、機会あるごとにCWTの速やかな開催を申し入れてきた。
先日、一連の事件を受け、米軍側から新しいフォーラムを創設する提案があったという。
また、ワシントンには沖縄県の駐在員事務所があり、今回の性的暴行事件についても米国関係者に説明を行うなどの活動をしている。
玉城知事は「沖縄県民の声を直にとどけるため」と、速やかに訪米を行う意向を示した。
「基地の過剰な偏りは不正であり、応分の負担を超えている」
沖縄の県土面積は、 国土面積の約 0.6%に過ぎない。その沖縄県に全国の米軍専用施設の約7割が集中している。
「日米の同盟関係は日本と東アジアにおける平和の維持に寄与してきたのであり、安全保障体制のために米軍は必要だと考えている。
しかし、沖縄への在日米軍基地の過剰な偏りは明らかに不正であり、応分の負担を超えている。
また、アジア太平洋地域の平和と、沖縄県の持続的な発展のためには、軍事力だけでは不十分。対話を通じた外交が、これまで以上に重要だ。
沖縄県は、住民を巻き込んだ激烈な地上戦を経験している。だからこそ、日本とアジア太平洋地域の平和を守るため、積極的な役割を担っていきたい」(玉城知事)